百六十八話 結婚パレード

 一波乱あったブーケトスも何とか終わり、いよいよ市内をパレードです。

 実はここ数日は曇り空が多かったけど、今日は絶好の好天に恵まれています。

 教会の前には馬車と騎馬隊がスタンバイしていて、既に多くの市民も集まっています。

 

「スラちゃんとプリン、護衛頼んだよ」

「頑張ってね」


 今回辺境伯様のイザベラ様が乗る馬車にはスラちゃん、ジェイド様とソフィアさんが乗る馬車にはプリンが護衛として同行する。

 スラちゃんとプリンは、分かったとふるふると震えると早速オープンタイプの馬車に乗り込んだ。

 騎士が馬車の周りをガッチリ警備するし、街道沿いも人が飛び出さないように監視の目が光っている。

 そんな中、馬車に辺境伯様とイザベラ様にジェイド様とソフィアさんが乗り込んだ。

 どうやらパレードに向けて、準備万端の様だ。


「では、出発!」


 騎士団長の合図でパレードはスタート。

 スタートに合わせて、来賓や子ども達が白い花びらや紙切れを空中に巻いている。

 僕達が依頼で採取した花びらも勿論混じっている。


「わあ、とっても綺麗ね」

「ドレスが華やかね」

「跡取り息子も凛々しくなったな」

「この前の戦いが、良い経験になったのだろう」


 沿道からは市民が歓声を上げていた。

 馬車に乗り込んだ面々も手を振ってこたえている。

 スラちゃんとプリンも、ちゃっかりと触手をふりふりと振っているぞ。


 馬車はゆっくりと街道を進んでいき、やがて教会から見えなくなった。

 これから市内を巡回して、辺境伯様の屋敷に到着するという。


「じゃあ、アレク君よろしくね」

「はい、辺境伯様の屋敷にゲートを繋ぎます」


 教会に残ったマイク様からゲートを繋いでと頼まれた。

 これから辺境伯様の屋敷で披露宴が開かれるので、来賓を移動させます。


「これから屋敷に移動します」

「順に進んでください」


 エマさんとオリビアさんも来賓の誘導を行っている。

 昔だったら馬車を何往復もさせて来賓を運んでいたらしいが、今回は僕のゲートがあるので一回で全員移動できる。

 僕もゲートを繋ぐ距離が短いので、魔力をそんなに使わなくてもいいのが助かっている。

 ちなみにリズ達は、いの一番で屋敷に向かっていった。

 全員を送り届けてから、僕も屋敷に向かった。


「お兄ちゃん、お疲れ」

「あうー」

「お、ミカエルも皆んなが到着するのを待っているのか」

「あう」


 僕が屋敷につくと、子ども用のテーブルの所に向かった。

 既にリズをはじめとする子ども達が、ジュースを飲んでいる。

 ミカエルも、赤ちゃん用の椅子に座って皆とジュースを飲んでいた。

 この後、僕達と一緒にパレードを出迎える様だ。


「うーん、やっぱり赤ちゃんは可愛いわね」

「本当ね。でも、ちょっと成長したリズちゃんとかも可愛いわよ」


 僕達のいるテーブルには、ジェイド様とソフィアさんのクラスメイトが集まっている。

 集まっているのは主に女性陣だが、男性も何人か来ていた。

 特に女性陣は、ミカエルの事を順番に抱っこしている。

 ミカエルも特に泣くことなく大人しく抱っこされている。


 来賓はというと、男性陣と女性陣で集まって話をしていた。

 お互いの領地の事かなと思ったら、家族や子どもや健康の事ばかりだ。

 こういう場だし、真面目な話はしていない様だ。


 その間に、僕は僕の屋敷で保護している女性の元に向かった。

 あまり無理をしない範囲でパレードを見学するというが、どうなったのだろうか。

 屋敷に入ると、一階の通りに面した玄関に皆集まっていた。

 

「皆さん、今戻りました」

「アレク君、お疲れ様。声が色々と聞こえてきたから、戻ってきたのは分かったよ」

「ここでも通りがよく見れるし、パレードが楽しみだわ」


 流石に大勢のいる所にいるのはまだ不安らしいが、玄関からも通りの様子が見えるし問題ないという。


「そういえば、朝から大勢で屋敷に詰めかけていてすみません」

「アレク君が謝る事はないわ。会った事のある人が多いし、新しい人も子どもだからね」

「ルーカス王子様は良い人になるわよ。私達の事を色々気にかけて話しかけてくれたわ」


 ルーカスお兄様に限らず、ルーシーお姉様もエレノアも僕の屋敷にきたら女性に一杯話をしている。

 この事がかなり救われるって言っていた。

 お、通りが賑やかになってきた。

 そろそろ馬車隊が到着するかな。


「僕はそろそろ戻ります。お料理も持ってきてくれるらしいので、楽しみにして下さいね」

「ええ、アレク君も気を付けてね」

「頑張ってお兄ちゃんするのよ」


 お姉さん達に見送られながら、僕は辺境伯様の屋敷の前に移動した。

 既に他の来賓も移動していて、段々と近づいてきている馬車隊の到着を待っていた。

 僕の元にリズとかもやってきて、ミカエルはエマさんに抱っこされていた。


「お兄ちゃん、馬車きたね」

「街の人も凄い歓声だね」

「そうだね。ジェイド様とソフィアさんの結婚を、皆で歓迎しているね」


 リズとエレノアと話をしているうちに、馬車はどんどんと接近してくる。


「全体、止まれ!」


 騎士団長の合図で隊列が止まり、馬車から辺境伯様とイザベラ様そしてジェイド様とソフィアさんが降りてきた。

 ジェイド様とソフィアさんが沿道の観衆に向かって手を振ると、再び大きな歓声が湧き上がった。

 ちゃっかりとスラちゃんとプリンも、皆の足元で触手を二つ出して観衆に向かってブンブンと振っていた。

 特に小さいプリンは、触手を振る姿が何だか可愛らしいな。

 とっても満足したのかスラちゃんはリズの頭の上に、プリンは僕の頭の上に乗ってきた。

 そして、皆で辺境伯様の屋敷の庭にぞろぞろと移動している。

 さて、これから披露宴の始まりだ。

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