第三百七十五話 入園式の朝

「「「おはようございます!」」」

「はい、おはようございます」


 今日は入園式なのだが、平民から学園に入る人がうちの屋敷に寄ってドラコ達と一緒に学園に行くそうだ。

 男の子も女の子も皆ピカピカの制服を着ていて、なんだか微笑ましい。

 そこに、もう待ちきれないといった感じのドラコ達にアメリア達とシルク様達がやってきた。

 

「皆、おはよう!」

「「「おはよう!」」」


 ドラコ達は、集団に突入して皆に挨拶をしている。

 ずっと一緒に勉強をしていたから、随分と仲良くなったものだ。

 そこに、おめかししたリンとフローレンスに加えてミケがやってきた。

 更に今日は、ララとリリとレイアも一緒に入園式に参加します。


「お兄ちゃん、お待たせ」

「こちらも準備できました」

「少し早いですが、我々も行きましょう」


 因みにエステルとソフィーとジュリエットは、既に馬車で学園に向かっていた。

 何でも先に行って学園を案内するらしいのだが、俺達と一緒で良いじゃないと思った。

 しかも先に行けば、絶対に王妃様達に捕まると思うぞ。

 

 歩いても直ぐに学園に着くので、皆でトコトコと歩いていく。

 昨年の学園生の実習完了パーティの時に使った体育館が会場なので、皆でそちらに向かう。


「皆さん、おはようございます」

「「「チナ先生、おはようございます!」」」

「はい、良くできました」


 体育館では入り口にクラス分けをした紙が貼り出されているが、うちの子ども達は纏めてチナさんのクラスになる事が決まっている。

 他のクラスになった子も、それぞれの担任に挨拶をしている。


「チナ先生、今日から宜しくお願いします」

「皆、良い子ですから。こちらこそ宜しくお願いします」


 チナさんにも俺から挨拶をした。

 俺達と一緒に着いてきた平民の保護者もいるので、早々に挨拶は切り上げて体育館の中に入った。


「あうー、サトー助けて!」


 体育館に入ると、早速フローラ様に捕まったエステルが俺に助けを求めて来た。

 俺はエステルを無視して、陛下と王妃様に孫が入園する軍務卿と財務卿にも挨拶をする。

 因みに、ソフィーとジュリエットもいつの間にか俺の側に避難してきた。


「陛下、軍務卿、財務卿、おはようございます」

「サトーか、早いな」

「エステルだけは、ソフィーとジュリエットの案内で先にきていますが」

「ハハハ、それでフローラ様に捕まったのか」

「何でサトー達がいないのかと不思議に思ったよ」


 やっぱりというか、エステルはやらかしたらしい。

 何があったかは、あえて聞かないでおこう。

 そして、軍務卿の孫であるヴィル様に婚約者であるビアンカ殿下とドラコが仲良く話をしている。

 更には、シルク様に熱視線で見つめている子が一人。


「財務卿、お孫さんがシルク様を見つめていますが」

「はあ、情けない事だ。男ならガツンと行くべきだろう」

「いや、あの、将来的にカップルになっても良いのですか?」

「ナサニエルは直系の孫だが四男だし跡取り候補でもない。家系的にも問題ない。儂としては、あの大人しい性格の方が問題だ」


 ちょいちょいうちの屋敷での訓練に参加している財務卿の孫であるナサニエル様は、とても穏やかな文学少年だ。

 シルク様も悪い印象をもってないのだが、如何せんナサニエル様は大人しい性格。

 周りの子も協力して、何とかくっつけようとしている。


「もう少し様子見でしょうか。いきなりうちに来るわけには行かないですもんね」

「クラスメイトになったのだから、これからは接点も増えるはずだろう。暫くは様子見をするとしよう」


 このあたりは貴族同士の結婚とはいえ、取り敢えずあまり急かさないでおくようにしよう。

 そして、もう一つ謎の光景が。

 

「何で堂々とスラタロウ達が保護者席にいるんだよ」


 流石にベリルやフウなどはいなかったけど、スラタロウとホワイトを始めとしたうちの従魔がミケ達に抱かれて保護者席にいる。

 大人しくしているしスラタロウ達の存在を知っている人も多いので何も言われていないけど、流石に入園式に従魔はマズイだろう。


「あやつらは頭も良いし、鳴くこともないから別に良いだろう」

「そうね、少なくともエステルよりマトモな性格ですわ」

「お母さん、娘に対して酷い扱いですよ」

「はあ、ショコラが本当に可哀想だわ。こんな娘の従魔になるなんて」

「ちょっと、本当に泣くよ!」


 ああ、エステルよりも皆はマトモだもんな。

 フローラ様にボコボコに言われて、エステルは結構ダメージが大きいぞ。


「開演十分前になります。皆様、お席にお着き下さい」

「お、そろそろ時間か」

「エステル、保護者席で大人しくしなさいよ」

「はーい」

「さて、我々も行くか」

「そうですな」


 司会のアナウンスで王族に閣僚が保護者席に行く。

 あれ?

 来賓でステージに上がるの俺だけ?

 俺は皆にはめられたとショボーンとしながら、壇上の用意された席に座るのだった。

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