第三百八十二話 長期実習生の受け入れ

「はあ、疲れた……」


 結婚式に向けて厳重警戒が続く中、エステルがショコラと共に花嫁修業から戻ってきた。

 今日もフローラ様にだいぶしごかれたらしいが、この光景を見ると何だか日常って感じがするぞ。


「だいぶお疲れだな。そんなに花嫁修業はキツイか?」

「キツイってものじゃないよ。礼儀作法とかミッチリよ。一体どこで使う事があるのよって思うのもあるんだよ」

「覚えていて損は無いだろう。俺からは頑張れとしか言いようがないな」


 フローラ様からは特に礼儀作法を重点的に教えていると聞いていたけど、今後の事を考えても頑張って覚えて貰わないと。

 当のエステルは、食堂に行ってつまみ食いをしているけど。


「そういえば、人神教国の残党はどうなった?」

「こちらの動きを警戒してか、捕まえる人数がガクッと減ったよ。勿論、巡回は続けるけどね」

「本当に迷惑な奴らよね」


 ドワーフ自治領産のせんべいをバリバリと食べながら、エステルが話しかけてくる。

 俺もせんべいを食べているけど、エステルは夕食前なのに遠慮なく食べているなあ。

 そして、エステルは厨房の方に視線をうつしていた。

 実は学園から侍従志望の四名と料理人志望の二名の学生を受け入れているのだ。

 これから一年間、頑張って現場研修をする事になっている。


「今日も頑張っているみたいだね」

「高倍率を突破しただけあって、皆有能だよ」

「ちょっと、何で私を見て言うのよ!」

「何も他意はないよ」


 フローレンスについて色々話を聞いている侍従志望に、調理担当とスラタロウと共に夕食作りに励む料理人志望の学生達。

 元々うちの屋敷に短期実習で多くの学生が来ていたけど、他の貴族がうちにきた学生を多く受け入れたので意外とうちは人数が少なかった。

 うちで鍛えられたなら即戦力だろうと、お偉い方々がこぞって希望したのだった。


「ただいま!」

「「ただいま帰りました」」

「皆、おかえり」


 ミケとフェアとオリヴィエも帰ってきた。

 実は、ミケの所にも軍属希望の魔法使いの女子が一人ついている。

 リーフとシルの所にも来ていなく、全く別の軍務体験からミケの所にきたという。

 猫耳同士気が合うのか、ミケもテンションは高めだ。


 さて、いつもなら歓迎会が開かれるのだが、今日は開かれない。

 王城に入る手続きの関係で、王城に長期実習にくる学生が明日にならないとやってこないのだ。

 やってこないのだが……


「サトー、料理はまだか?」

「頑張って政務したから、お腹がすいたぞ」

「あの、歓迎会は明日ですが……」

「今日はサトーの所に来た者の歓迎会で、明日は全体含めた歓迎会だろう?」


 当たり前の様にパーティルームに居座るお偉い方々。

 俺はガクリと脱力して、パーティの準備を……

 既に実習に来ている学生の手によって、さささと準備がされていた。

 流石は昨年うちの侍従を経験しているだけあって、手際が良い。

 そして、当たり前の様にうちのメンバーも集まってきた。


「ほらほら、サトーも諦めな」

「お前が言うな!」

「えー!」


 しれっとワインを持って上がってきたエステルにツッコミを入れつつ、俺は皆の輪に加わった。

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