百二十八話 新年
「新年おめでとう!」
「「「「「乾杯!」」」」」
今日は新年の始まりの日。
午前中は辺境伯様の屋敷で新年のパーティをした後、午後にも王城に向かいます。
新年ということで、普段王都にいるジェイド様とソフィアさんにマイク様が辺境伯領の屋敷に来ています。
この国の新年は、家庭で簡単なパーティをするのが一般的らしいです。
「今年の辺境伯家は忙しいな。エマとオリビアの入学から始まって、ジェイドとソフィアの結婚式もある。マイクも最高学年で来年卒業だ」
「本当よね。忙しい一年になるわ」
辺境伯様とイザベラ様が、感慨深そうに皆の事を見ていた。
今年の辺境伯家は、本当にイベントが盛り沢山だ。
既に去年の内から準備を始めているらしい。
「アレク君とリズちゃんも五歳の誕生日と教会の洗礼があるし、少し忙しいわよ」
「はーい」
この世界もそうだけど、昔は小さい子の生存率が低かったので、五歳の子を集めてこれからも元気にしましょうと教会とやるらしい。
同年代の子が集まるから、どんな子がいるのかな?
「因みに辺境伯領の集まりもあるが、貴族の子どもも王城に集るから二回集まりがあるぞ」
「そうなんですか?」
「面倒くさいのは嫌だな」
「貴族とはいえ周りも子どもだ。エレノア王女様と仲良くしていれば良いだろう」
貴族との集まりというか、子どもは良いけど親が面倒くさそうなんだよな。
僕らは王族扱いだから正面から悪口は言われないと思うけど、影でこっそり言われそうだな。
午後は王城に向かい、先ずはティナおばあさまにご挨拶。
ティナおばあさまの部屋に向かうと、王族が勢揃いしていた。
「「新年おめでとうございます!」」
「「「おめでとう!」」」
ルーカスお兄様とルーシーお姉様とエレノアに新年の挨拶をした後、大人組に挨拶をする。
「「新年おめでとうございます」」
「二人とも、おめでとう」
「アレク君にリズちゃんも、今年は五歳になるわね」
「お祝いしてあげないとね」
新年の挨拶と共に、五歳の事が話題になった。
やはりこの世界では、五歳を祝うのは特別な事らしい。
この人達に加えて辺境伯様達が加わるとなると、どんな祝い方をされるかちょっと怖いな。
「アリア様、この後は帝国に行くでいいですか?」
「そうね。今日は、ルーカスとルーシーも連れて行くわ。二人も一度、お兄様にご挨拶しないと」
「はい、分かりました」
と言うことで、皆でお茶をしてから帝国に向かいます。
帝国の何処にゲートを開けば良いか分からなかったので、とりあえず皇城の中庭にゲートを繋ぐ。
すると、直ぐにこの間来た時に会った兵が気がついてくれて、そのまま皇帝一家のいる所まで案内してくれた。
因みにアリア様にルーカスお兄様とルーシーお姉様、エレノアとリズが一緒に来ている。
念の為にと言うことで、護衛にこの前一緒だった近衛騎士のジェリルさんとランカーさんも来ています。
皇帝一家がいる部屋の直ぐそばに来たところで、小さな影が飛び込んできた。
「アレクお兄ちゃん、リズお姉ちゃん、エレノアお姉ちゃん!」
「「リルムちゃん!」」
飛び込んできたのは、リルムだった。
リズとエレノアは、飛び込んできたリルムを抱きとめて再会を喜んでいた。
「ほらほらリルム、部屋に案内しないと」
「はーい」
部屋から顔を出したのは皇妃様だった。
皇妃様に促されて、リルムはリズとエレノアの手を引っ張って部屋に案内した。
「よお、アレク殿下。久々だな」
「ご無沙汰しております、皇帝陛下。新年おめでとうございます」
「うむ、おめでとう。ルーカス王子とルーシー王女も中に入られよ」
「「はい」」
部屋の中には皇帝陛下と皇妃様に、ケイリさんもいた。
皇妃様のお腹が少し大きくなってきていて、リズとエレノアは興味津々だ。
とはいえ初めて会う人もいるので、先ずは自己紹介。
皇族一家には事前にルーカスお兄様にルーシーお姉様がくる事が伝わっていたのか、スムーズに挨拶も済んだ。
「あれ? アレクお兄ちゃん。このスライムは?」
「プリンっていう、まだ赤ちゃんのスライムだよ。この前薬草採取に行った時に、仲間になったんだ」
「へえ、そうなんだ!」
スラちゃんの上に乗って寝ているプリンに、リルムは直ぐに気がついた。
とはいえ、プリンも皆にツンツンされていても相変わらずずっと寝ている。
「去年はアレク殿下に本当に助けてもらった。ケイリとの結婚式と第二子誕生の際には連絡をするので、是非とも参加して欲しい」
「ケイリさんとの結婚式が先なんですね」
「第二子が生まれる前に結婚式をしようと計画しておる。結婚式が春で、出産は夏頃だな」
確かに、小さな赤ちゃんを世話しながらの結婚式は大変そうだ。
招待してくれるというので、是非とも参加しよう。
その後も、お互いの近況を報告しながら和気あいあいと話は進んだ。
皇帝一家はこの後用事があるというので、今日は早めに王国に帰る事に。
また今年も何回も会えるというので、リルムは笑顔で見送ってくれた。
王城にゲートを繋いでアリア様とルーカスお兄様とルーシーお姉様とエレノアと別れ、辺境伯領の屋敷にゲートで向かった。
「あうあう」
「ただいま、ミカちゃん」
辺境伯領の屋敷に戻ると、リズは直ぐにミカエルの所に向かった。
僕はというと、辺境伯様から少し話があると言われたので応接室に向かった。
「辺境伯様、お待たせしました」
「いやいや、王都から帝国まで行っていたんだ。座ってくれ」
「はい」
辺境伯様に促されてソファーに座る。
辺境伯様の話は、隣の屋敷の件だった。
「ようやく屋敷の改修が完了したよ。明後日から侍従が屋敷の使い勝手の確認を行うが、問題はないと思っている。来週には入居できるだろう」
「ありがとうございます。もし可能なら、前の住人の処分を聞いて良いですか?」
「そもそも仮処分の話も伝えているし、アレク君に話す分には問題ないだろう。屋敷の主は死罪となった。偽兵士をこの街に招き入れた主犯だったよ。夫人も多額の金銭を受け取っていたので、没収の上で教会送りだ。執事や数人の侍従も不正に関与していたので、犯した罪にそった罰を受ける事になる」
事前に聞いた話なので、この処分は妥当なのだろう。
一歩間違えれば、辺境伯様の家族が皆殺しになっていたのだから。
「その他の家族に処罰はないのですか?」
「実はその事で相談がある。子どもが三人いて、そのうち長男と次男は成人済で尚且つ事件に関与していた。長期の重労働の上、辺境伯領追放だ。そしてもう一人長女がいるが、実はこの長女は家族の犯罪を通報した者なのだ。現在は教会で保護されている」
「もしかして、この長女の事ですか?」
「流石はアレク君だ。元々この長女はエマとオリビアの一個下で、二人も長女の事を可愛がっていた。長女に今回罪状は発生しないが、どうも罪の意識があるようだな。アレク君とリズちゃんのお世話をさせて欲しいと言っている」
「分かりました。しかし一度面接させて下さい。その上で判断したいと思います」
「その判断を尊重する。四日後、私も一緒に面会しよう」
という事で、屋敷を頂くにあたって解決しないといけない事が発生したが、何となく直ぐに解決する様な気がした。
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