第3話

 アルバーノは酒が好きだ。なにせ、飲めばポカポカと身体が暖かくなり、とにかく気が大きくなる。明日のことも明後日のことも、老後のことまで全部忘れて楽しむことができる。なにせ酒には強いので、どんな酒でも楽しめる。蜂蜜酒もワインもエールも、どれも好きだ。

 なので、苦手な酒は味や種類ではなく、飲む時のシチュエーションだった。たとえば、辛気臭い相手と飲む酒は、どうにも美味くない。


「アントンさんやヨシアさんに見捨てられた。俺は、終わりなんですよ」


 さめざめと泣くマーキンは、あまり好みでない相手だった。

 獅子の玉座にて目撃してしまった、マーキンのギルド追放の瞬間。その場にいる全員と知り合いの第三者ということで巻き込まれそうになったアルバーノは、ほぼマーキンをかっさらう形で、ねぐらの宿まで逃げてきた。とりあえずまあ、落ち込んだら酒だと、今現在一階の酒場でマーキンと二人飲みである。そうしたら、予想以上にマーキンが落ち込んでいた。

 なお、同行していたコーラは、移動中にいつの間にか姿を消していた。何をしているのか、偶然はぐれたのかは知らないが、形としては面倒な状況にあるマーキンを、アルバーノに押し付けて逃げたことになる。何かこう、歩いていて机の角に腰をぶつけるくらいの痛い目にあっていて欲しい。

 アルバーノは空になったマーキンのグラスに酒を注ぎつつたずねる。胃の中にあるもんも愚痴も全部吐き出して、ひとまず酔いつぶれてもらおう。


「だいたい、なんでお前、ギルドを追放される羽目になったんだよ。アントンもヨシアも、むしろお前に目をかけてただろ」


 獅子の玉座。かつて、王都を一手に仕切っていた太陽の塔より追放された、冒険者アントンが設立したギルドである。もともと、太陽の塔最強と目されていたアントンが作り上げたギルドは、ごく自然に実力主義となった。所属はしてないが、アルバーノの肌に合うギルドは間違いなくここである。

 そんな獅子の玉座にて、裏の実力者と呼ばれるのがヨシアなら、次世代ナンバーワンと目されるのがマーキンであった。多くの冒険者が、得てがハッキリとした戦士と魔術師として鍛える中、マーキンは両方を追求する魔法剣士の道を選んだ。二種類の道を極めるのは困難を伴うが、マーキンの才能と努力はその道に相応しいものがあった。

 マーキンは少し考えてから、アルバーノの質問に答える。


「最近、ギルドの連中とパーティー組んでも、上手くいかなかったんですよ」


「どういう意味で?」


「なんていうか、みんなその……組んでいて、リズムが合わないんですよ。ヨシアさんや、たまに組むアントンさんとはそういうことはないんですけど、大半のメンバーとは、しっくりいかなくて。みんな俺に、ついてこれないって言うか」


「ギルド長なのに、まだアントンは前線に出てるのか。アイツも相当だな。それで?」


「そうこうしているうちに、どんどん周りと溝ができていって。ギルドの命令がある以上、パーティーを組むのまでは断られないんですけど、みんな俺を居ないものとして扱ってきて。それで俺も、自分で考えて動いているうちに、他のメンバーを出し抜く形で成果を出しちゃって」


「あー……それはマズいな」


「俺もそんなつもりはなかったんですけど。それでこの間、哨戒任務に出た時についにやらかしちゃったんですよ。みんなで王都の周りを哨戒している途中、ゴブリンの群れにぶち当たって、なし崩し的に乱戦になって。その時、俺の炎の魔法が、前衛にいた戦士の顔にぶち当たったんですよ。ほら、あの曲刀使いの女剣士の。覚えてません?」


「いや。全然。それにしても、女の顔か。お前、狙ったのか?」


「いくらなんだって、そんなわけないじゃないですか! 俺はちゃんと合図を出したし、最初はそこにゴブリンしか居なかったんですよ!」


「でも、当たったんだろ。今の状況でそうなると」


「ええ。お察しの通り、俺が狙って撃ったって話になってましたよ。一緒にいた連中は、俺がいきなりぶっ放したみたいに話を盛ってくし」


「女剣士の方は?」


「顔が焼けて痕が残っただけらしいです。もう俺の顔も見たくないってんで、傷は確認してないですけど。最近、あんまギルドにも出てきません」


「そりゃ、聞けねえわな。聞く聞かないは別として、謝罪できたのかどうかの方が大事だけどな」


 そう言われたマーキンは、悲しげに呟く。


「俺はちゃんと詫びを入れようとしたんですけど、みんなまともに話を聞いてくれないって言うか、気づけば謝罪のラインが、ここ数年の俺の稼ぎを全部出せとか、そういう話になってきて」


