百四十二話 たまに見せる笑顔

「ふあ、うーん」

「あら、アレク君起きちゃったの?」

「あ、アリア様。おはようございます」


 翌朝、目が覚めてベッドの上で伸びをしながら目をこすっていたら、先に起きていたアリア様に声をかけられた。

 リズとエレノアとリルムはぐっすり眠っているので、起こさない様にそっとベッドから降りる。

 アリア様は寝巻のままソファーに座っていて、侍従が入れた紅茶を飲んでいた。

 僕もアリア様の向かいの椅子に座り、同じく侍従が入れてくれた紅茶を一口飲んだ。


「ありがとうございます。とても美味しいです」

「ふぇ。いえ、こちらこそありがとうございます」


 あれ?

 僕がニコッとしながら紅茶を入れてくれた侍従にお礼をしたら、侍従が真っ赤になってお礼を言ってきた。

 僕はこの侍従に何かしたっけ?

 すると、アリア様がふふふと笑いながら理由を教えてくれた。


「ふふふ。あのね、この侍従はいつもアレク君達を可愛いって言っていたのよ。そうしたらアレク君が可愛らしくニコッと笑ってお礼を言ったのよ。私でも可愛いと思った位よ」

「あ、あ、アリア様、秘密にして下さいとお願いしました」

「そうなんですか。でも可愛いって言ってくれて嬉しいです」

「あ、ありがとうございます…...」

「うーん、たまに見せるアレク君の笑顔って強烈なほどに効果抜群ね」


 アリア様の話してくれた理由は特段おかしい物ではなかったので、再び侍従にニコリとしたら侍従はまた真っ赤な顔になってしまった。

 その様子を見てアリア様が何か言っているけど、気にしない事にしよう。


「ふわあ」

「うーん」

「ねむねむ……」

「あ、ほらリズ達が起きましたよ」

「はい、分かりましたわ」


 リズ達が起きたので侍従に伝えると、ようやく落ち着いた侍従がリズの元に向かっていった。

 さて、今日も一日頑張ろう。


「今日は午前中に、昨日お昼すぎに到着した共和国の首脳との会談があります。その後、夕方に教皇国からの使者との会談が予定されています」


 係の者が国王陛下や僕達に今日の予定を伝えている。

 海外からの来賓は、これで全部揃ったらしい。


「教皇国は司教様や司祭様もいるから何となく分かりますけど、共和国の人とは初めて会います」

「民主主義の国だから価値観が違うかもしれん。だからこそ学ぶ事もあるのだ」


 陛下も言っているけど、貴族主義の国と民主主義の国だから考え方が違うのは当たり前。

 だからこそ、役に立つ情報も得られるというわけか。

 ただ、自分の理想をゴリ押しするのは勘弁だ。


「じゃあ、今日も午前中はしっかりと勉強しないとね」

「新たな問題も作ったわ」

「今日は私も一緒に教えますよ」

「「えー!」」


 リズ達は勉強の時間か。

 今日はレイナさんも教師役で参加するらしいので、絶対に逃げられないぞ。

 アリア様の言葉に、リズとエレノアが絶望的な表情になっている。

 スラちゃんがプリンを頭の上に乗せながらリズの方をちょんちょんしているけど、慰めている雰囲気ではなさそうだ。

 ともあれ、面会用の服に着替えないと。

 僕達はそれぞれ動き出した。

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