百七十二話 バザール家への処分内容

 僕とルーカスお兄様にルーシーお姉様の誕生日パーティがあと一週間で開かれるという頃、バザール伯爵家に対する処分が言い渡された。

 僕も謁見の間にいて良いとの事だったので、ルーカスお兄様と一緒に処分内容を聞く事にした。


「それでは、バザール家に対する処分を言い渡す」

「はい」


 令嬢の服に身を包んでいるハンナさんに対し、陛下が話し始めた。


「宰相」

「ゴホン、ではバザール家に対する処分を言い渡す。この度の不祥事により、バザール家は伯爵から子爵に降格する。また、総資産の八割を罰金として納める事。また、十年間は伯爵相当の税金を納める事。前当主と夫人は死罪とし、前当主の息子は教会預かりとする。また、当主は、ハンナ・フォン・バザールが就く事とする」

「今回の不祥事の件、誠に申し訳ございません。全て承りました」


 事前に話を聞いていた通りの結果になった。

 バザール家を潰すのではなく、ハンナさんを当主にして税金をとった方が王国の為になる。

 更に急速に産業が復興しているので、場合によっては伯爵に戻る可能性もあるそうだ。

 謁見も終わったので、ハンナさんは早速罰金を納める為に準備をする為に領地に戻るという。

 資産の洗い出しは終わっているので、直ぐに罰金は支払われる予定だ。


「アレク殿下には、本当に色々とお世話になりました。こうして領民の暮らしを守れて、感謝しております」

「これからが大変ですね。お隣さんなので、何かありましたらご連絡下さい」

「はい、これからも宜しくお願いします」


 僕がゲートでハンナさんを送ってあげる時に少し話をしたけど、ハンナさんも色々決まってスッキリした表情だった。

 これからも、きっと領民の為の統治をしてくれるはずだ。


「さて、ここからはアレクが関わる事だな」

「はい」


 場所を会議室に移して、話し合いの続きを行う。

 これからは、僕に関係する事の話し合いだ。


「先にベストール侯爵の処分を伝えておくか。アレクを突き飛ばした長男と学園の最高学年の三男は、貴族特権剥奪で資産没収の上強制労働刑になる。色々調べていたら、三男が色々と手引きをしておったぞ。当主は次男にした上で、査察が入る予定だ」

「前にマイク様がベストール侯爵の家の者が色々としていると言っていましたが、そんな事まで手助けしていたんですね」

「悪知恵だけは働くようだ。全く困ったものだ」


 少し呆れながら、陛下が話をしていた。

 でも、次男は真面目だという事だし、期待しておこう。


「では、先ずは夫を殺害された女性の件だ。正式に殺人という事がわかってな。賠償金を支払う事になる。女性の体調も元に戻っているし、そろそろ地元に帰るそうだ」

「無事に体調が良くなって、僕も一安心しています。これからは、子どもも含めて改めて幸せになって欲しいです」

「そうだな。ハンナが領主になったから、もう大丈夫だろう」


 あの女性も色々あったけど、幸せに過ごして欲しいな。

 そして、話は元違法奴隷の件になる。


「これがちょっと厄介でな、共和国の政情不安とも重なっている」

「父上、どういうことですか?」

「単純に言うと、彼女らが住んでいた村は既に滅んでいるというのだ」

「え? どう言う事ですか?」


 僕もルーカスお兄様もびっくりの情報がもたらされた。

 あの女性達の住んでいた村が、もう存在しないとは。

 一体何が共和国内で起こっているのだろうか。


「共和国内は知っての通り、権力争いが激しい。その為に、各地で散発的に争いが起こっているのだ。その過程で、どうも彼女らの村は破壊されて彼女らは違法奴隷になった様だな」

「そんな、酷いです」

「我が国も先代のバザール伯爵の様に、全ての統治がうまくいっているわけではない。しかし、紛争は起きていない。それは、ある程度の兵力が機能している事である。しかし共和国には、これといった兵力がない。有力者の私兵で色々取り締まりをしている状態だ」


 おお、なんという戦国時代。

 共和国なんで名ばかりではないか。

 これはこの先の権力闘争次第では、独裁国家になりかねないぞ。


「先の副代表は収監されたが、正直な所どうなるか分からない。当面は様子見となるが、場合によっては戦争になる可能性があるぞ」

「でも、それでは闇ギルドの都合の良い状態では?」

「むしろ、その様に仕向けている可能性もある。今は代表が何とか抑えているが、代表も高齢だ。この先の事はわからないぞ。勿論、国境の警備はこのまま高レベルを維持する」


 暫くはレイクランド辺境伯の警備を厳重にするしかないけど、あの副代表は僕に恨みを持っているからなあ。

 このまま素直に大人しくしてくれれば良いのだけど、きっと無理だな。


「と言う事で、今年のルーカスとルーシーとアレクの誕生日パーティには、海外の要人は呼ばない事にした。国内の貴族と有力者だけだ。帝国の所は、出産祝いを持っていく際についでに祝ってくれるそうだ」

「うーん、この状況下では仕方ないですね」

「むしろ、共和国の様に混乱が起きていない事を喜ぶ事としましょう」


 誕生日パーティの規模縮小はやむなしだけど、混乱が起きている共和国内と比較するのは悪いけど平和である事が一番だよね。


「さて、昼食にしよう。腹が減っては、仕事ができぬからな」

「ははは、父上らしいですね」


 お昼なのでみんなで食堂に向かった。

 すると、またもや沢山勉強をして燃え尽きているリズ達がいた。

 思わず苦笑したけど、この位で済めば良いよね。

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