第二百八十一話 奴らとのリターンマッチ

 久々の強敵との戦いの後、マイケル君とナンシーは頑張って事前勉強をしている。

 あの悲惨な光景を見て、自分達がなんとかしないとと思ったらしい。

 そりゃ、自分の家が奴らだらけだったのだから、思うところもあるよな。

 ちなみに何人か数日寝込んでいたけど、直ぐに回復した。

 やはり、今までの中で一番の強敵なだけある。


「説明を聞いただけで、凄惨な光景が目に浮かぶな」

「正直な話、街中に逃げなくて良かったと思いますよ」

「今回は、病気を持っている可能性が高い」


 そんな事を宰相と話をしていた。

 が、事態は動いてしまった。


「教会からの報告で、下町に患者が増えているようだ」


 どうも、下町で病人が多発しているとの報告が。

 どうやら、奴らの一部が下町に逃げてしまった様だ。

 ということで、緊急出動。

 今回は、軍や教会も巻き込んでの大掛かりなチームで活動します。


「治療班と駆除班に分けます。下水は全て燻していきます」

「燻せる所は、とことんやるのじゃ」

「空気を冷やす事も効果がある。燻せない所は、この方法を使うように」

「奴らの回収はできるだけでよい。優先は、奴らの殲滅じゃ」


 手分けして作業を行う。

 水魔法が使えるチームは、燻せない所をどんどんと冷却していく。

 俺達は、下水のいたる所に燻製薬草を仕込んでいく。

 これには、軍も参加している。

 街中で、煙がモクモクと立ち込めていた。

 

 ホワイトを中心とした治療班は、病気にかかった人を治療しつつ、生活魔法で住環境を綺麗にしていった。

 教会も手伝って、病人の治療にあたっていく。

 ネズミが中心というのもおかしな状況だが、本当に人手が足らない。

 そして住民には、手洗いの励行が呼びかけられた。

 

 どんどんと集まってくる麻袋に入った奴らの死骸は、エステルを中心にして次々と燃やされていく。

 散々奴らの恐怖を味わっているエステルは、徹底的に灰になるまで燃やしていた。


 ミケ達には、燻す用の薬草を大量に取るようにした。

 他の薬草は置いといて、この薬草だけに絞って取ってもらった。


 これは市街地での話で、貴族の屋敷にも対策が求められた。

 貴族街までは手が回らないので、各自で対策をお願いした。

 というか、命令が下された。

 アルコール消毒や、奴らの駆除などが行われている。

 勿論、王城でも様々な対応がされた。

 更に、各都市にも対策が求められた。

 これ以上、病人を発生させないために、少し過剰なくらいの対策がされた。


 一週間対策をしていくと、だいぶ患者の発生が抑えられてきた。

 念の為に、もう一週間下水での燻しや街での奴らの回収を進める事にする。

 街の人も今回の件はかなりの衝撃だった様で、積極的に動いてくれた。

 そして、途中からレイアが考案した、粘着性のある草の液を紙に塗って餌を置いて奴らを捕まえる、前世でいう所のゴキ○リホ○ホイも投入していった。

 これが思いのほか効果が高く、粘り気のある草も簡単に手に入ったので、どんどんと量産されて使われていった。

 その分、エステル達の焼却班が大変な目にあっていたが。


「王妃様、この度は我が家が大変なご迷惑をおかけしました」

「何ともお詫びのしようもありません」


 うちに王妃様達が作業の慰労にきてくれたが、王妃達を見つけたマイケル君とナンシーにメイド達は、王妃様達の前で土下座をしていた。

 今回の件で、かなりの責任を感じているのだろう。


「顔を上げてください。あなた達が責任を負う必要はないわ」

「まだ九歳のあなた達ではなく、大人が責任を負うべきです」

「それに、あなた達は最前線に立って活動をしている。褒められるべきでありますよ」


 王妃様達の話は俺も同意だ。

 学園にも入学していない子どもには、屋敷の事まで手は出せない。

 追求されるべきは、大人だろう。


「王妃様。ビンドン伯爵家から逃げ出した奴らが、ここまで数を増やすとは思いません」

「私達も同感です。タイミングが悪すぎたのでしょう」

「ただ、公衆衛生をもう一度見直す良い機会となりました」

「幸いにして死者は出ていませんし、この騒動は収まりますわ」


 こうして、思いもよらなかった奴らとのリターンマッチだったが、何とか無事に収束した。

 公衆衛生対策を考え直す機会にもなり、暫くの間俺もレイアも忙しくなった。

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