百四十七話 披露宴と食べすぎ飲みすぎ

 披露宴会場に着いたので、指定された席に座る。

 念の為に披露宴会場でも怪しいものはないか確認するが、大丈夫そうだ。

 例の共和国からの飲み物も一切出ていない。

 どうも、速攻で廃棄処分になったらしい。


「お兄ちゃん、お腹すいたよ」

「アレクお兄ちゃん、ご飯食べちゃだめ?」

「もう少し待ちなさい。皇帝陛下とケイリさんが入ってきて、乾杯したら食べられるからね」

「「はーい」」


 リズとエレノアはお腹がすいているらしく、目の前に出されている前菜に視線が釘付けになっている。

 スラちゃんとリルムの所にいるプリンも、お腹ペコペコの様だ。


「新郎新婦の入場です。皆様、盛大な拍手で迎えて下さい」

「「わーい」」


 司会のアナウンスで皇帝陛下とケイリさんが披露宴会場に入ってきた。

 皇帝陛下もケイリさんも、濃い青の衣装に着替えている。

 多くの人から拍手を受けながら、席に座った。

 さて、いよいよ乾杯の音頭だ。


「それでは、乾杯の音頭をブンデスランド王国殿下、アレク様より頂戴します」

「え!」


 おい、何で子どもが結婚式の音頭をするんですか。

 戸惑いながらも、僕は指定された所に立った。

 おお、マイクみたいな声を大きくする魔導具があるのか。

 さて、何て言おうかな。


「皇帝陛下、ケイリさん。ご結婚おめでとう御座います。ご指名という事ですので、一言挨拶させて頂きます。私は昨年のリルム皇女の誕生日パーティにご招待頂いた時に、初めてお二人が結婚することを知りました。そして、結婚発表が決まった時に二人がにこやかにされていて、リルム皇女が直ぐにケイリお母さんっと言ったことを鮮明に覚えています。これからも、そんな明るい家庭を築いて下さい」


 パチパチと、周りから拍手がされている。

 リルムはわざとケイリお母さんって言っているぞ。

 というか、リズとエレノアから早く乾杯してと視線で圧力をかけられている。

 僕も長くは話したくないし、さっさと終わりにしよう。


「それでは、お二人の幸せと皇族の皆様並びに参加されました皆様のご健勝を祈願して乾杯とします。乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 僕の乾杯の音頭で、披露宴はスタートした。

 席に戻ると、何だかどっと疲れが出たぞ。


「うん、アレクは本当に演説が上手いな」

「本当だわ。因みに、来賓向けの式事にはアレク君が挨拶するって書いてあるのよ」

「はあ、最初から仕組まれていたとは。道理で僕が前に行っても、どよめきが殆どなかったんですね」

「アレク君はこの前の謁見でも見事な口調だったし、帝国の貴族や官僚もアレク君の事を褒めていたのよ」

「それでも、黙っているのは勘弁ですよ……」


 国王陛下とアリア様が褒めてくれるけど、正直心臓に悪いぞ。

 因みにリズとエレノアは、お腹がよほど空いていたのか、スラちゃんと共に食事を一気に食べている。

 とはいえ、挨拶はしないといけないので、皇帝陛下とケイリさんに挨拶をする。


「皇帝陛下、ケイリさん。ご結婚おめでとう御座います」

「有難う。素晴らしい挨拶だったぞ」

「本当に素晴らしい挨拶でしたわ。有難うございます」


 国王陛下と共に皇帝陛下とケイリさんに祝福を伝えると、先程の僕の挨拶も褒められた。

 うーん、何だかこそばゆいな。


「リルムも嬉しそうだな」

「うん、ケイリお母さんが本当にお母さんになったんだよ」

「リルムは、前からケイリの事をずっとお母さんって呼んでいたのよね」

「うん!」


 ケイリさんが結婚して、リルムはニコニコが止まらない。

 皇妃様も、にこやかにリルムを見つめていた。


「アレク殿下、素晴らしい挨拶有難う御座いました。私達家族は、本当に殿下にお会いできて良かったですわ」

「いえ、私もケイリさんには色々と助けられましたから。こうして無事に結婚出来て良かったです」


 ケイリさんの母親であるシェジェク伯爵は、娘の晴れ姿に感無量って感じだ。

 とっても嬉しいのが全身から表現されている。

 

 その後も、僕は色々な人からさっきの挨拶の事を褒められた。

 色々な人からずっと褒められているので、何だかこそばゆいな。

 そしてリズとエレノアは、出てきている料理を堪能している。

 というか、若干食べすぎなのがきになるが。

 周りの大人も、めでたい席だというのでじゃんじゃんとお酒を飲んでいる。

 もうかなりのテンションとなっていた。


 こうして大きなトラブルもなく無事に披露宴は終了した。

 あくまでも披露宴は、だ。


「うーん」

「飲みすぎたぞ」

「祝いの席ですからね」


 大人はベロンベロンに酔っ払っていた。

 相当盛り上がって、どんどんとお酒を飲んだみたいだぞ。

 そして、リズとエレノアはというと……


「「うーん、お腹痛い……」」

「二人とも食べすぎですよ」

「「お腹痛いよ……」」


 食べすぎでお腹を壊して、トイレに籠もっていた。

 これには、流石にアリア様も苦言を言っていた。


 結局、共和国の薬入り飲み物を飲まなくても、子ども達は食べすぎでお腹を壊し、大人は飲み過ぎで泥酔状態だった。

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