百四十八話 宴の終わりと共和国への対応

「うう、頭が痛い……」

「昨日は、些か飲みすぎたぞ……」


 皇帝陛下とケイリさんの結婚披露宴の翌日。

 食堂には二日酔いの皇帝陛下と国王陛下の姿が。

 昨日調子に乗ってお酒を飲みまくった為に、酷い二日酔いになったそうだ。

 僕が回復魔法をかけようとしたら、皇妃様とアリア様から笑顔で止められた。

 どうやら飲みすぎて泥酔しケイリさんとの初夜どころではなかったので、このまま苦しんで貰うとの事らしい。

 因みに昨日食べ過ぎでお腹を壊したリズとエレノアは、一晩たったらケロッとしていたが、こちらもアリア様の指示でお粥が出されていた。

 リルムはケイリさんと仲良く食事中。

 スラちゃんとプリンも、ちゃっかりリルムとケイリさんと一緒に食事をしています。


「陛下、この後帰りますが動けますか?」

「アレ、ク……た、たの……」

「うふふ。アレク君、まだダメよ。午後から会議があるから、それまでは治療は行わないでね」

「はい……」


 アリア様の笑顔の圧力で、陛下への治療は断念。

 陛下はテーブルの上に思わず倒れていた。


「じゃあ、リルムちゃんバイバイ!」

「赤ちゃん生まれたら、直ぐにくるね!」

「バイバーイ!」


 リルムとお別れの挨拶をして、僕は王城にゲートを開いた。

 皇妃様の出産が夏頃なので、また直ぐに再会する。

 因みに二日酔いの陛下は、アリア様に担がれている。

 まるで戦利品の様に扱わなくてもいいのではと思ったよ。


「あなた、お帰りなさい。話は聞きましたよ。二日酔いらしいですね。会議まで反省してもらいましょう」

「お父様、かっこ悪い」

「お父様、お酒臭い」


 陛下は、出迎えのビクトリア様とルーカスお兄様とルーシーお姉様からボロクソに言われながら担架に乗せられて自室まで運ばれていた。

 流石に酔っぱらった父親の姿というのはみたくないらしい。

 しかし、こちらにも屍となっている人物が一人。


「ジンさん、どうしたの?」

「燃え尽きているわね」

「......」


 椅子の上で真っ白になって燃え尽きているジンさんの事を、リズとエレノアに加えてスラちゃんとプリンもちょんちょん突っついている。

 とはいえ、レイナさんとカミラさんはそこまで心配はしていなさそうだ。

 

「どうせ普段やらないマナー講座で、頭の処理がオーバーフロー起こしただけでしょう」

「ジンさんに治療しますか?」

「せっかく覚えたことを忘れるといけないから、治療はいいわよ。どうせ直ぐに復活するわよ」


 という事で、ジンさんも治療せずにそのまま放置する事に。

 突っついてもジンさんから反応が無くて暇していたリズとエレノアが、新たに現れた人の所に駆けていった。


「おばあちゃん、ただいま!」

「ただいま!」

「おっと、リズちゃんもエレノアもお帰り。どこも怪我はしていない?」

「「うん!」」


 リズとエレノアがティナおばあさまに抱き着いていた。

 僕もティナおばあさまの所に行くと、ティナおばあさまが頭を撫でてくれた。


「ただいま戻りました。ティナおばあさま」

「ええ、お帰りアレク君。色々と話は聞いているわ。特に披露宴のスピーチは素晴らしかったって、とても評判が良いのよ」

「あはは、有難う御座います」


 あのスピーチをする事になったのは、本当に直前で言われたからかなり焦ったよ。

 上手くできて良かったとしておこう。


「さて、アレク君達も少しお昼寝ね。アレク君は夕方から会議出ないと」

「「「はーい」」」


 ティナおばあさまの提案でお昼寝タイムになったのだが、ルーカスお兄様とルーシーお姉様も一緒に寝る事に。

 どうやらお兄様とお姉様も、連日の勉強で疲れてしまった様だ。


 お昼寝の後は共和国に向けての対策会議。

 たまたま共和国と国境を接している辺境伯が王都にいたので、一緒に会議に出てもらった。


「こうして会うのは初めてですな。レイクランド辺境伯です」

「アレクサンダーです。宜しくお願いします」


 レイクランド辺境伯様はガッチリとした軍人系で、辺境伯軍も精鋭揃いだという。

 今回は国防関連なので、ルーカスお兄様も一緒に参加します。

 陛下も回復魔法をかけて、ようやく動けるようになりました。


「以前から共和国の副代表は評判が良くありません。黒い噂も絶えず、副代表を排除しようとする動きもあります。しかし、副代表は私設の兵も持っており中々に手強いのが現状です」

「とはいえ、今回は本当に何かをしてくる可能性がある。先ずは諜報の強化を行い情報を集めよう」


 あの副代表はしつこい性格に見えたし、何より僕も悪人と判断している。

 まだ他国の事だから下手に介入出来ないとはいえ、できるだけの事はしておこう。


「アレクよ、すまんが明日軍務卿とレイクランド辺境伯と共に国境に向かってくれ。万が一に備えてゲートができるようにしたほうが良いだろう」

「分かりました。リズと共に帰って準備をします。ホーエンハイム辺境伯様にもお伝えして良いでしょうか?」

「儂からホーエンハイム辺境伯宛に書状を用意する。国境の警備を厳重にするように、各辺境伯に命ずる」

「はっ」


 急遽だけど、共和国に接するレイクランド辺境伯領に向かう事になった。

 リズと共にホーエンハイム辺境伯様の所に向かって事情を話して、その間にチナさんに準備してもらった。

 今回レイクランド辺境伯に魔導船で行くのだが、レイクランド辺境伯様の侍従がついてくれるというので僕とリズの二人で行く事になった。


「元々共和国は十年前の紛争の影響が大きく、権力争いも長く続いている。副代表は、その混乱に乗じて勢力を伸ばしてきたのだ」

「その経緯からして、思いっきり怪しいですね」

「裏社会に詳しいともいわれている。恐らく、その中には闇ギルドも含まれているだろう。当分はアレク君の屋敷を含めて、身辺警護を強化しよう」

「すみません、ありがとうございます」


 辺境伯様との話し合いで、僕とリズの警備が強化される事になった。

 うーん、暫くは冒険者活動もお休みになるかな。

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