第三百七十三話 学校建設の話
四月になり、着々と新しい事に向けて準備が進んでいる。
入園式は一週間後なのだが、先にマールさんとローゼさんが学園に着任した。
事前研修で学園にはちょくちょく行っていたのだが、正式に今日から学園で働く事になった。
うん、何故か二人の付き添いでスラタロウが学園に着いて行ったが、特に気にしない様にしておこう。
そして、俺はいつも通り王城へ。
「サトー、入園式に参加するだろう? ついでだから、来賓代表で挨拶してくれ」
「あの、ついでにって簡単に言ってきますね……」
宰相にさらりと言われてしまったが、今回はうちの関係者が一番入園するしある意味しょうがない。
俺が、卒園式に参加出来なかった分の配慮なのかもしれない。
「陛下も参加するが、保護者としてだな。ビアンカ殿下の母君は既に亡くなられているので、王妃様が三人とも参加するらしいぞ」
「俺も直接聞きました。全員が母親代わりだから問題ないと言っていましたよ」
ビアンカ殿下の母親はビアンカ殿下が幼い内に亡くなってしまったので、親代わりとして育ててきた王妃様達が参加するという。
ビアンカ殿下の事を可愛がっていた兄弟陣も参加したいと言ってきたが、流石に母親には勝てなかったという。
そして学園関連でもう一つ進展があった。
「サトーの所で行っていた事前学習がかなりの効果があったからな。優秀な人材はいくらいても良いし、これからも継続していく事になったぞ」
「とは言っても、うちで行うのは継続なんですね」
「教師役を育てるのはもう少し時間がかかる。なので、教師役も一緒に育てて貰う予定だ」
昨年の秋にうちで行っていた入園前の事前学習を、もう少し拡充する事になった。
出資は全額貴族からの寄付で行い、教会などの孤児へも無料で教育を行う。
そして、何故か場所はうちの屋敷のままとなり、いつの間にかスラタロウがどこからか売り出し中の家を買ってきて家ごと裏庭に設置していた。
既に何人かの子どもが体験授業を受けていて、教師を目指す人も一緒に勉強している。
今後は、各地にも同じ様な施設の設置を検討するそうだ。
「農業生産者の為の学校や工場生産者向けの学校の建設も行う。生産を行う上で最低限の知識があるだけでだいぶ違う」
「軍も冒険者や魔導具作成に関しても学校を整備する。出来れば学園都市を作りたいな」
「しかし、市民が力を持つことを嫌う領主もいるはずです」
「そんな事は織り込み済みだ。全てがサトーの様な領主なら話が早いが、そうはいかないだろう。バスカス公爵領とブルーノ侯爵領とバスク子爵領。それにノースランド公爵領とサザンレイク侯爵領を最初に選定する」
「全て領民とも良い関係にある領地ですね」
「領主になる為に、ある程度専門的な知識を求める事にする。近頃、執事などに丸投げしている所もあるしな」
元々タヌキ侯爵のせいで止まっていた国内改革を進めるのだが、一気に進めてしまっては色々な所からの反発も大きい。
タヌキ侯爵の一派はいなくなったけど、急激な変化を嫌う人もいる。
ある程度は、そういう勢力にも配慮もしないといけない。
その後も、色々と調整して業務は終了。
最近は色々と新規事業が増えてきたので、中々忙しい。
先ずは軍の学校を早期に作らないといけないので、王都からも近いバスク子爵領で工事を始める予定だ。
「その話は私達も聞いているよー」
「開墾関連で、主達に依頼がいくらしいぞ」
うちに帰ってリーフとシルにも話を聞くが、どうやら丁度その話を聞いたらしく開墾関連もあるという。
「とはいえ、誰が開墾に行くんだ?」
「全員だぞ。当たり前なんだぞ」
「正確には整地までだねー。木を切って土を均すだけだから楽勝でしょー」
いやいやいやいや。あなた達アホでしょう。
流石にうちのフルメンバーでも、一日で整地は無理でしょう。
俺はそう思っていた。
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