第百二十六話 やりすぎサトーさん

「お兄ちゃんが、お姉ちゃんになったよ」

「昨日と一緒だ」

「また女の子に」

「パパがママになった」


 次の日の朝、女装して支度していると、子ども達からまた色々言われてしまった。

 ここで、再び固まってしまっているドラコに声をかけてみた。


「ドラゴ、固まってどうしたの?」

「あ、いや。サトーのあまりの変わり様に驚いてしまって、頭が追いついていない。女性なのにサトーの匂いがするのが、物凄い違和感だよ」

「ウォン」


 成程、ドラゴもベリルも嗅覚が良いから匂いで誰か判断できる。

 俺の匂いなのに女性だから、頭が混乱しているんだ。

 俺だって、本音は女装はしたくないよ。


「サトー様、すみませんがメイドの治療をお願いします」

「あっ、はーい。直ぐに行きます」


 やばい、子ども達と話をしていたら時間がたっちゃった。

 直ぐに行かないと。


「しかし、本当にサトー様なんですよね? 女性にしか見えないですよ」

「しかもこうして奇跡の様な治療をしているのだから、聖女と呼ばれるのは間違いないですね」

「本当ですね。私が男性だったら、サトー様に恋に落ちます」

「あはは、それはどうも」


 もう苦笑するしかない。

 反応がブルーノ侯爵領の時と同じなんだもん。

 肌がキレイとか、手がきれいとか、男性からしたら悩みでもあるんだよね。


「では、治療を開始します。明日はシルク様を治療しなければならないので、残りのお二人には申し訳ないです」

「いえいえ、そもそもがお嬢様を差し置いて治療を受けることなんて、逆に申し訳ないです」

「シルクお嬢様は心お優しい方ですから気にしてませんと言いますが、あれだけの大怪我ですから不憫に思います」


 そうだよな、シルク様は四肢がなくて片目もない。

 早く普通の体に戻してあげないといけないな。


 かちゃ。


 そんな事を思っていたら、急にドアが開いた。


「あ、サトーお姉ちゃんだ。間違えちゃった」


 ドアを開けたのはミケだった。

 その後ろには男性三人組がいる。

 この人達が代官というわけか。

 アルス王子の知り合いで大貴族の子息だけあって、みんなイケメンだ。

 あれ? どうも俺を見て固まっている。


「おい、メイドさんの欠損した腕が再生したぞ」

「見間違えたと思ったけど、確かに再生した」

「ミケちゃんがサトーって言っていたけど、あの女性が巷で噂の聖女サトー?」


 男性三人組はポカーンとしている。

 こちらもどうして良いか分からないので、とりあえず声をかけよう。


「すみません、女性の方の治療中なので」

「「「すみませんでした!」」」


 バタン。


 男性三人組は、顔を真っ赤にして急いでドアを閉めた。

 暫しの静寂のあと、メイドさんが大笑いした。


「ふふふ、あの方々はサトー様を見て顔が赤くなっていましたわ」

「ええ、大貴族の子息すらも、一瞬にして虜にする聖女サトー様ですわ」

「これは新たな聖女物語に加えるべきですわ」

「もう勘弁してください」


 メイドさん達はきゃあきゃあ言って、テンションが上がっている。

 新たな聖女物語って、どんどん広まっていきそうだよ。


 治療が終わって執務室に向かうと、さっきの男性三人組が座っていた。

 何だか俺の事を指差して、口をパクパクさせている。

 その様子を見た軍務卿とバルガス様が、思わず吹き出していた。


「おい、アルス。まさかあの話題の聖女サトーか?」

「聖女かどうかは知らんが、確かにサトーだぞ」

「教会の中でも伝説とされた、欠損部位の回復をおこなったぞ」

「サトーの聖魔法はとてつもないからな。今は一日二人限定で治療をおこなっている」

「複数の領を救った救国の聖女だと聞いているが、アルス本当か?」

「既にいくつかの領を救っている。ですよね、バルガス卿」

「はい、我が領も闇ギルドの魔の手からサトー殿に救ってもらいました」

「「「では、やはり!」」」


 おい、男性三人組がキラキラした目で俺を見ているぞ。

 アルス王子様も苦笑した様子で見ている。


 かちゃ。


