第百四十話 テロリスト

「うわー」

「助けて!」


 街に近づくと、あちらこちらから悲鳴が上がっていた。

 人々が逃げ回っている。

 そして街中をうろつく魔物の姿が複数あった。

 あれは魔獣か?

 騎士っぽい人が懸命に抑えているけど、次々に吹き飛ばされていく。


「お兄ちゃん、ミケいくよ」

「頼む」

「よーし、お馬さん行くよ」

「「ヒヒーン」」

「我もいくぞ」


 急いでミケと馬が、悲鳴の上がる街中に向かって走っていった。

 その後をシルも駆け抜けていく。

 騎士を吹き飛ばした魔獣をミケが倒し、更に街中で暴れている魔獣に突っ込んでいく。

 俺は吹き飛ばされた騎士に近づき、急いで治療を行う。


「おい、一体何があったんだ?」

「ワース商会と人神教会が領主邸を襲い、領主様と奥様を人質に。逆らうと殺すと、街に魔物が」

「くそ、何て酷いことを」


 騎士を治療して話を聞くと、領主誘拐に街中でのテロ行為と非道な行いをワース商会と人神教会が行っている事が分かった。

 住民をも人質にして、ギース伯爵領を乗っ取るつもりだ。

 ついに人神教国は手段を選ばなくなったのか。


「サトーのアニキ、俺達もいくぜ。オラァ、奴らのことが許せない」

「ホワイトも連れて行って下さい。この分だと怪我人も多いでしょう」

「チュー!」

「おう、任せな」

「あの、貴方達は一体?」

「オラァ、ブルーノ侯爵家騎士団の獣人部隊だ。共に奴らをやっつけよう」

「大変有難い、我らも直ぐに体制を整えます。住民は教会に避難するように声をかけます」

「おう、これ以上怪我人を増やしてはいけねえ」


 巡回班にホワイトを託し、獣人部隊はギース伯爵領の騎士団と共に分かれて行動し始めた。

 ブルーノ侯爵家家紋入りの装備をつけているから、ギース伯爵領の騎士も直ぐに気がついてくれたようだ。

 周りを見渡すと、ミケ達が魔獣を倒して次のターゲットに向かって動き出していた。

 この分だと、街中に放たれた魔獣の数も多そうだ。


「ビアンカ殿下にリンさん。どちらかに領主が囚われているかもしれません」

「領主救出を優先にして、妾達も行動するのじゃ」

「救出はこちらに任せて下さい。サトーさんも急いで領主邸を。まだ領主夫妻を襲った残党がいるかもしれません」


 思ったよりも大変なことになったぞ。

 ランドルフ伯爵領の様に領主を操っていたのかと思ったが、誘拐に脅迫だとまるでテロリスト集団だよ。


「エステル殿下、俺達も急ぎましょう。領主夫妻以外の家族も、やつらの人質にされている可能性が高い」

「行こう、サトー。こんな酷いことは許せない」


 本隊も目的地に向かって急いで行動し始めた。

 ここからは時間との勝負。最悪の事態になる前に、人神教国を止めないといけない。

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