百三十話 新しい屋敷での生活

 無事にチセさんの件も決着し、侍従のお姉さん達の屋敷のチェックも問題ないと判断された。

 なので、実は昨日から辺境伯様の屋敷からこちらの屋敷に引っ越している。

 既にティナおばあさまにも報告済みで、今度屋敷に遊びに来るそうだ。

 

「アレク殿下、今後の予定なのですがこんなに予定が入って大丈夫ですか?」

「公務以外は調整してもらうよ。改めて一覧にしたら、とんでもない事になってるね」

「どう見ても、小規模の貴族当主よりも忙しいです」


 今は割り当てられた執務室で、チセさんと今年の予定を確認している。

 チセさんはやっぱり優秀で、とても助かっている。

 因みにチセさんは来客の対応もあるので、貴族の令嬢の服装をしてもらっている。

 最初チセさんはメイド服で良いと言っていたが、流石に駄目って言ったよ。

 あと、プリンは執務机の上でお休み中。

 小さなカゴにタオルを敷いた特製ベッドで寝ています。


「さて、僕の今年の予定なんだけど、春先はエマさんとオリビアさんの入学で王都に同行して、その後に帝国で皇帝陛下とケイリさんの結婚式。続いてジェイド様とソフィアさんの結婚式で、僕の誕生日。帝国の皇妃様の出産予定日があって、リズとエレノアの誕生日と、五歳のイベントが辺境伯領と王都である」

「ここに加えて、陛下とビクトリア様とアリア様の誕生日に、ルーカス殿下とルーシー様の誕生日もございます。勿論、ティナ様の誕生日も祝わないといけません」

「行事の合間に、絶対に何処かに行く公務もはいりそうだよ」


 うん、何という殺人スケジュール。

 今年は特に五歳のイベントが一番大きい。

 とはいえ、陛下やビクトリア様にアリア様はもっと忙しいんだろうな。

 子どもの僕は、このくらいと思っているようにしよう。


「ビクトリア様にアリア様の誕生日は、身内のみで祝うらしいです。恐らくティナ様の誕生日も同様かと」

「僕らは身内扱いだし、勿論参加するよ」

「陛下の誕生日は式典になるので、ほぼ決まった内容になります」

「この前、ティナおばあさまから王族として参加になると言われました。気持ちとしては会場で侍従をしていたいです」


 とはいえ、ここは参加しないとな。

 特に陛下にはお世話になっているし、挨拶は多分受けなくていいはずだ。

 

「王城での勉強は、継続して週一回となります。冒険者も指名依頼以外は週一回とさせて頂きます」

「王城での勉強はともかくとして、冒険者活動はまだ薬草採取以外はやることがないんだよね」

「アレク殿下とリズ殿下はまだまだ幼いのですから、街で行う簡単な依頼ももう少し大きくなってからです」


 リズが他の依頼をやりたいと駄々こねる事もあるけど、できないものはしょうがない。

 身体強化すれば荷物運びができるとか、そういう問題じゃないんだよな。

 そんな事を考えていたら、リズがドアを開けてこちらを覗いている。

 頭の上にはスラちゃんを乗せている。


「お兄ちゃん、まだお話し中?」

「リズ、どうしたの? 話は大体終わったよ」

「お姉さんが、お昼ご飯出来たって。お兄ちゃんを呼んできてだってよ」

「アレク殿下、良い時間ですのでスケジュールの確認はここまでにしましょう」

「お兄ちゃん、早く行こう」

「わわ、手を引っ張らないで」


 早く昼食を食べたいリズは、僕の手を引っ張って食堂まで連れて行く。

 その様子を、チセさんがクスクスとしながら見つめていた。


「ようやくきましたね」

「さあさあ、席に座ってください」


 食堂につくと侍従のお姉さん達が待っていた。

 お姉さん達は住み込みで働いて貰うことになった。

 お姉さん達の旦那さんが料理人と庭師なので、そのまま屋敷の料理と庭の管理をお願いした。

 お姉さんに促されて席に座ると、直ぐに料理が運ばれてきた。

 今日はケチャップライス。

 辺境伯領は稲作も盛んなので、たまにお米料理が出てくるのが嬉しい。

 スラちゃんとプリンの分も取り分けてあります。


「うーん、美味しかった!」

「そりゃ旦那の料理は美味しいよ」

「お姉さんよりも上手?」

「ふふふ、私も負けてないよ」

「そうなんだ!」


 食後にお姉さんと談笑するリズ。

 僕達はまだ子どもってのもあるので、アットホームな感じで接してくれる。

 公式の場だと、キッチリ分けて行動するようにしている。

 食後の後は、ミカエルのいる部屋へ。

 ミカエルの事をお世話していた二人の侍従も、そのまま屋敷に一緒にいます。

 ミカエルは段々と活発に動けるようになってきた。

 もう少しすると、つかまり立ちをしそうだ。

 

「ミカちゃん、今日も一緒にお昼寝しようね」

「あー」


 もうそろそろ僕達はお昼寝を卒業しないといけないけど、リズは相変わらずミカエルと一緒にお昼寝するのが大好きだ。

 となると、勿論僕もお昼寝に一緒に付き合う事になる。


 因みに、この屋敷の警備は結構厳重。

 僕とリズは王族だし、ミカエルは赤ちゃんだけどバイザー子爵家当主。

 なので、辺境伯様の屋敷を警備しているのと同じ位の兵がついている。

 とはいえ、最近の辺境伯領はとっても平和なので、僕達も安心して過ごせている。


 お昼寝が終わると、勉強するか魔法の訓練をしている。

 魔法の訓練は朝は必ず行って、午後の訓練は時間がある時だけやっている。

 魔法の訓練には希望者も一緒に参加しているので、エマさんにオリビアさんやチセさんも混じる事がある。

 兵も魔法の訓練に一緒に参加する事があるけど、これが兵の間で為になると評判になり、たまに屋敷の警備担当じゃない兵も混ざる事がある。

 なので辺境伯領の兵の実力が徐々に上がっていき、辺境伯様も思わぬ効果だと言っていた。


 お風呂に入って夕食を食べたら、僕達は就寝の時間。

 屋敷には僕とリズの部屋があるけど、寝る時は僕の部屋で寝る事が殆ど。

 段々と大きくなるのだから、何処かのタイミングで一人でも寝れるようにならないと。


 こんな感じで屋敷での生活がスタート。

 とはいえ、イザベラ様は毎日様子を見に来るし辺境伯様も時折様子を見に来る。

 なので、ちっとも寂しくないのは有り難いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る