「おや、お兄ちゃん達だ」

「エステルか」

「書類持ってきたよ」


 エステル殿下が書類の束を持ってきた。

 あれは兵士希望の資料だな。

 エステル殿下は、俺と男性三人組を見比べていた。


「おやおや? お兄ちゃん達はサトーにホの字かな?」

「「「うぐ、そんな事は」」」

「駄目だからね、聖女だとしてもサトーは私のものだからね」

「ちょっと」


 まあエステル殿下とアルス王子の同級生なら、昔からの知り合いだろうな。

 エステル殿下は俺に抱き着いて、男性三人組を煽っている。


「あっ、そうだ。勘違いしない為に言っておくけど、サトーは男だから」

「「「は?」」」

「じゃあね」


 パタン。


 言うだけいって、エステル殿下は戻っていった。

 振り返ると、完全にフリーズしている男性三人組。

 その横で爆笑している、アルス王子と軍務卿とバルガス様。


「ははは、お前らのそんな顔初めてみたぞ」

「我が息子ながら、こんな情けない顔になるとは」

「いやあ、傑作ですな」

「「「えー!」」」


 部屋の中に、男性三人組の叫び声が響き渡った。


 ということで関係者が集まって自己紹介をする事に。

 人数が多くなったので、食堂に移動します。


「私はケインです。宰相の次男です。よろしくお願いします」

「オリバーです。財務卿の三男になります」

「ジェラードです。軍務卿の三男になります」

「彼らは私の学園での同級生だ。まあ昔からの付き合いでもある。妾腹とか色々言われているが、能力は保証しよう。例え女装した男性に恋に落ちてもだ」

「「「おい!」」」


 余計な事を言ったアルス王子に対して、三人組がツッコミを入れる。

 幼馴染というのは本当なんだな。

 そして例の如く、ビアンカ殿下とマリリさんが腹を抱えて爆笑している。

 でもビアンカ殿下はともかくとして、マリリさんは不敬罪にならないか不安だ。


「ケインは執務能力が高いし、オリバーは調整事項がうまい。ジェラードは指揮官能力に優れている。この難局を乗り切るのにはピッタリの人材だ」

「でもお兄ちゃん。サトーなら一人で全部こなしちゃうよ」

「私だって、サトーに全部やってもらいたいのが本音だ。そうしたらどんなに楽なことか」


 あのう、俺は体一つなんですが。

 できるできないではなく、そんな事をしたら体が持たないですよ。


「アルス、本当にサトーさんは男性なんだよな」

「そうだ。じゃなければエステルやリンが婚約者候補にならないだろう」

「その話は俺も知っているけど。じゃあ、ブルーノ侯爵夫人の息子のプロポーズを断った話は作り話?」

「いや、それは本当だ。女装したサトーに息子が惚れてプロポーズしたのだ。私も見ていたし、他にも多く目撃者がいる」

「では、何で今も女装しているんだ?」

「それはランドルフ伯爵領で、聖女物語を作るためだ。今日一日だけの予定だぞ」


 三人組は、なおも俺の事が男性だと信じられないようだ。

 アルス王子に色々詰め寄って質問をしている。


「そうだ、今日一日サトーの後についてみるといい。面白いのが見れるぞ」


 アルス王子の一言で、三人組は俺の後をついてくる事になった。

 ちなみにミケも一緒についてくる。

 まず最初にシルク様の所に挨拶に行くことになった。


「シルクお姉ちゃん。代官さんがきたよ」

「はい、入ってください」


 部屋の中に入るとサリー様も一緒にいた。

 どうも治療の途中だったらしい。


「このような格好で申し訳ございません。ランドルフ家次女のシルクでございます」

「バルガス家長女のサリーと申します。よろしくお願いいたします」


 シルク様とサリー様の挨拶に続いて三人組が挨拶をするが、シルク様の痛々しい姿を見て三人組は僅かに顔をしかめた。


「あ、そうだ。サトーお兄……お姉ちゃん? シルクちゃんの体の淀みが取れないから、少し見てほしいの」

「それは大変。直ぐにみないと」


 シルク様のそばにいって直ぐに聖魔法を流す。

 体の中の淀みは殆ど取れているが、ヘソのあたりで何かが詰まっている感じがする。

 これはもしかして魔力詰まりでは?


