第三百七十六話 入園式

「それでは、王立学園の入園式を開始します」


 司会がアナウンスしても、俺の他の来賓はララとリリとレイアしかいない。

 三人とも役職付きの爵位または名誉爵位持ちだから来賓としての格は問題ないけど、せめて入園式なのだから来賓は大人がやりましょう。


「初めに、学園長よりご挨拶があります」


 おお、久々に来たけど学園長は代わってないのか。

 となると、話が長くなるぞ。


「皆さん、入園おめでとうございます。本校は……」


 ハハハ。長い、長いぞ。

 三十分を超える大独演会だ。

 何を話しているのか、全く頭の中に入らない。

 陛下も思わずコックリコックリしていて、両わきから肘打ちをくらっている。

 訳が分からない内に、学園長の話は終わった。


「続きまして、来賓を代表して全閣僚補佐官のライズ伯爵よりご挨拶を頂戴いたします」


 おっと、早速呼ばれたぞ。

 早速前に行くと、何だかうちにきていた平民の子が何だかざわざわしている。

 あの人貴族なの? 

 とか、役職持ちなの? 

 などなど……

 俺ってどういう風に子ども達に見られていたんだ?

 若干しょんぼりしながら、演説台に立った。

 うん、陛下とか俺を知っている人からは、さっさと終わらせる様にとアイコンタクトを送られている。

 俺だってそんなに長く喋る事はしないぞ。


「只今紹介のありました、ライズ伯爵です。来賓を代表して、一言挨拶を申し上げます。皆さん、入園おめでとうございます。これから楽しい学園生活が始まります。私から一つ皆さんにお願いがあります。それは、失敗を恐れない事です。色々な事にチャレンジをしていく中で失敗する事もあるかと思います。でも、失敗を恐れては成功する事もできません。この学園の先生は、多少失敗しても寛大な心で受け止めてくれます。皆さんも色々な事に失敗を恐れずチャレンジをして下さい。最後になりますが、学園の益々の発展を祈願して挨拶とさせて頂きます」


 ふう、短めに話したからきちんと聞いてくれた。

 ちゃんと拍手もしてくれたので、何とか伯爵としての威厳は保てた様だ。


 その後は生徒代表での挨拶で、在校生はエスメさんで新入生はビアンカ殿下だった。

 とはいえ、実績とかも考えると妥当なところだろう。

 挨拶で疲れたので、ぼんやりとしながら二人の事を見ていた。

 最後に在校生が校歌斉唱して、入園式は終わり。

 その後、担任の先生に連れられて新入生は退場していった。


「ハハハ、サトーは貴族に見られてなかったようだな」

「何となくそう思っていましたが、あそこまでざわめきが起こるとは思いませんでしたよ」


 入園式が終わって、壇上に陛下が俺を冷やかしに来た。

 いつもサトーと呼ばれていたから、何となくそんな気はしていたけどね。


「さて、儂らはこのまま王城か」

「新入生は学校見学もするので、帰ってくるのはお昼過ぎですよね?」

「うむ、そのままサトーの屋敷に集まるように言ってあるぞ」

「いや、入園祝いは夜ですよ……」


 いつもうちに来ているので、そのままうちで入園祝いをやることになっている。

 その間もうちにいたり、一回帰る人もいるらしい。

 一部は親も参加する予定だ。

 その前に確認しないといけない事が。


「あれ? エステルがいない? 王妃様もいないですよ?」

「ああ、王妃達は式が終わったらホワイトに頼んで真っ先に王城にエステルを連れて行ったぞ」

「うーん、夕方前には開放されますかね?」

「それはエステル次第だろう」


 エステルは新入生には結構気を使って教えていたから、新入生の人気も高い。

 何とか殊勝な態度であることを期待しよう。

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