百七十話 ジンさん達の結婚式について
僕とルーカスお兄様が披露宴会場に戻ると、披露宴としては終わっていておしゃべりタイムとなっていた。
僕とルーカスお兄様は、酔っ払っている陛下やビクトリア様にアリア様の元に駆けつけた。
ティナおばあさまは、ジンさんとレイナさんとカミラさんのテーブルにいるが、次のジンさん達の結婚式の話をしていたのでそのままにしておこう。
「おや? 他のはどうした?」
「屋敷でミカエルと一緒にお昼寝しています」
「朝からはしゃいでいましたからね」
「疲れたのでしょう。暫く寝かせてあげましょう」
僕とルーカスお兄様も席についてジュースを飲んでいる。
いくら立食形式とはいえ、王族の席には椅子が用意されていた。
もうかなり飲んでいるので、そろそろ王城に連れていかないと行けない様だ。
同じ事を考えていた人がいて、ティナおばあさまが近づいてきた。
「アレク君、済まないけど酔っ払った閣僚を連れて行ってくれるかしら。もうまともに立てないのよ」
「えーっと、ああ分かりました」
「陛下も一緒に連れて行きましょうね」
「そうだな。久々の休みで羽目を外したわ」
閣僚と共に陛下も王城に帰られるそうだ。
「今日はわざわざお越し頂き有難う御座いました」
「うむ、孫の顔が早く見たいものだな。ははは」
酔っ払って上機嫌の陛下を辺境伯様が見送った。
ゲートを開くと既に侍従が待ち構えていて、酔っ払った陛下を寝室まで運んでいった。
閣僚の関係者も待っていて、それぞれ馬車に乗せていくそうだ。
ちなみにティナおばあさまは、ルーカスお兄様達がまだいるので後で一緒に帰るという。
他の人を見ると、クラスメイトは街にくり出して二次会とするようで、そのまま街の宿屋に戻るという。
馬車で来た組は、今日帰る人と明日の朝帰る人に分かれる様で、今日帰る人はあまりお酒を飲んでいなかった。
披露宴会場も撤収が始まっているが、街はまだまだ盛り上がっている。
領民はこのまま夜通しお祭り騒ぎをするらしい。
「アレク君、お疲れ様」
「疲れたでしょう、ゆっくりと休んでいてね」
「いえいえ、エマさんにオリビアさんもお疲れ様です」
ティナおばあさまとルーカスお兄様達以外の人を送り届けてちょっとゆっくりしていると、エマさんにオリビアさんがジュースを持ってきてくれた。
エマさんにオリビアさん、それにマイク様は新郎の兄弟という事で朝から大忙しだった。
よく見ると、辺境伯様とイザベラ様も椅子に腰掛けてやっと一息入れている。
ケーヒル伯爵夫妻も、来賓の相手をしていて疲労困憊って感じだ。
そんな中、ジェイド様とソフィアさんは着替えてジンさんとレイナさんとカミラさんと話をしていた。
なんだろうと思ってジュースを持って近づいてみたら、ジンさんの結婚式の話をしていた。
「あら、アレク君お疲れ様。今日は有難うね」
「いえいえ、今度の結婚式の事ですか?」
「そうだよ。どの規模でやるかちょっと迷っていてね」
「ジェイド様の規模ではやらないのでどうしようかと思って」
うーん、確かに迷うよな。
ジンさん達は冒険者だけど、ジンさんは名誉貴族でレイナさんは商務卿の娘でカミラさんは宰相の孫娘。
来賓もそこそこくるし、今のジンさんの屋敷ではちょっと狭い。
かといって辺境伯様の屋敷では広すぎる。
「例えば結婚式は教会でやって、披露宴をギルドでやるとかどうでしょうか? 冒険者の参加者も多いし、宰相閣下も商務卿もギルドの料理も全く問題ないし」
「ふむ、それはいいアイディアだな。冒険者なら警備にもなるし」
「という事でジン、早速明日交渉に行くわよ」
「分かったよ。それは俺もやるよ」
無事に会場候補も決まったので、これでジンさん達も安心だろう。
と、ここでカミラさんがある事をジンさんに話した。
「ジン、明日ギルドで講習あるけどどうするの?」
「あっ」
「ジン、もしかして忘れていた?」
「あっ、じゃないでしょう!」
おお、レイナさんとカミラさんからジンさんにツッコミが入った。
ジンさんも少しバツの悪そうな表情をしている。
「あら、その講座はどんな講座かしら?」
「ティナおばあさま」
どうも途中から話を聞いていたっぽいティナおばあさまがルーカスお兄様と一緒にこちらにやってきた。
何だか面白いものを見つけたという目をしているぞ。
「えっと、無属性の身体強化についての講座です」
「冒険者の種別は特に指定せず、戦士型や格闘型に魔法使いも参加予定です」
「そう、なら私の得意分野じゃない。いいわ、この件私が引き受けるわよ。明日は今日の予備日で何も予定ないし」
「えっ、でもそれは流石に悪いですよ」
「あ、そうだ。ルーカス達も一緒に着いてきなさい。魔法の良い勉強ですわよ」
「はい……」
ああ、もうこうなるとティナおばあさまのペースになっていく。
レイナさんもカミラさんも、説得は既に諦めモードになっている。
いきなり話を振られたルーカスお兄様も、少し困惑していた。
因みに夕方になって起きてきたリズ達は、当然の様にこの提案を喜んでいた。
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