「サリー様、大丈夫ですよ。これは魔力つまりといって、魔力回路が塞がっているの。薬の影響ではないから」

「そっか、それはよかった。魔力つまりは直せるの?」

「ええ、任せて。ミケ、手伝って」

「はーい、お姉ちゃん」


 ミケにも手伝ってもらって、魔力詰まりを一気に治してしまおう。

 四肢欠損とはいえ肘まではあるので、ミケと輪になってシルク様に魔力を流す。


「ほわー。サトーさん、体の中に魔力が流れてきましたよ」

「そのままじっとしていてね。だいぶ詰まりが取れてきた」

「もう、大丈夫だよ。シルクお姉ちゃん」

「うん、スムーズに魔力が流れるのがわかる。ありがとうございます、サトーさん、ミケちゃん」

「魔力循環の訓練は寝ていてもできるから、練習していてね」

「はい!」


 ふう、これで大丈夫かな?


「おい、魔力詰まりってあんなに簡単に治ったっけ」

「熟練の魔法使いでないと無理だぞ」

「ミケちゃんも実はすごい魔法使いなのか?」


 三人組が何かヒソヒソ言っているけど、気にしない事にしよう。


「あ、そうだ。サトーお姉ちゃん、このお屋敷を浄化したいけど私じゃ手が足りなくて。手伝ってもらっていい?」

「いいけど、それは時間かかるの?」

「多分サトーお姉ちゃんなら一瞬で終わっちゃうよ」


 という事で、シルク様の部屋を後にして屋敷の玄関ホールに移動する。

 空間が広いので、浄化の効果が高いそうだ。


「聖魔法で空間というか、空気を浄化する感じなの。生活魔法の聖魔法版だね」

「この屋敷を、生活魔法で浄化するイメージで聖魔法をかければいいんだね」

「そうなの。でも私はまだ魔力が弱いから、普通のお家くらいしかできないんだ」

「でもやり方が分かれば大丈夫。まずはやってみよう」


 生活魔法を屋敷全体にかけるイメージで、聖魔法を使ってみる。

 屋敷の全体が把握できたから、多分大丈夫だろう。

 何だか屋敷が光っているが、気にしない事にした。

 ついでだから、生活魔法で丸ごと綺麗にしておこう。


「おいおい、貴族の屋敷を丸ごと浄化なんて普通できるか?」

「いや、教会の司祭でも普通は部屋ごとだぞ」

「生活魔法も屋敷全体にかけていた。そんな馬鹿な」


 三人組は何かを言っているが、気にしない事にしよう。


「わあー、流石サトーお姉ちゃん。一発でできたよ」

「ふう、これでいちいち教会に頼まなくても大丈夫だね」

「でも教会からスカウトきたりして、聖女サトーだし」

「それは勘弁してほしい」


 サリー様と笑い合ったあと、屋敷前に移動する。

 炊き出しを手伝っていたララとリリが、俺に抱きついてきた。


「「お姉ちゃん」」

「おっと、ちゃんとお仕事やっていたかな?」

「「うん!」」

「そうか、偉いなあ」

「「えへへ」」


 ちゃんとお手伝いをしていたので、二人の頭を撫でてやった。

 ついでに不満そうにしていたミケの頭も撫でてやった。


「サトーさん。先ほど屋敷の浄化をしていたでしょう」

「あ、分かりましたか?」

「急に屋敷が光を出すのですから。思わず拝んでいた人もいましたよ」


 リンさんが話しかけてきたと思ったら、どうもさっきの浄化の件らしい。

