第百二十七話 三人は大貴族の息子さん

「アルス王子、後は宜しくお願いします」

「バルガス卿も道中気をつけて」


 お昼ご飯を食べて一段落したところで、バルガス様は領地に帰って行った。

 因みにお昼ご飯はオーク肉のしょうが焼きで、ご飯にお味噌汁。

 バルガス様とサリー様はもちろんのこと、三人組もスラタロウの料理にご満悦だった。


「サトー殿、また遊びにきてくれ」

「はい、必ず伺います」

「サリーお姉ちゃん、またね」

「ミケちゃんも遊びにきてよ」


 俺達は、まずはバスク領へ向かうバルガス様の一団を見送った。

 すぐに再会しそうな気もするが、その時はその時だ。

 さて、午後も仕事を頑張らないと。

 

 三人組も事務仕事するというので、アルス王子と一緒に執務室代わりの部屋で作業。

 軍務卿はビアンカ殿下の所に行っていた。非常識な防壁を見に行くという。見たらビックリするだろうな。

 ミケはドラコと一緒に街の巡回。ワース商会の残党が見つかり、巡回の人手を増やすとの事。白々しく士官候補の面接を受けにきて、ララとリリに見抜かれていた。


「アルス王子、面接者のリストが揃いました」

「ケインに面接官をやらせよう。軍人の面接官はジェラードだな」


 ケイン様は真面目系。暗めの茶髪で、これでもかというイケメンだ。

 ジェラード様は、騎士というだけあって体格がいい。

 オレンジに近い金髪を短めにカットしている。

 兄弟と歳が離れている為か、逆に歳が近い長男の子どもであるヴィル様と仲が良いという。


「領内の税率がかなりおかしい事になってます。完全にワース商会のせいですね」

「税率は下げないとならないな。何か領内で産業も起こさないとならない。オリバーに検討させるか」


 オリバー様はグレーの癖のある髪で、ぱっと見は知的な感じだ。

 メガネとかよく似合いそう。

 因みに三人共に婚約者がいるという。


「文官の試験問題は、前回の物を修正で良いですか?」

「問題ないだろう。父上に送ったら、今度王都でも使うと言っていたぞ」

「本当ですか? 間に合わせで作ったので、簡易版なんですよ」

「簡易版であるのが良いらしい。できれば兵士向けも作って欲しいとリクエストがあった」

「うーん、直ぐにはできないので少し時間をください」

「大丈夫だ、急ぎではない」

 

 面接用に簡単に用意したから、出来は納得していないんだよな。

 兵士用だと、もっと簡単にした上で引っ掛け問題を増やした方がいいかな。

 そんな事を思っていたら、三人からの熱い視線を感じた。


「どうかしました?」

「いや、内政もできるとはと。ブルーノ侯爵領でも、内政をやっていたと聞いてはいましたが」

「この試験問題は、この間王城で見ました。よく出来ていると父が褒めていました」

「ぶっちゃけ、サトーさんに出来ない事ってあります?」


 失礼な。こう見えても出来ない事だらけだぞ。


「サトーは平均的に何でもできる。逆に一流には届かない、そう言いたい訳なのだろう」

「まさにそうです」

「ただ、比較対象がこの国でもトップレベルだから、周りから見れば十分変人だ」


 うおい、アルス王子からも変人扱いされたぞ。

 俺は、心安らかに日々を送りたいだけなんだよ。

 そう思っている所に、ララとリリが入ってきた。

 ララの腕の中には、午前中保護したオオカミの子どもが抱かれていた。


「「お兄ちゃん、あっお姉ちゃんだった」」

「どうした? 何かあった?」

「あのね、この子がシルクお姉ちゃんと一緒にいたいみたい」

「ララ達はベリルがいるから駄目なんだって」


 あらら、午前中に保護したオオカミの子どもはシルク様と一緒になりたいようだ。

 ベリルとは仲良さそうだったから、大丈夫かなと思ったけどな。

 

「シルク様が良かったら、面倒を見てもらおうか」

「「うん」」


 ララとリリはドアを閉じると、二階に上がっていったようだ。

 元気な足音がここまで聞こえてくる。

 その様子を見たアルス王子が、ふと呟いていた。


「研究所で保護した子どもも、あんな感じで素直に成長してほしいものだ」


 全くもって同感です。

 ララ達はミケの存在も大きいだろう。


 夕食は三人の歓迎の意味も込めて豪華になった。

 今晩の夕食は、オーク肉のビーフシチューにサラダの盛り合わせ。


「昼食の時も思ったが、本当に美味しいな」

「これをスライムが作ったとは、到底思えない」

「何にせよ、美味い飯が食べられるのは良いことだ」


 お昼に引き続き、三人も大満足していた。

 因みにまた量を多めに作ったので、兵士や子ども達にメイドさんにも配っている。

 兵士は、訓練はキツイが飯は美味いとご飯は好評らしい。

 これから兵士には、シルとリーフの地獄の特訓が待ち構えているが。


「サトーよ、明日は朝早くに移動する」

「分かりました」

「着付けなどはメイドがおこなうから特に問題はないが、あまりやり過ぎないように」

「何ですか? その溜息は」

「サトーは無自覚の内に色々やらかすからな」

「うむ、よく分かるのじゃ」

「きっと王都でもサトー伝説作りそうだね」

「間違いありませんね」

「まるで危険物扱いですね」


 みんな俺が王城で色々やらかすと思っているらしいが、流石に大人しくするぞ。

 子ども達も今日は早く寝るのが分かっていたのか、大人しく就寝していた。

 因みにダインの部屋などを浄化してあるが、シーツとかも変えたいとの事なので、誰も部屋では寝なかった。

 もちろん三人組も、曰く付きの部屋では寝ることはなかった。

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