百六十九話 披露宴

 辺境伯様の屋敷の庭に並べられているそれぞれの席に来賓がスタンバって、いよいよ披露宴を開始します。

 辺境伯様が披露宴開始の挨拶をします。


「本日は、息子ジェイドとソフィアがめでたく結婚しました。まだまだ若い二人なので、皆様のお力添えを宜しくお願いします。それでは両家の発展と皆様のご健勝を祈願し乾杯とします。乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 ここからは基本的にお祭り騒ぎ。

 今日は街でもお酒とかが配られています。

 街のあちらこちらからも、乾杯という声が響いています。


「うーん、お料理美味しいよ」

「色々な料理があるね」

「私、新しいのを取ってくるよ」

「ルーシー、ちゃんと野菜も食べるんだよ」


 子ども用のテーブルでは、早速食事が始まっています。

 ルーシーお姉様は、早速おかわりを取りにいっていた。

 今日は立食のバイキング形式で、庭と繋がる部屋に椅子とかが並べられている。

 中には早くもお酒を手に取って談笑をしている貴族もいる。

 そんな中、ジェイド様とソフィアさんは来賓の挨拶を受けていた。

 僕達は、もう少ししてから挨拶に行こう。


「ほら、新郎新婦に挨拶に行くわよ」

「「「はーい」」」


 ティナおばあさまが僕達を呼びにきてくれたので、皆で揃ってジェイド様とソフィアさんの所に向かっていった。

 ミカエルは、僕が抱っこして連れて行った。

 皆でジェイド様とソフィアさんの所に行くと、他にも辺境伯様とイザベラ様にケーヒル伯爵夫妻がジェイド様とソフィアさんと話をしていた。


「あら、皆で挨拶に来てくれたの?」

「うん、そうだよ!」


 イザベラ様が僕達に話しかけると、リズとスラちゃんが元気よくこたえていた。


「「「結婚おめでとうございます!」」」

「あうー」

「ちゃんと言えたわね。ありがとうね」


 僕達が揃ってジェイド様とソフィアさんにおめでとうって言うと、ソフィアさんが僕達の頭を撫でてくれた。

 ミカエルはジェイド様に抱っこされていて、とてもご機嫌だ。

 ソフィアさんも、ジェイド様が抱いているミカエルの頭を撫でていた。


「今度は自分の子どもを抱っこしないとな」

「どんな子どもが生まれるか、とても楽しみね」


 ジェイド様とソフィアさんがミカエルを抱っこしているのを、ケーヒル伯爵夫妻が温かい目で見ていた。

 確かにジェイド様とソフィアさんの子どもだと、とても美形な子が生まれそうだ。

 そこにクラスメイトが集まってきた。

 

「本当ね。何だかもう夫婦感が凄いわ」 

「赤ちゃん抱いていると、長年連れ添った夫婦みたいだね」


 クラスメイトがジェイド様とソフィアさんの事を言いながら、今度はクラスメイトがミカエルの事を抱いている。

 女性陣が抱いている分にはミカエルは大人しかったのだが、男性陣が抱っこをすると様子が変わってきた。

 

「おい、お前が抱っこしたら途端に機嫌が悪くなったぞ」

「あれ? 何だか泣きそうだ」

「ふぇ」


 抱き疲れもある上に男性陣の下手くそな抱っこで、ミカエルがグズってきた。

 そして、僕の方を見て手を伸ばしてきた。


「うー、にー」

「「「ミカエルが喋った!」」」


 ミカエルは男性から逃げようと僕の方に手を伸ばしているが、僕の事を呼んだ気がした。


「にー、にー!」

「はいはい、お兄ちゃんですよ」

「にー!」


 相変わらず僕の方を見て呼ぶので、男性からミカエルを預かると、安心した様に僕の事を呼びながら抱きついてきた。


「あはは、まさかミカエルちゃんが初めて喋るのが、お前から逃げたくてアレク君を呼ぶ為とはな」

「よっぽどお前の事が怖かったんだな」

「必死になってお兄ちゃんを呼んでいたからな」


 クラスメイトはまさかの展開に大爆笑。

 抱っこを嫌がられた男性は落ち込んでいるけど。

 そしてミカエルに対してリズ達が色々と聞いている。


「ミカちゃん、リズの事は?」

「ねー」

「ミカちゃん、エレノアは?」

「ねー」

「ミカエル、ルーシーは?」

「ねー」

「ミカエル、僕は?」

「にー」


 的確に答えていてリズ達は喜んでいたが、もしかしたら男性はにーで、女性はねーと答えていているだけかもしれない。

 試しに、ジェイド様とソフィアさんの事を呼んでみてもらった。


「ミカエルちゃん。私は?」

「ねー」

「うん、もしかしたらでもなく男性の事をにーって呼んで、女性の事をねーって呼んでいる疑惑が高まったわね」

「しょうがないよ、赤ちゃんだよ」


 僕の予想通りだと思ってクラスメイトも納得していた。

 しかし、ここで事件が起こった。


「ミカエル、私の事は?」


 ジェイド様がミカエルに何て呼ぶか聞いた時だった。


「じー」

「え? もう一回言ってみて」

「じー」

「あはは、ジェイド、お前爺さんだってよ」

「アハハハ、腹痛い。アハハハ」


 ミカエルがジェイド様の事をじーと言い、特に男性陣は大爆笑。

 ジェイド様も爺さんと呼ばれてちょっと苦笑している。

 対して、ソフィアさんは何かに気がついた様だ。


「ミカエルちゃん。もしかしてジェイドだからじーなの?」

「うー」

「おお、ミカエルちゃん頷いたぞ」

「どうやらジェイド様だから、じーらしいね」

「なーんだ、爺さんって方が面白かったのに」


 ミカエルはジェイド様の事を理解してじーって言っている様だ。

 

「すー、ぷー」

「おお、スラちゃんとプリンちゃんの事も理解しているよ」

「ミカちゃん頭いい!」


 ミカエルは、リズの頭の上に乗っているスラちゃんとプリンの事も言っていた。

 ミカエルに名前を呼ばれたスラちゃんとプリンもかなり喜んでいた。


「ふぁ」

「ミカエル、眠くなったかな? 寝かせてきます」

「リズも行くよ」

「エレノアも!」


 ミカエルがあくびをし始めたので、皆揃ってミカエルを寝かせるという。

 というか、絶対に皆お昼寝しそうだけど。

 案の定、ミカエルを寝かせたら、リズとエレノアとルーシーお姉様がミカエルと一緒に寝始めた。


「大体予想ついていたけど、あっさりと寝ましたね」

「朝からはしゃいでいたからな」


 僕とルーカスお兄様は、ベッドですやすや寝ている四人を置いて披露宴会場にもどった。

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