 リンさんは以前に小さな建物の浄化を見た事があるらしいので、直ぐにわかったそうだ。

 と、ここに一台の馬車が到着した。


「おや? リン様にサトー様ではないですか」

「あれ? トルマさんではないですか。一体どうしたのですか?」

「実はルキア様より手紙を預かっておりまして。後は服や食料などをお持ちしました」

「それは助かります。ちょうど就任したばかりですが、代官がおりますので紹介します」


 リンさんの紹介で、トルマさんと三人組を引き合わせる。

 こういう時、子爵家の御用商会だと話が早く済んで助かる。


「しかし、先ほどの屋敷の光はサトー様の魔法ですな」

「う、そんな簡単に分かりましたか?」

「あれ程の魔力を使える人は、そう多くおりません。私はバスク領でのサトー様の戦いも聞いておりますので、直ぐに分かりました」

「リンさんにも、直に分かってしまったので」

「しかし知らない人からとしますと、まさに聖人様の奇跡かと。そもそも、お屋敷一棟丸ごと浄化することはできないというのが世の常識でございます」


 あっ、これは完全にやりすぎた気がする。

 事実だし、否定しにくいぞ。


 リンさんととるまさんと別れて、国境付近に向かう。

 この間見たときよりも、更に要塞化しているような気がする。


「サトーにミケにケイン達か」

「ビアンカお姉ちゃん、凄いね!」

「レイアの助言もあるのだ。まだまだ、これからパワーアップするのだぞ」

「するの」


 ビアンカ殿下とレイアが胸を張って答えているが、高圧縮の防壁だしそう簡単に壊れないだろう。

 その横では、スラタロウを抱いたヴィル様が苦笑していた。


「あの、ビアンカちゃん。もっとやるの?」

「当たり前じゃ。できれば王都の城壁とかもやりたいのじゃ」

「でも、この規模だと中隊どころか大隊でも十分な気もするが」

「これから起きることを考えれば、もっと大規模でも良いのじゃ。どうせそなたらの父は、ここを要塞化するのを希望しているはずじや」

「確かに人神教国への睨みには十分だけど」

「それに、これはただの土魔法の応用じゃ。そもそも、このような魔法の使い方を考えたのもサトーじゃ」

「「「はい?」」」


 あ、また三人組が俺を見ている。

 あの時は難民キャンプの設営で色々考えていただけで、ここまでできる腕前はビアンカ殿下とスラタロウのお蔭だけど。

 と、ここで一人の兵がビアンカ殿下に駆け寄ってきた。


「ビアンカ殿下、訓練中に一名大怪我を負いました。まだ、後方支援部隊が整っておりませんので連絡いたしました」

「なに? 直に……いや、サトーがいるから、サトーの方が確実じゃ」

「聖女サトー様なら、我々も安心です」

「ミケも行く」

「僕も行きます」

「俺達も行こう」


 兵士に連れられて、急いで現場に向かう。

 この兵隊さんはブルーノ侯爵領でもあっていたので、俺の事も知っていたから特に騒ぎにはならなかった。

 ミケとヴィル様に三人組も、俺の後に続いた。

 現場に向かうと、一人の兵士が担架に乗せられていた。

 そばに興奮した馬がいたので、どうも落馬したらしい。

 昔から、落馬は兵の大怪我の原因だからな。

 とりあえず、怪我した兵士の周りにいる人に声をかける。

 

