百四十三話 怪しい副代表

 着替えを終えて、陛下と閣僚と共に王城のとある部屋へ。

 部屋には派手な服を着た男性が三人いた。

 何だか貴族とあまり変わらない格好だぞ。

 その中の禿げて太ったおっさんが代表らしく、国王陛下に握手してきた。

 何だろう?

 この人は要注意って気がする。


「初めてお目にかかる。ガイアード共和国の副代表をしている、ブッフォンと申す」

「ブンデスランド王国国王ウイザードだ。この子どもがアレクだ」

「ブッフォン様、アレクサンダーと申します。宜しくお願いします」

「アレク殿下の事は、我が国にも届いておる。しかし、こうして実際に会うと何と立派な子どもだろうか」

「恐縮でございます」


 挨拶も済んだので、ブッフォン様と軽く話を始めた。


「アレク殿下は、我が国の仕組みはご存知ですか?」

「民主主義と伺っております。選挙で国の代表を決めるという事でしょうか?」

「正しくその通りになります。国民の代表を選挙で決める。それが我が国の政治の仕組みになります」


 やはり選挙制度があるのか。

 とはいえ、前世の日本とはちょっと違うのかも。


「では、意見が同じ者が集まった政党が存在しているのですね」

「政党は存在しております。しかしながら、与党のガイアード国民党が議席の多くを占めています」

「ということは、安定多数与党ということで良いでしょうか」

「左様で御座います。そのために、意思決定が早いのが特徴で御座います」


 とはいえ、気をつけないと独裁政権となってしまう。

 もしかして、さっき感じた危うさってのはこういう事なのかもしれない。

 この事で、ちょっと陛下と話がしたいな。

 陛下も何かを感じたのか、話に割り込んできた。


「ブッフォン殿。国内の情勢は如何かな?」

「中々に厳しく。十年前の紛争で我が国は大きな被害を受けましたから。やっと十年前の水準まで国力が回復しました」

「我が国も大きな被害を受けたが、幸いにも国内生産は早めに回復した。帝国も長きに渡り政情不安があったが、ようやく落ち着いてきた」

「国家の発展の為には、安定した政治基盤が必要です。我が国も苦心しております」


 それらしい事を言っているが、やはり何だか怪しい。

 その後の閣僚との話も、他愛のない物で終わった。

 

「やはりというか、アレク殿下も奴を怪しいと思ったか」

「はい。何かありそうです」


 共和国との会談が終わり、たまたま皇帝陛下と落ち合えたので、国王陛下と共に簡単な話し合いをすることに。

 どうやら皇帝陛下もたまたまを装って、僕達と話がしたかったという。


「奴は権力への執着が物凄い。更に黒い噂も絶えない。今は代表が何とか押さえているが、その代表も高齢だ」

「とてつもなく不安要素がいっぱいですね」

「我が国も間者から同様の情報を得ているが、これは共和国側の国境と辺境伯領の警備を厳重にしないとならないな」

「帝国も同じだ。幸いにも国内の情勢が安定した。国境の警備をそれとなく増強しておこう」

「副代表と闇ギルドが絡んでいる可能性はありますか?」

「「奴は間違いなく闇ギルドと繋がっている」」


 両国の思惑は一致した。

 しかもあの副代表は、闇ギルドと繋がっていると断言している。

 結婚式で再び会うはずだから、鑑定でもっと詳しく調べておこう。

 と、ここで部屋の中にヘロヘロになったリズ達が入ってきた。

 どうやら勉強は終わったらしい。


「お兄ちゃん、疲れたよ」

「アレクお兄ちゃん、頭ナデナデして」

「リルムもナデナデ」

「はいはい、よく頑張りました」

「「「えへへ」」」


 勉強頑張ったから褒めてほしいらしく、頭をなでてあげたら三人ともようやく復活したらしい。

 復活したら、一斉に喋り始めた。

 どうも、何かあったらしい。


「あ、そういえば、太ったハゲの人が何だか怪しかったよ」

「遠くから、エレノア達の事をジロジロと見ていたの」

「そのうちに、悪い事をするよ」

「太ったハゲって、一人しか思いつきませんね」

「リズ達の勘でも、怪しいと判断されたか」

「奴はロリコン疑惑があるが、人の娘をジロジロ見るのはけしからんな」


 ロリコン疑惑が入っただけで、もう嫌な相手決定だ。

 リズ達も嫌悪感が凄いらしいし、これからも要注意だ。

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