百二十九話 面接

「チセちゃんの事ね。あの子は心優しい子で、家族の事で悩んでいたわ」

「とても頭の良い子だから、きっとアレク君の役に立つよ」

「お兄ちゃん。決定だよ、決定!」

「リズ、結論はまだ早いぞ」

「えー」


 辺境伯様から屋敷を頂くにあたって、元家人の長女の扱いを決めないといけなかった。

 チセという女性の幼馴染でもあるエマさんとオリビアさんから色々話を聞いたけど、とても良い子というのが共通解だった。

 とはいえ僕達の事をどう思っているかを確認しないといけないので、そこは直接会って確認しよう。

 リズとスラちゃんは既に屋敷の一員にする気満々だけど、流石にまだ結論は早いぞ。


 何はともあれ、チセさんと面接をしないといけない。

 面接日の応接室に、辺境伯様と僕にチセさんが集まった。

 チセさんは茶髪の腰ぐらいまであるふわふわのロングヘアで、如何にも文学少女っぽい印象だ。


「リズも一緒に面接する!」


 そして何故か、リズとスラちゃんとプリンも面接に参加する事に。

 面接なのでプリンも今日は起きていて、スラちゃんの上に乗っていた。


「チセ、この子がアレク君とリズちゃんだ。知っていると思うが、王位継承権のない王族扱いとなっている」

「辺境伯様、ご紹介頂き有難うございます。アレク殿下並びにリズ殿下、私はチセと申します。この度の家の不祥事誠に申し訳ございません」

「チセさん。アレクです。先ずは色々と話をしましょう。辺境伯領襲撃事件はもう終わっている事です。これからの事をお話しましょう」

「リズです。この子はスラちゃんとプリンちゃんだよ。これから宜しくね、チセお姉ちゃん」


 おい、リズよ。その言い方じゃ既に屋敷のスタッフ確定って言い方だぞ。

 スラちゃんとプリンまで、触手上げて歓迎している。

 流石に辺境伯様は苦笑し、チセさんも困惑しているぞ。

 とにかく面接を開始しないと。


「先程も言いましたが、事件の事は一切答えなくて結構です。先ずは簡単な自己紹介と得意不得意をお願いします」

「はい。チセです、今年で十一歳になります。読み書き計算は一通り出来ます。基本的な家事も出来ます。魔法は出来ますが、運動と剣技は苦手です」


 うん、見た目通りの文学少女って感じだ。

 でも受け答えもキチンとできるし、頭は結構良いかも。

 リズにスラちゃんにプリンよ、もう決定だよねって僕に視線で圧力をかけないで。


「チセさんは、どんな仕事を希望しますか?」

「どんな仕事でも頑張ります。ですがもし可能でしたら、アレク殿下とリズ殿下のお仕事の補助的な事をしてみたいです」

「秘書的な事は、特に僕は大変助かります。あと、僕達は冒険者でもあるので、場合によってはチセさんが僕達に同行する可能性もありますが良いですか?」

「はい。教会で保護して頂いている間に、冒険者の登録も行いました」


 うん、このこの辺りまでしっかり考えているのは好材料だ。

 もう少し話をして結論をだそう。

 リズにスラちゃんにプリンよ、魔法の事は任せてって表情をしないの。


「最後の質問です。将来成人したらどの様に考えていますか?」

「正直成人してからの事は考える余裕がありませんでした。命を助けられた今は、どう今後を過ごす事かしか考えていません」

「答えにくい質問に回答頂きありがとうございます」


 素直に気持ちを聞かせて貰って良かった。

 僕の中で結論は固まった。

 でも、リズにスラちゃんにプリン。早く早くと急かすのはやめてくれ。


「辺境伯様。チセさんを鑑定で確認しても、一切罪状はありませんでした。ですので、僕とリズの秘書的な事を頼もうと思います。辺境伯領と王都を往復する事も多いですし、執事も決まっていませんので、お任せしようと」

「アレク君が決めたのなら、それでいいよ。チセは賢いし、きっとアレク君とリズちゃんの役に立つだろう」

「わーい!」


 辺境伯様にも確認できたし、チセさんは屋敷の一員になる事で決定。

 既にリズとスラちゃんとプリンは、一緒に万歳している。


「という事で、チセさんこれからよろしくお願いします。労働刑ではありませんのでキチンと決まったお給料をお支払いしますし、冒険者活動でチセさんが獲得した分はチセさんの物となります」

「私なんかが、この様な好待遇で良いのでしょうか?」

「僕はチセさんの能力と周りの人の評価を聞いて仕事を決めました。最初は大変かと思いますが、きっとチセさんなら大丈夫です」

「ありがとうございます。誠心誠意頑張ります」

「チセお姉ちゃん、これからよろしくね!」


 チセさんはペコっと僕にお辞儀した。

 リズとスラちゃんとプリンは、早速チセさんに抱きついている。

 まあ、この三人の勘で問題ないのも判断の一つだけどね。

 そして、この事を報告しないといけない二人に応接室に入って来てもらった。


「チセちゃんなら、きっと大丈夫だと思ったよ」

「春からエマと私は王都の学園だから、私達の代わりによろしくね」

「ありがとうございます。エマお姉ちゃん、オリビアお姉ちゃん」


 エマさんとオリビアさんは、チセさんが無事に屋敷の一員に決まったことを自分の事の様に喜んでいた。

 チセさんも二人に抱かれながら、昔の様に名前を呼んでいた。

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