「容態はどうですか?」

「足と腕を骨折している。それに、内蔵にもダメージがあるかもしれない」


 どうも思いっきりスピードに乗った状態で落馬したっぽい。

 他にも、擦り傷や打ち身などもあった。

 ちょっと危なそうなので、直ぐに治療開始する。

 体をみると、結構ボロボロだぞ。

 うまく骨がくっつくように意識して聖魔法をかける。

 意識を集中すると、段々と怪我の部位が治っていく。

 腰痛とかもあったから、ついでに治しておこう。


「ふう、これで大丈夫だと。まだ痛い所はありますか?」

「いや、痛くない。他にも痛かった所が治っている。ありがとう、助かった」

「無事に治ってよかったです」


 兵士は体を動かして感触を確かめていた。

 どうやら問題ないらしい。

 ほっと胸を撫で下ろした。

 まあ、このくらいなら今いるレイアでも大丈夫だったな。


「お兄ちゃん、お馬さんも怪我しているみたい」

「だから、暴れたんだな」

「レイアが治すよ」


 レイアにみてもらったけど、右前脚を怪我しているらしい。

 骨折とかではなくねんざで済んでいるので、直ぐに治療は完了した。

 と、ここでミケが小さなオオカミを抱きかかえていた。


「お兄ちゃん、この子が出てきたからお馬さん驚いちゃったみたい」

「そうか、馬にとっては災難だったな」

「この子の親は魔獣にやられちゃったんだって。確かダインって言っていた」

「ええ、ダインの被害者か。もしかしたら食事にされちゃった可能性もあるな。しょうがないから連れて行くか」

「そうだね、ベリルと仲良くなれるかも」


 またもや、ダインの名前が出てきた。

 他にも、被害を受けた動物がいるかもしれない。

 そう思っていたら、周りの兵士がヒソヒソ喋りだした。


「あれって、噂の聖女様?」

「猫獣人の少女と一緒といるらしいから、本物だろう」

「でも、エルフの子どもがママって言っていたぞ」

「お前知らないのか? 聖女様は、行き場を失った違法奴隷の子を引き取って養っているらしい」

「あのエルフの子以外にも、引き取った子どもがいるという」

「さっきの治療も凄かったけど、馬の怪我も気づくとは」

「数多くの従魔を従えているらしい。動物の心まで分かるとは、まさに聖女様にふさわしい」


 何だか、話がめちゃくちゃ大きくなっているぞ。

 でも事実だから、反論し難い。


「ケ、ケイン様。早めに後方部隊を整える必要がありますね。この後は、回復魔法が使える私の従魔をここに派遣します」

「ああ、感謝する」

「このレイアも、ビアンカ殿下にいるスライムのスラタロウも回復魔法が使えますので、緊急時は呼んでもらってかまいません」

「レイア頑張る」

「わ、わかった」


 何だか三人組はポカーンとして、俺の様子をみていた。

 色々な事が想像以上だったらしい。


「そうか、それはよかったのう。早めに救護施設も作らんとな」

「その方がいいですね。できれば兵とあわせて、馬とかも治療したほうがいいかと」

「子ども達なら任せても大丈夫じゃろう。兵の為の宿舎や食堂も充実させたいのう」

「うまくいくと、ここの人達にとっても良い雇用になりますね」


 戻ってビアンカ殿下と色々話をしていたら、三人組から飽きられた目で見られていた。

 あれ? やりすぎたかな?


「どうした? 妾達の案に何か不都合はあったか?」

「いや、魔法のお陰でこんなに早く駐屯地も城壁もできています」

「衣食住を整えることで、兵の士気を高める効果もあるのも理解できます」

「ただ、ビアンカ殿下はともかくとして当たり前の様に話をしているサトーさんって、一体何者かと」


 俺はただの一般人ですよ。

 ビアンカ殿下もヴィル様も苦笑しないでください。


「あっ、そうだ。ジェラードおじさん、兵士の訓練プログラムは、サトーさんと一緒にいる白いオオカミのシルと妖精のリーフに聞くといいよ。近衛師団でも取り入れられているらしいし」

「最近近衛師団が妙に強くなったかと思えば。そんなところにもサトーさんが絡んでいるのか」


 それは俺ではなく仲間の方で……

 もう、どうにでもしてくれ。


「おや、もう帰ってきたのか? 随分と早かったな」

「いえ、もうお腹いっぱいです」

「サトーさんの凄さが分かりました」

「聖女物語も納得です」

「そうか、お前らもサトーの非常識さが分かったか」

「あのー、特に変わったことはしてないつもりですが」

「「「絶対にありえない!」」」


 うう、声を揃えて言われちゃった。

 まだお昼前だけど、まわるところはまわったので屋敷に戻ってきた。

 何だか三人組はぐったりとしている。

 アルス王子も軍務卿もバルガス様も、その様子に苦笑している。

 三人組ではなく俺に対して。


「サトーの凄さはこれから更に分かるだろう。普通に内政もこなすからな」

「あのー、アルス王子。しがない冒険者のつもりですよ」

「その冒険者グループが、軍の大隊にも匹敵する力を持っているのがおかしい。オーク百匹を一瞬にして殲滅した馬もいるし、サトーの剣はかの有名な伯爵夫人の魔法障壁すら破壊する。サトーとミケに従魔だけでも恐ろしい戦力だ」


 もう、これ以上俺の事をバラさないでくれ。

 三人組が信じられない目で俺を見ているぞ。

 まだ午前中なのに色々あって、俺はめちゃくちゃ疲れてしまった。

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