第三百七十四話 建設予定地の整備

 そして次の休日に、久々にうちのフルメンバーでバスク子爵領へ。

 先ずは、何人かでテリー様にご挨拶。

 その間に、他のメンバーで現地の確認と作業の準備をするそうだ。

 現地監督に、リーフとシルの部下の兵も来ている。

 いつもうちのわがままな妖精とオオカミがすみません。


「結婚式も近いのに、各方面で忙しいな」

「すみません、まさかうちのメンバーをフルに使って突貫工事になるとは」

「使える者は使う。これがレイアの鉄則」

「おい、これはレイアの仕業だったのかよ!」

「ははは、中々楽しそうですな」

「お父様、すみません......」


 テリー様の所には俺とレイアとリンが向かったのだが、俺の知らない所で色々計画が進んでいたらしく、思わずレイアにツッコミを入れてしまった。

 テリー様、義理の父親になるのに毎回毎回お見苦しい所をお見せしてすみません。

 

「私達もお昼頃には現場を見てみたいですわ」

「可愛い子がいっぱいいるらしいので、会うのが楽しみですね」


 エーファ様にサーシャさんも同席していて、この後現場に見に来てくれるらしい。

 二人とも行動力のある性格だからなあ。

 因みに、今日はビアンカ殿下にドラコ達のクラスメイトも参加している。

 勿論全員を含めた指名依頼なので、キチンと国から報酬が入ります。

 国としてもうちに頼むことで工期を圧縮できるので、理にかなっているという話だという。

 レイアよ、そういう事は最初に俺に話しなさい。


「人神教国の残党がいるのは間違いなく、専門的な教育機関は軍の強化に繋がります」

「今後人神教国に変わる新しい組織が出来る可能性もあるし、何かしらの脅威が生まれる可能性もある。やる事はやらないといけないな」


 テリー様と話をするが、今後の事も考えて軍の強化は大歓迎だという。

 こんな感じで、話が出来る領主がどんどんと増えて欲しいな。

 

 挨拶が終わって現場に戻ると、すごい勢いで開墾されていた。

 既に開墾エリアの設定は終わっていて、物凄い勢いで木が伐採されていく。

 伐採された木も次々に空いたスペースに運ばれていて、不要な枝や葉っぱが落とされていく。

 というか、なんだこのスピードは。

 事情を知っていそうなフローレンスに聞いてみよう。


「最初に伐採エリアに一斉に従魔が入って、動物の避難を呼び掛けた様です」

「そういえば、学園生も従魔を結構持っているし、分担したらそうでもないか」

「動物の避難が完了した所で、馬が一気に伐採するエリアの周囲を分かりやすいように走り抜けました」

「だから、丁度境目の所の土がえぐれているのかよ」

「後は伐採班と枝打ち班と整地班に分かれて、競い合うように作業をしています。木を運ぶのは、アイテムボックス持ちと馬でやっています」

「この勢いだと、午前中に整地できそうだな」

「はい、私たちは何かあった時の待機と昼食作りに専念しています」


 兵士と今年生まれた仔馬二頭が、ぽけーっと現場を見ていた。

 仔馬は父親である馬がカッコいい所を見せるために連れてきたのだが、若干引き気味なのは気のせいだろうか。

 仔馬は、父ちゃんやりすぎって顔をしているぞ。


「で、エステル達は何をしているんだ?」

「ふふふ、炎魔法の応用で伐採した木を乾燥させているのだ。水魔法との応用だから難しいぞ」


 どうもエステル達は、伐採した木を直ぐに建築素材に加工出来る様に乾燥させている様だ。

 学園生や何頭かの従魔と共に次々に、木材を加工出来る状態に変えていった。

 邪魔な枝や葉っぱは、風魔法使いが粉々に砕いて何人かで森にまきにいっている。

 森の栄養になる様にしているらしい。


「あらら。実力は知っていたけど、これは凄いわね」

「うんうん、流石だわね」


 お昼の時間になってエーファ様にサーシャさんが様子を見に来た時には、広大な面積が整地されていた。

 うん、依頼としてはもう終了だろう。

 しかし、ビアンカ殿下とレイアにリーフとシルが設計図を元に何かを話している。

 午後も絶対に作業を続ける事になるだろうと思ったら、作業はここで終わった。

 なんでも、これから建築するのに準備する資材が整っていないという。


「じゃあ、薬草採取だ!」

「「「おー!」」」


 昼食後、まだまだ動きたいメンバーはミケの掛け声を先頭に、ギルドに向かっていった。

 もう休みたいメンバーは、バスク領の屋敷で休憩する事に。


「ねーね」

「だいぶしっかりと歩く様になったのう」

「「エーちゃん!」」

「うーん、この子達も可愛いわね」


 バスク子爵家の屋敷で養育されている三人の獣人の赤ちゃんも大きくなり、トラ獣人の赤ちゃんはビアンカ殿下が、ウサギ獣人の双子はエステルが抱っこしている。

 度々バスク領に来ているので、歩き始めて簡単な言葉を話す様になった赤ちゃんからはお姉ちゃんと呼ばれている。

 エステルは、何故かここでもエーちゃんだけど。

 

「すっかり大きくなりましたね」

「素直な子で助かりますわ。まるで一足早く孫の面倒を見ている感じですわ」

「この子達の服を作るのもとても楽しくて。可愛い子には何を着せても似合っていますわね」


 エーファ様もサーシャ様も、トテトテと歩く獣人の赤ちゃんに目がハートだ。

 この子達は、バスク子爵領へよく来るタラちゃんやポチにも懐いている。

 今日はタラちゃんとポチも薬草採取に行っていて不在だ。


「しかし、エステルは本当に子どもに懐かれるな」

「ふふーん、子どもは悪い人には寄り付かないからね」


 いつの間にか三人の赤ちゃんを膝の上に乗せてご満悦なエステルがいたが、未だに性格も子どもっぽいとは言わないでおこう。


 そして、夕方と共に皆で王都に帰ったけど、薬草採取のメンバーもそこそこ薬草が採れたらしくご満悦だった。

 

「取り敢えず整地は終わったし、後は軍の方での対応だな」

「とはいえ、スピードは求められるので、また物資が整ったら皆でやるのだぞ」

「いやいや、流石に建築は専門部隊でしょう。ブルーノ侯爵領の獣人部隊とか」

「ふふーん。だから学生にもみせるのよー。最上位学年の軍属希望にも、現場は見てもらうのよー」

「ホワイトが材料と共に学生を送るし、何も問題はないんだぞ」


 学生にも良い機会だと、建築現場をみせるらしい。

 二人の軍属は、不敵な笑みを浮かべていた。

 次回は物資を運ぶだけなので、そこまで大人数は必要ないという。

 因みに今日馬は張り切りすぎたので、仔馬に引かれてしまい若干拗ねていた。

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