百六十六話 ウェディングドレス

 教会に着くと、イザベラ様は早速ジェイド様とソフィアさんの所に向かったらしい。

 少し遅れて辺境伯様も向かっていく。


「リズはソフィアさんのウェディングドレスを見にいく?」

「行く!」

「エレノアも行く!」


 という事で、僕達もジェイド様とソフィアさんの所に向かった。

 結局子ども達全員で控室になだれ込んだ。


「失礼します」

「おお、ジェイドお兄ちゃんカッコいい!」

「はは、ありがとうリズちゃん」


 ジェイド様の所に行くと、クラスメイトの男性陣がジェイド様を囲んでいた。

 どうも、女性陣は全員ソフィア様の所に行ってしまった様だ。

 ジェイド様は白を基調としたスーツに身をつつんでいる。


「ソフィアお姉ちゃんは?」

「隣の控室だよ」

「よーし、いくぞー!」


 リズはソフィアさんの控室の場所を聞くと、他の子どもを引き連れてあっという間にいなくなってしまった。


「ははは、一分もいなかったぞ」

「あわわ、すみませんジェイド様」

「いや、これは仕方ないよ。結婚式は花嫁が主役だからな」


 僕以外の子どもがあっという間にいなくなってしまったので、僕は慌てて謝ってクラスメイトからは冷やかされていた。

 ジェイド様はさっきからこんな感じだったのか、もう諦めた表情だった。

 ジェイド様には悪いけどリズを追わないと行けないので、僕もソフィアさんの控室に向かった。


「失礼します」

「もう、お兄ちゃん遅いよ」

「リズ達がジェイド様の所に一分もいなかったから、僕が色々と話をしていたの」


 ソフィアさんの控室に入ると、リズが僕が来るのが遅いとプリプリしていた。

 リズ、お前が早すぎるんだぞ。


「ふふ、お兄ちゃんはしっかりしているわね」

「可愛いわね、こういう子どもがほしいわね」

「あー、分かる分かる。しっかりお兄ちゃんと、天真爛漫な妹ちゃんだね」

「あー、お兄ちゃんだけズルいよ」


 何故かソフィアさんのクラスメイトが、僕の事を順番に抱きついたり頭を撫でてきたりしている。

 リズは僕だけ抱きつかれていてズルいと言っているが、僕はいきなり抱きつかれてドキドキしているのですが。


「ほらほら、その辺にしておきなさい」

「ソフィアさん、有難う御座います。とても綺麗です」

「うふふ、相変わらずアレク君は話がお上手ね」


 ソフィアさんは、とても綺麗なウェディングドレスを身にまとっている。

 ソフィアさんはスタイルも良いので、とっても見栄えがある。

 すると、ソフィアさんのクラスメイトが再び僕とリズの事で絡み始めてきた。


「ねえねえ、ソフィア。お兄ちゃんと妹ちゃんのエピソードって何かない?」

「うーん、大したことはないよ。アレク君がリズちゃんの口を拭いてあげたり、寝る時はいつも一緒だったり。外に出かける時は手を繋いだりとかかな?」

「いやいや、超可愛いでしょう」

「二人仲良しで羨ましいな」


 周りの人が僕とリズの事を話していたら、エレノアがヤキモチを焼いたようだ。

 急に僕に抱きついてきたぞ。


「うー、エレノアもアレクお兄ちゃんと仲良しなの。ねー、アレクお兄ちゃん」

「そうだね、仲良しだね」

「うん!」

「あー、エレノア抜け駆けズルいよ。リズもお兄ちゃんに抱きつく!」


 僕の事を巡ってリズとエレノアが争う形になり、ソフィアさんのクラスメイトは更にヒートアップしている。


「なになに? お兄ちゃんを巡って争い?」

「小さくても女の子ね」

「お兄ちゃん大好きな、妹の禁断の恋ってやつかね」

「いやいや、アレク君とリズちゃんは、血縁上はいとこだから。エレノア王女の事も、ほぼ周りが認めているし」

「という事は、アレクは既に両手に華なんだ」

「ちょっと羨ましいかも……」


 両サイドからギュッと抱きつかれている僕の事を、羨ましそうに見つめているソフィアさんのクラスメイト。

 いや、二人を相手にするのは結構大変ですよ。

 と、ここでソフィアさんの両親であるケーヒル伯爵夫妻が控室にやってきた。


「おお、まだいたのか。もうそろそろ始まるぞ」

「ほら、そろそろ教会に移動してね」

「「「はーい」」」


 ケーヒル伯爵夫妻は、どうも良い時間らしいので、声をかけてくれたらしい。

 それに、ケーヒル伯爵はこれから大役が待っている。


「お姉ちゃん、また後でね」


 リズがソフィアさんにバイバイして、僕達は教会に向かっていった。

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