第二百八十話 奴らとの死闘

 ビンドン伯爵の尋問は、まだ続いているという。

 ということで、先にビンドン伯爵の屋敷をバ○サンする事にする。

 軍務卿とうちのフルメンバーに、ビアンカ殿下も参加する。


「軍務卿、人の反応は中には無いです」

「そりゃ兵をつけて、屋敷の警護をしていたからな」

「それから……ちっちゃい反応が、数えられないくらいいます」

「言わないでくれ。気にしてしまう」


 ビンドン伯爵の屋敷には人はいない、人は。

 小さな反応が一杯いて、それに気がついた子ども達が身震いしている。

 既に、前回の惨状を思い出した人もいて、若干涙目の人もいる。


「作戦は命を大事にでいきます」

「そうじゃ、命は大切じゃ」

「皆で生きて帰ろうね」


 特に、前回悲惨な目にあったエステルとビアンカ殿下の熱の入れようは凄かった。


「作戦はこうです。最初に屋敷全体に魔法障壁を張り、氷魔法でできる限り空気を冷やして冷凍攻撃をします。その後は、一階、二階、食堂の三箇所を燻します」

「妥当な作戦じゃ、奴らを確実に仕留めないとならん」

「そしてここからが最難関。奴らの回収です。麻袋に入れて、庭で高温の炎魔法で焼き尽くします」

「任せて! 塵も残らないくらいの温度で焼いてあげるわ」


 とにかく確実に奴らを仕留める。

 これに尽きる。


「軍務卿、こんな作戦でどうでしょうか?」

「妥当だ、こちらも兵を出す。確実に片付けよう」


 軍務卿も作戦内容に頷いていた。

 ちなみに対象は固有名詞で言わないで、奴らとしている。

 誰も、あの光景を思い出したくないらしい。

 ということで、作戦開始。


「魔法障壁を張ります」


 屋敷に厚めの魔法障壁を張った。

 万が一、奴らが逃げる事が無いようにする。


「よし、徹底的に冷たくしてやるのじゃ」

「この前のリベンジだよ!」


 めちゃくちゃヤル気の出ているビアンカ殿下とララが、屋敷の中の空気を冷たくしていく。

 おお、段々と小さい反応が消えていく。

 というか、どれだけ冷たくしているのだ?

 空気を冷たくしているのに、外壁が霜だらけになってきたぞ。


「サトーよ、魔法障壁を外して良いぞ」

「お兄ちゃん、オッケーだよ!」

「どのくらい冷たくしたんですか?」

「氷点下五十度くらいかのう」

「ガチガチにしたよ!」

「あなた達、やりすぎです!」


 屋敷が霜だらけになるほどの低温なので、暫く放置しておく。

 魔法障壁を外したら、冷気がモワンってでてきたからびっくりしたよ。


 一時間後、ようやく冷たいくらいになったので、バル○ンタイムに。

 先ずは、食堂と一階を同時に行う。


「いやあー!」

「奴らが一杯!」


 俺がやるっていったのに好奇心に勝てずについてきた猛者共は、食堂に転がっている奴らを見て悲鳴を上げていた。

 うん、想像以上に奴らの死骸が多いぞ。

 ここで、一回目のバ○サンをする。

 そのまま急いで玄関ホールに移動し、一階分のバル○ンをする。

 

「うわあ、すごい煙ね」

「でも、念には念を入れる」

「その通りじゃ」


 あまりの煙の量にエステルはビックリしているが、レイアとビアンカ殿下はこのくらい当然だとモクモク煙が出ている屋敷を見つめていた。

 ちなみに先程俺についてきた猛者はダウンしてしまい、離脱者第一号となった。

 俺は屋敷の庭にテントを建てて、離脱者を中に入れた。

 全部で三つのテントを建てたが、これで離脱者を全てカバーできるか不安だ。


 煙が落ち着いてきたので、今度は二階のバ○サンを行う。

 再び屋敷が煙でモクモクしているのを横目に、伝達事項を伝えた。


「口あてと手袋は必ずするように。ほうきやチリトリを使って奴を回収します。ゴミバサミも使うように」

「素手で奴を触らない。病気の危険性があるのじゃ」

「もう一回作戦を言うけど、命を大事にだ。無理だと思ったら、直ぐに避難を」


 煙が落ち着いた所で、風魔法を使って煙を追い出す。

 そして、作戦開始だ。


「ウギャー! 一杯いるよ!」

「いやあー! こんなところまで!」

「ぎゃあー! あれまでいる!」


 屋敷のそこら中から、悲鳴が聞こえてくる。

 段々と麻袋も溜まっていくが、それに伴い離脱者も一人二人と増えていく。

 ホワイトが離脱者の治療をするが、全員まるで魂の抜けた顔をしていた。

 

 そんな中、俺は最難関の屋根裏にいる。

 目の前に、大量の奴らがいる。

 無心だ無心。

 ほうきとチリトリでどんどん奴らを集めて、麻袋に奴らを入れていく。

 奴らで一杯になった麻袋が溜まっていくが、それでも無心で奴らを回収する。

 そして無言のまま庭の穴に麻袋を三十以上放り込んだ。

 もう、正確な数なんてどうでもいい。


「うう、少し休ませてくれ」

「あー、お兄ちゃんが倒れたよ!」

 

 ぶっ倒れた所をミケに担がれて、テントの中に入れられた。

 先客で、ビアンカ殿下とエステルが白目向いて倒れていた。

 やはり今回も駄目だったか……

 

「さて、これから奴らの供養を始めます」


 それからくたばった人も復活をして、根性で奴らの回収をした。

 数え切れない程の麻袋が、穴に放り込まれている。

 俺が穴の周囲に魔法障壁を張ると、エステルとリリが高温の炎魔法で麻袋を燃やし始めた。

 ついでと言わんばかりに、ドリーも参加して燃やし始めている。

 今回初参加のドリーは、奴らの大軍に度々気絶をしている。

 奴らを燃やしたいその気持ちは良くわかるよ。

 高温で燃やした後は、残った灰とかを土魔法で高圧縮し地中深くに埋めていった。


「軍務卿、もう公衆衛生管理違反で間違いないですね」

「ああ。こんなの、あのゴミ屋敷以来だ」


 軍務卿も納得する奴らの量だったので、スムーズに処罰は進むはずだ。


「マイケル君にナンシー、それにメイド達も。もし、この屋敷に再び住む場合は、カーテンとか食器とか全て取り替えた方がいいかと」

「是非そうします」

「まさか、ここまで酷い事だとは思わなかったので」


 念入りに生活魔法で綺麗にして、浄化もおかわりしたけど、購入できるものは取り替えた方が絶対いい。

 それは良く分かってくれた。


 ということで、今日は解散。

 夕食は、スラタロウが胃に優しい食べ物を用意してくれた。

 もう奴らの対応は、三度はやりたくないぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る