第二百六十話 ブーケを巡る骨肉の争い

「さて、ここからはお待ちかねのブーケトスを行います」


 アルス王子のお姉さんのアナウンスで、ブーケを取る為にわらわらと未婚の女性が集まってきた。

 特にアルス王子の同級生が多いけど、皆ブーケを狙うハンターになっている。


「エステルとかは行かないの?」

「私はもう婚約しているから行かないよ」

「私もですね」

「でも、一回はブーケトスをやってみたいですね」


 どうもエステル達は俺と婚約していることを理由に、ブーケトスには参加しないと言っている。

 同じ様なやり取りが、アルス王子の同級生の間でも行われていた。


「あれ? ビューティーは行かないのか?」

「真っ先に行きそうだけど」

「あたしは行かないよ。もうすぐ結婚するし」

「「「「なにー!」」」」


 男性陣はビューティーさんに冷やかしのつもりで話をしたが、ビューティーさんが結婚することに物凄くビックリしている。

 大げさな位のリアクションをしている人もいるぞ。


「ビューティーが結婚って……」

「あたし達、ビューティーに負けている」

「あーあ、結婚したい……」


 そしてブーケトスのハンターと化していた女性陣も、ビューティーさんに遅れを取ったとショックを受けていた。


「さて、今回のブーケは子ども達が一生懸命に作ったブーケです。その為、雑に扱うと子ども達が泣いてしまうでしょう」


 おお、アルス王子のお姉さんナイスアナウンス。

 子ども達の事を出したことで、明らかにブーケハンターが狼狽しているぞ。


「今回はブーケトスではなくて、複数のリボンをつけて一本だけブーケに繋がっているのを当てる物にします。なので、小さいお子さんも参加できますよ」


 成程、ブーケプルズに変更したのか。

 これならブーケを壊すこともなく、ブーケハンターの争いもない。

 完全に運任せになる。

 小さい子も参加出来るので、ミケ達もブーケプルズに参加していく。

 勿論、ブーケハンター達もそのまま参加だ。


「はい、準備ができましたね。それではリボンを引っ張って下さい」


 ルキアさんがブーケをもってスタンバイできたので、合図と共に皆でリボンを引っ張った。

 スルスルと外れのリボンを引っ張って落胆する人がほとんどの中、見事当たりを引いた人が。


「やったー! 当たりだ」


 当たりのリボンを見事引き当てたのは、オーウェン様の婚約者であるルーナちゃん。

 婚約しているとはいえ、相手はまだ小さな子ども。

 ミケ達はルーナちゃんと一緒に喜んでいるが、ブーケハンター達は複雑な表情だ。


「はい、どうぞ」

「ありがとう、ルキアお姉ちゃん!」


 ルキアさんからひまわりブーケを貰ったルーナちゃんは、早速オーウェン様の所に見せに行った。

 子ども達も代わる代わる、ブーケを持たせて貰っている。

 それを、羨ましそうに見つめているブーケハンター達。

 ここで、まさかのブーケトス二回戦が行われることに。


「さて、ここにもう一つのブーケがあります。先程は子ども達が作ったブーケを使いましたが、今度は豪華なブーケです。これを使ってブーケトスを行います」

「「「「やったー!」」」」


 ブーケハンター達は大興奮。

 もう慣れているのか、所定のポジションを取っていきます。

 子ども達は怪我の恐れがあるために、参加せずに後ろから見守ります。

 ちなみに男性陣も後ろにいます。


 ルキアさんが後ろを向いて、ブーケを構えた。


「新婦の用意が出来たようなので、さっそくブーケトスを行いましょう。どうぞ!」

「えーい!」


 思ったよりも高く投げられたブーケを目掛けて、ブーケハンターが一斉に襲いかかる。

 ブーケがバレーボールの様に何度か弾かれた後、何故か大きく弾かれて男性陣と子ども達がいる方へ。

 そして、アルス王子の同級生の男性の腕の中にすっぽりと収まった。


「アハハ、お前ら慌て過ぎだよ!」

「まさかここまでブーケを飛ばすとはな」

「男性にブーケをパスしてどうするんだよ!」 


 ビューティーさんも混じって、男性陣はブーケハンターを指さして大笑い。

 予想外の結果に、ルキアさんも苦笑いをしている。

 一方、ブーケハンター達は大失敗をして微妙な空気に。

 そんな中、ブーケを受け取った男性は、ブーケトスに参加しなかった同級生の女性の元に歩いていった。

 そして皆の視線が集まる中、女性の直ぐ側に行き、ブーケを掲げながらひざまずいた。


「僕と結婚してくれますか?」

「はい、喜んで!」


 まさかのプロポーズ。

 そしてプロポーズ成功。

 これには、周りもビックリしている。


「ここに新しいカップルが誕生しました。皆さん盛大な拍手を!」

「「うおー!」」

「カッコいいぞ!」

「私も言われてみたい」

「羨ましい」


 様々な声が上がる中、一つのカップルが誕生した。

 実は二人は婚約間近で、お互いの家に挨拶も済ませているという。

 それでもプロポーズはまだだったので、良いタイミングだと思った様だ。

 

 かなり盛り上がったブーケトスは、新たなカップルの誕生をもって幕となった。

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