第17話 いや、食うのかよ⁉︎
ドサッ――
お腹が減ってその場に座り込んだラビの前に、俺は自分なりに調理した食い物を放り投げてやる。――まぁ、調理とは言っても、魔法で生み出した火で
「……あ、あの、これは?」
『テールラットの丸焼き。お代わりもあるぞ。下の甲板にいくらでも走り回ってる』
目の前に転がった黒焦げな肉の塊を見て、ラビの眉が
『まさか高級ステーキがスープとサラダ付きで出るとでも思ったのか? これでも俺なりに頑張って作ったんだ。食事を出してもらえるだけでもありがたいと思ってほしいな』
「……………」
『あ、ちなみに水なら「
俺がそう言うと、ラビは何かもの言いたげな表情で不満そうに
そして船長室に入ると、彼女は部屋の中にある棚や引き出しの中を
「――いただきます」
いや、てかマジで食うのかよ!
正直、半分冗談なところもあったのだが……それでもラビは、首元にナプキンを掛け、お皿の上に乗ったこれまで見たことのない生き物の丸焼きを前に、ナイフとフォークを動かし始めた。腹を切って内臓を取り出し、皮を剥いで内側の肉を取り出し――
かなり四苦八苦しているようではあったが、彼女は器用にテールラットの肉をそぎ取って、どうにか切り取った肉片を、恐る恐る口の中へと運ぶ。
「(はむっ)……うぐっ!」
そして、口に入れて一秒も経たないうちに吐き出した。どうやら肉自体が臭くてとても食えたものではないらしい。咳き込んでいるラビを見て、俺は溜め息を吐く。――まったく、無理に食おうとするからだ。
『馬鹿、外側を軽く
俺がそう言うと、ラビは渋い顔をしながら立ち上がり、再び部屋の中を物色し始める。
『おい、今度は何を探してる?』
「火を点けられるもの。ろうそくとか――」
『そんなもの無くても、火魔術を使えばできることだろ? 四元素魔術の基礎なんだから、お前でも簡単に習得できるはずだぞ』
俺がそう言うと、彼女は首を左右に振る。
「……私、
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【名前】ラビリスタ・S・レウィナス
【種族】人間 【地位】なし 【天職】
【HP】50/50
【MP】0/0
【攻撃】25 【防御】35 【体力】30
【知性】75 【器用】90 【精神】35
【保持スキル】錬成術基礎:Lv1、剣術:Lv2、鉱物学基礎:Lv1、裁縫:Lv2、歌唱:Lv3、宮廷作法:Lv2
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確かに、彼女のステータスを最初チラ見したときは気付かなかったが、魔力であるMPはゼロ。保持スキルに魔法・魔力系のスキルは錬成術基礎以外にない。唯一魔力を使用する錬成術基礎は、彼女の天職が
『でも、天職が
「天職は、生まれる際に一部の限られた者だけに付与される特別な力。でも力を与えられるとはいえ、その力が与えられた者の体質に合っているとは限らない。生まれつき体が弱かったり、手脚が不自由な人間にだって
なるほどな……この異世界でも、そう都合良く物事は決まってくれないって訳か。
『つまりお前は、「
「……ええ、その通りよ」
少女は悲しげな顔をして
しかしまぁ、ごく一部の奴にしか付与されない天職と、珍しい病気を一緒に持ってこの世に生を受けるとは、彼女は良い意味でも悪い意味でも、なかなかレアな一例なのかもしれない。
安心しろ、お前が使えない分、俺がしっかり使ってやるよ――俺は心の中でそうつぶやきながら、自分のステータスを眺めていた。
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