第二百六十一話 パレードと披露宴
大盛りのブーケトスの後は、街中の結婚パレード。
既にお屋敷前には、オープンタイプの馬車もスタンバイ済み。
パレードにはルキアさんとアルス王子を始め、陛下や王妃様にルキアさんのお父さんも参加する。
その周りは騎士団が固めていて、万が一の事が無いようにしている。
まあ、うちの馬が馬車を引っ張るから、警備に関しては全く問題ないと思う。
既に沿道には、沢山の人が今か今かと待ち構えていた。
そんな中、新郎新婦が姿を表すとわっと歓声が上がった。
「綺麗!」
「美しいわ」
女性を中心として、感嘆の声が上がっている。
アルス王子に対しても、「カッコいい」とか「羨ましい」という声が上がっている。
そして準備が整ったので、パレードが開始される。
「出発!」
先頭を行く騎士団長の合図で、パレードが出発した。
一斉に、沿道から歓声が上がっている。
その中を、オープンタイプの馬車に乗ったルキアさんとアルス王子が、沿道の観衆に向かってにこやかに手を振っている。
後ろを行く陛下と王妃様達は、慣れている感じで歓声に対して手を振っている。
俺達はそんなパレードの様子を、後ろから見送っている。
順調に行けば、三十分でパレードは終了する。
さて、その間お屋敷では披露宴に向けての準備が行われている。
今回は大きなダンスホールと、ダンスホールから直結している庭で行われる。
テーブルのセッティングは既に完了しており、スラタロウ監修の様々な料理が運ばれてきている。
来賓は壁際に移動していて、色々とおしゃべりをしている。
一角には子ども用に小さなテーブルとイスが用意されていて、皆座ってジュースを飲んだりしている。
うちの子も多いので、俺は一緒に子ども達とお喋りをしている。
子ども達は結婚式でのフラワーボーイ、フラワーガールが楽しかったのか、皆で花びらをまく仕草をしたりしている。
そして、庭ではスラタロウとタコヤキによる料理の実演が行われる。
オーク肉のローストビーフに魚の炙り焼きを予定していて、アルス王子の同級生の男性陣とビューティーさんにエステルが既にスタンバイしている。
アルス王子の同級生達は、先程プロポーズしてめでたくカップルとなった二人を囲んでいた。
二人の親類の貴族も参加していて、結婚式はいつかなんて話をしている。
その様子を一部の女性陣が羨ましそうに見ており、「今日はヤケ食いよ」って意気込んでいる。
そんな中、段々と周りの歓声が大きくなってきた。
パレードの馬車が、こちらに戻ってきたのだろう。
子ども達が一斉に動き始めたので、俺も後をついていく。
エステルは……、ありゃ駄目だ。
男性陣とビューティーさんとで、食事の事で盛り上がっている。
エステルは放置して、ルキアさんを迎えに行こう。
「「「おかえり!」」」
「皆、ただいま」
保護されている子ども達は、ルキアさんが馬車から降りてくると走ってルキアさんに抱きついていった。
アルス王子にも抱きついている子どももいるので、二人して抱きしめたり頭を撫でてやったりしている。
沿道の観衆も、微笑ましいものが見れたとほっこりしている。
俺はカーター君を抱っこしながら、その様子を眺めていた。
「皆さん、歓声が凄かったですね」
「ええ。有り難いことに、沿道の方がみんな笑顔で」
ルキアさんは、子ども達に手を引かれながらパレードを振り返っていた。
それだけ多くの人に、ルキアさんが愛されている証拠でもある。
「早く行こう!」
「皆待っているよ」
子ども達に手を引かれながら、ルキアさんとアルス王子が披露宴会場に姿を表した。
大きな拍手で迎えられながら、二人は席に案内された。
一緒にパレードに参加していた陛下達も、それぞれの席につく。
それぞれのテーブルに飲み物が配られ、バルガス様による乾杯の音頭で披露宴が始まった。
緊張から開放されたのか特にアルス王子に笑顔が多くなり、ルキアさんと楽しそうに談笑している。
大人も子どもも、料理に舌鼓を打っている。
おや、陛下も緊張していたのか、ワインを飲むペースが早いぞ。
外ではスラタロウとタコヤキの料理実演が始まり、昨日手伝ってくれた龍や男性陣が群がっている。
と、ここでウエディングケーキが出できた様だ。
「ウエディングケーキの用意ができましたので、新郎新婦はこちらにどうぞ」
再び司会を務めるアルス王子のお姉さんのアナウンスで、二人はウエディングケーキの所へ。
外にいた人達も、手に皿を持ちながらわらわらと集まってきた。
ルキアさんとアルス王子は、入刀用のナイフも持って準備万端だ。
「それでは、ケーキ入刀です。どうぞ!」
司会のアナウンスで、二人手を握りながらケーキ入刀が行われた。
周りからは、割れんばかりの拍手だ。
「続きまして、新婦から新郎へファーストバイトです。遠慮なくいっちゃって下さい」
ここで出てきたのは、リボンが付いた大きなスプーン。
ルキアさんは、遠慮なくケーキをすくっている。
来賓からはどよめきが起こり、アルス王子は若干引いている。
そして、ルキアさんはそのままアルス王子にケーキを食べさせる。
勿論アルス王子の口の周りは、ケーキのクリームでベタベタ。
それをルキアが、丁寧に拭いてあげている。
周りからは、拍手と共にヒューヒュー言われている。
そのためか、アルス王子の顔が赤くなっている。
エステルよ、アルス王子を指さして男性陣とビューティーさんと共にゲラゲラ笑っているのは流石にないぞ。
「大変素晴らしいファーストバイトでしたね。ケーキは切り分けて、皆さんにご用意します」
こうして、披露宴は滞りなく進んでいく。
ブーケトスに破れたハンター達は、ウエディングケーキをむさぼり食っているし、男性陣もローストビーフを食べまくっている。
ルキアさんとアルス王子の所には、挨拶にきている貴族に混じって子ども達も突撃している。
子ども達は、皆で集まって仲良くご飯を食べている。
張り切って疲れたのか、カーター君は眠ってしまってカロリーナさんの腕の中にいる。
勿論、俺も料理を楽しみつつ来賓の方と話をしている。
来年は俺の結婚式の番とか、子どもの顔が早く見たいというちょっと気の早い話もあった。
その話を聞いて、一緒にまわっているリンとフローレンスは思わず顔を赤くしている。
正妻になるエステルは、相変わらず肉に群がっている。
フローラ様が呆れてため息をついているので、後で説教コースだろうな。
最後に手紙が読まれるが、今回はルキアさんのお父さんたっての希望で、お父さんが手紙を読むことになった。
お父さんが結婚した事。
ルキアさんが生まれた事。
ルキアさんが小さい時にお母さんが亡くなって育児が大変だった事。
人神教国に襲われてルキアさんと離れ離れになった事。
大きくなったルキアさんと再会できた事。
そして結婚式の事。
涙ながらに手紙を読むお父さんを見て、アルス王子に支えられながらルキアさんは号泣している。
勿論会場内も涙が止まらない。
この時ばかりは、エステルもハンカチが使い物にならないくらい号泣している。
そして、新郎新婦から両親に花束を渡して披露宴は終了となる。
お酒の飲み過ぎかわからないが、アルス王子から花束を貰った陛下が号泣していて、王妃様達が若干ひいていた。
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