百八十八話 日常を取り戻した共和国

 問題なければ、今日で共和国から撤収できるはず。

 という事で、妙にやる気になっている面々を連れて共和国の首都へ。


「ははは、お待ちしていましたよ」

「サンラインさん、物凄くやる気になっていますね」

「今までのブッフォンの抑圧から開放されたからね。やらないといけない事が沢山あるよ」


 首都に着くと、やる気になっているサンラインさんが待っていた。

 ブッフォンの脅威がなくなったのが大きいようだ。


「地方に多くの有能な者が逃げていた事もわかってな。比較的早く暫定政権を作れそうだ」

「それは良かったですね。安定的な政権は、住民にもプラスになりますね」

「うむ。ブッフォンらが贅沢をする為に無駄な税金をかけていたから、防衛と併せて税制改正も行わないと」


 国のための政治をしてくれれば、僕としては何も言うことはない。

 その間に、軍務卿とサンラインさんと一緒にいた軍事担当の人が話をしていた。


「アレク君、お昼頃に駐屯地にいる捕縛した兵を連れてきてくれだそうだ」

「分かりました。どこに連れていけばいいですか?」

「後ほど拘置所に案内するという。そこにゲートを繋げばいいらしい」


 拘置所という事は、ブッフォンもいるのかな?

 もしかしたら、また二日酔いなのかもしれない。


 その後、議会の建物に案内された。

 前世の社会の教科書で見た、古い銀行の様な建物だな。

 石造りの重厚な建物だ。

 応接室に通されると、クレイモアさんが何人かの部下を連れてきた。

 昨日は完全武装した姿だったけど、今日はスーツでビシッと決めている。


「改めて、共和国を救って頂き感謝します。後日、国王陛下宛に正式に謝罪と感謝の書簡をお送り致します」

「うむ、分かった。クレイモア殿は今後はどのような役職に就きますか?」

「はい。何でもやりますが、先ずは外交関係を行う予定です」


 外務卿とクレイモアさんが話をするけど、クレイモアさんが外交官をやるのは似合っていそうだ。


「では、こちらにある陛下の誕生日パーティの招待状をクレイモア殿に渡そう」

「わざわざお持ち頂き有難う御座います。参加は国の状況次第ですが、必ず返事を致します」

「よい返事を期待しているぞ」


 そっか、あと一ヶ月で陛下の誕生日パーティか。

 外交問題も蹴りがついたので、国外の来賓も呼ぶのか。

 クレイモアさんは、大事そうに手紙を鞄に入れていた。


「それでは、これから拘置所にご案内します。アレク殿下には、拘置所の前でゲートを繋いで頂ければと」

「分かりました」


 今度は案内人がクレイモアさんに代わり、皆でクレイモアさんの後をついていく。

 少し歩いて着いたのは軍の組織みたいな場所で、聞くと警察組織に近い所らしい。

 しかし、ブッフォンが台頭してからは、残念な事にほぼ機能しなくなったという。

 この辺りも急ピッチで組織再編しないといけないだろうな。

 建物の地下が拘置所で、結構な数の牢屋があった。


「それではアレク殿下、お願いします」

「はい」


 僕はレイクランド辺境伯領郊外の駐屯地にゲートを繋いだ。

 既に準備ができていて、次々と捕縛された兵が運ばれてくる。


「くそ、放しやがれ!」

「おい、将来の将軍に失礼じゃないか」

「この恨み、いつかはらしてやる」


 例の三人組も護送されたけど、まだあーだこーだ言っている。

 ブッフォンが捕まった事を聞いたら、どんな表情をするのかな?

 三人組が一番最後だったらしく、僕はクレイモアさんに言われてゲートを閉じた。


「さて、最後になりますがブッフォンのいる牢屋をご案内します」


 クレイモアさんはそう言って、更に一階下の牢屋に案内してくれた。

 ここは、重犯罪者などが勾留されるエリアだという。

 その中の一角に、ブッフォンがいた。

 いたのだが、完全に壊れている。


「ぐへへへへ......」

「あの、ブッフォンで間違いないですよね?」

「ええ、ブッフォンです。どうも再び牢屋に入ったショックで、精神がおかしくなってしまった様です」


 ブッフォンは簡易ベッドに腰かけて、視線の定まらない表情で何かを喋っている。

 うーん、これでは僕やリズの治療でも治すのは無理だな。


「こうなると、哀れだな」

「とはいえ、ブッフォンの罪がなくなるわけでもないわ」


 レイクランド辺境伯様とティナおばあさまの意見に僕も賛成だ。

 ブッフォンがこうなったのは自業自得だし、今まで行った罪が消える事もない。

 多くの人を殺害しているし、罪は償って貰わないと。


 その後、無事に有力者や他の辺境の軍が着いたので、王国から来ている兵は王都駐屯地に送られた。

 最初から王都に帰れるように、部隊を分けてくれたという。

 これで僕達が帰れば全て終了だ。


「本当に色々とお世話になりました。この恩は必ずお返しします」

「今後とも、よろしくお願い致します」

「ばいばーい!」


 サンラインさんとクレイモアさんに見送られながら、僕達はまずレイクランド辺境伯に向かった。

 レイクランド辺境伯様の屋敷の前ではカレン様が待っていて、レイクランド辺境伯様と熱い抱擁を交わしていた。


「あなた、お帰りなさい」

「ああ、ただいまカレン」

「熱々だね」

「ラブラブだね」


 またもやといった抱擁シーンだけど、今回は下手すればレイクランド辺境伯領が壊滅する危機でもあったからな。

 スラちゃんとプリンは熱いシーンを見ない様に、触手で目を覆っている。

 熱いシーンを邪魔しちゃいけないので、僕達はそっと王城に移動した。


「先ずは共和国が落ち着いたのが一番だ。闇ギルドの事は、この後じっくりと検討する」

「後は大人に任せて、今日はゆっくり休みなさいね」

「「はーい」」


 陛下やティナおばあさまからもゆっくり休むように言われたので、僕とリズは屋敷に帰ってゆっくりする事に。

 既に元違法奴隷のお姉さん達も屋敷に戻っていて、勿論ミカエルも戻っている。

 僕達はお昼ご飯を食べた後、久々のミカエルと一緒のお昼寝タイムを満喫した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る