百三十四話 ちょっとした結婚騒動

 ジンさんとレイナさんとカミラさんの結婚の話を巡って、王城で勉強する日に皆で王城に向かいます。

 王城の控室には、当事者のジンさんとレイナさんとカミラさん。

 ナンシーさんとルリアンさんもいる。

 宰相とレイナさんの実家のグラスコー公爵夫妻にティナおばあさまと辺境伯様。

 そして、何故か僕と陛下も一緒にいます。

 因みに全員キチンとした服装で、レイナさんのドレス姿は初めてみたけどとても似合っていた。


「公爵と宰相が絡む結婚だ。余が間に入っても良いだろう」


 と、陛下のお言葉。

 周りの人は、最近忙しいから内政から逃げたいと思っている。

 因みに野次馬したかったリズ達は、ビクトリア様とアリア様の監視で勉強の最中です。

 なにはともあれ、話し合いのスタート。


「おじいちゃん、何であんな手紙をジンに出したの!」

「そりゃ、カミラがジンに惚れているのが分かりきっていたからじゃよ」

「なっ!」


 どうもこの前カミラさんが宰相を問い詰めても、この場で話すとのらりくらりかわされたらしい。

 早速カミラさんが祖父である宰相に先制攻撃を仕掛けたが、宰相があっさりとカウンターを決めた。

 カミラさんは、カウンターを食らって顔が真っ赤になっている。


「それは私も分かっていました。カミラがジンに惚れているって」

「うん、流石に俺も分かっていたよ。じゃなきゃ、ずっと一緒に冒険者やらないだろう」

「な、な!」


 更にレイナさんとジンさんからの追撃。

 自分の恋心がバレバレだったのが分かって、カミラさんは更に顔が真っ赤になった。


「これで全く知らない女性だったら反対するが、同級生である宰相の孫娘なら心配いらないな」

「しかも、この間のアレク殿下の帝国への外遊の護衛任務で、晴れてAランクに上がるという。素晴らしいじゃない」

「な、な、な……」


 レイナさんの実家からもあっさり認められた。

 因みにジンさんの両親は既に亡くなっているらしく、ジンさんが決断すればいいらしい。


「ちょうどアレク君の隣の屋敷が空いたから、その屋敷を使えばいい。我が領の危機に対応してくれた報酬にしても良いな」

「私達の婚約者も、アレク君とリズちゃんの護衛に着くことになったの」

「だから、こちらとしても都合がいいかなって。それなら冒険者も続けられるし、子どもができても、まとめて面倒みれるよ」

「な、な、な、な……」


 更に辺境伯様とパーティーメンバーのナンシーさんとルリアンさんからも追撃を受けた。

 というか、ナンシーさんとルリアンさんに婚約者がいたんだ。

 しかも僕の屋敷の護衛に付くのは心強い。

 完全に外堀を埋められてしまったカミラさんは、全く反撃が出来ないでいる。

 そして、ティナおばあさまからトドメの一言。


「カミラ、女は度胸よ。ここでジンに告白しちゃいなさい!」

「え、あ、うぅ……」


 ティナおばあさまから発破をかけられて、カミラさんは顔を真っ赤にして俯いた後、意を決してジンさんとレイナさんの方を向き直った。


「ジン、レイナ。悪いけど、私もジンの事が好きだ。私も一緒にしてほしい」

「カミラ、悪い事なんてないよ。カミラがジンの事で悩んでいたのはずっと知っていたから。それにカミラとならうまくいく予感がするの」

「レイナ……」

「俺も、カミラの気持ちには気がついていた。正直レイナとカミラの事で悩んでもいたんだ。でも、これからは三人一緒だな」

「ジン……」


 三人は抱き合っている。

 これで無事に解決になったのだが、今度は周りの人が騒ぎ出した。


「そうなると、夏までには結婚式は終えたいな」

「そうですね。早めに結婚式を挙げないと、先に子どもが出来てしまうぞ」

「場所は辺境伯領で良いですね」

「ちょうどうちの結婚式が終わった後なので、教会なども手が空くでしょう」

「なら、ついでにナンシーとルリアンの結婚式も一緒にやっちゃいなさい。勿論、冒険者も招待してね」

「ウエディングドレスも選ばなきゃ」

「夢の花嫁衣装だね」

「「「……」」」


 既に殆どの結婚式の予定が決まってしまった。

 ジンさんとレイナさんとカミラさんはあ然としていたが、もうこうなったら周りは止まらないぞ。

 このタイミングで、勉強を終えたリズ達とビクトリア様とアリア様が部屋に入ってきた。


「お兄ちゃん、どうなった?」

「無事にジンさんとレイナさんとカミラさんの結婚が決まったよ」

「おお、良かったね」

「ナンシーさんとルリアンさんの結婚も決まって、いつになるかはわからないけど、僕達の屋敷の隣に引っ越してくるんだって」

「わーい、お隣さんだ!」


 リズは結婚が決まった事と隣に引っ越してくる事の両方で喜んでいた。

 そういえばジンさんは名誉貴族だから、屋敷を持っても全くおかしくないんだ。

 あの現場を見ていたルーカスお兄様達も、リズと一緒になって喜んでいた。


「なら、早速みんなにも知らせないと!」

「そうね。アレク君とリズちゃんと一緒に帰って、ギルドにいかないとね」

「「「あ……」」」


 ジンさんとレイナさんとカミラさんは、面倒くさい人達に自分達の結婚の事を伝えないといけない事を、今更ながら思い出した様だ。

 三人ともかなり面倒な事になったという顔になったのが、息ぴったりで面白かった。

 

 ということで、早めに報告という事で、ジンさんや辺境伯様と共にいきなり辺境伯領のギルドにゲートを開いた。

 ギルド内には、沢山の冒険者が待ち構えていた。


「領主様、ジンとレイナとカミラの結婚はどうなりましたか?」

「全て丸く収まった。うちの息子の結婚式の後に、ジン達の結婚式をやるぞ」

「「「うおー! 良かったな!」」」


 冒険者は、あえて辺境伯様にジンさんの結婚の事を聞いてきた。

 それをノリノリで返答する辺境伯様が、とてもカッコいい。

 勿論、冒険者達は大盛り上がり。

 女性の冒険者は、涙ながらにレイナさんとカミラさんの事を良かったって言っていた。

 こうなったらギルドはお祭り騒ぎ。

 僕とリズはお昼寝タイムだし辺境伯様も仕事があるから早々に帰ったけど、その日のギルドは夜遅くまで大騒ぎだったらしい。

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