「お前確か、田舎に病気の母親がいたよな。結構重い病気の」


「はい。母さんは俺が養わなきゃいけないんで。それは出来ない、それは無理だ。じゃあ謝る気は無いのかのを繰り返しているうちに、ヨシアさんが間に入ってくれたんですけど、なんか今日、話しているうちに急にキレて、気づけば追放ですよ。冒険者の道にもとるって、そもそもどういう道なんスかね、冒険者……」


 マーキンはグラスを煽り、中の酒を全部飲む。ギルドを追い出されたのもそうだが、マーキンはずいぶんとアントンを尊敬していた。だからこそ、辛いのだろう。

 これで事情と状況はわかったと、アルバーノは自分の考えを述べる。


「だいたい、話はわかった。とりあえず、今わかることだけ話すとだ。お前、最初ちゃんと謝ってないだろ」


「うっ」


「やっぱりな。どうせ最初、なんで避けられなかったんだぐらいのこと、言っちまったんだろ?」


「な、なんでそこまで」


「わかるのかって? 俺も昔、似たようなことやってんだよ。上手くいかなかったのは、俺じゃなくて、弱いあいつらのせいだって思っちまう。なら、素直に謝れるわけねえわな。この年まで第一線で生きてる冒険者なら、たいてい経験してるさ。俺だけじゃなくて、アントンもな」


「ギルド長が?」


「いい年こいて誰の挑戦でも受けるとか公言している奴が、その手のトラブルを起こしていないわけがないだろ。だから俺も、アントンやヨシアが本気でお前を追い出したとは思えねえんだよ」


 アルバーノはそれぞれアントンやヨシアと飲んだことがあるが、二人とも、マーキンの跳ねっ返り気味な部分も含め高く評価していた。いくらマーキンが周りと揉めてたからと言って、いきなり追放と言い出すのもなにかしっくりこない。実力主義である獅子の玉座の流儀と、微妙なズレを感じる。

 おそらく、このズレに時間を足せば、なんとか解決に向かうだろう。


「ほとぼり」


「ただいまー! 元気にしてるかな! 皆の衆!」


 ”ほとぼりが冷めるまで数日待ってから頭を下げに行けば、きっと獅子の玉座に戻れるだろう。俺もできる限りの仲裁はしてやるからさ”

 そんなアルバーノの心遣いは、勢いよく帰ってきたコーラのせいで台無しになった。コーラはずかずかと大股でアルバーノとマーキンが飲んでいる席にやって来る。


「って、痛!? つつつ、思いっきりぶつけてしまったよ」


 あまり前を見ていなかったのか、コーラは机の角に腰をぶつけて悶絶した。

 そんなコーラを見て、アルバーノは驚いたように目を見開く。


「なんだい。そんなに驚いた顔をして」


「いや、神様っているんだなあと。もしくは俺、呪いの道にでも行こうかなあと」


「召喚獣みたいな顔して、何を言ってるんだい」


 コーラは無茶苦茶な暴言を吐きつつ、アルバーノの隣、マーキンの対面に座った。


「やあ、はじめまして。わたしは冒険者の友で働くコーラという者だ。名刺はないけど、覚えておいて欲しい」


「名刺? う、うん? こちらこそ、よろしくお願いします」


 コーラの態度に呑まれ、よくわからないまま挨拶するマーキン。傍から見ていると、実に人の懐に潜るのが上手い女である。

 続いてアルバーノの目は、そんなことを考えていたアルバーノに向けられた。


「ちょっと離れているうちに、随分と老けてないかい? というかだ、眠そうだぞ?」


「あん? うーん。まあそうかもな……」


「可哀想に。どんなつらい目にあったんだか」


「おめえのせいで、人間関係のゴタゴタに巻き込まれたからじゃないか?」


 人一人のギルド追放の瞬間に立会い、更にその当事者を慰め。面白いことに付き合っていれば、体力なんてどうとでもなるとは言ったが、困ったことにこれらはまったく面白くない。


「少し寝たらどうだ? わたしはもうちょっとここにいるから、ベッドは譲るよ」


「ああそうか、ありがとうよ。って言ったら、もう俺善人じゃなくて馬鹿だぞ。ああそうか、ありがとうよ!」


 言い争っているんだかなんなんだかわからない二人に、マーキンがたずねる。


「お二人はどんな関係なんですか……?」


「知らん」


「なんなんだろうねえ」


 協力関係と言うほど確かではないし、腐れ縁と言うほど長くもない。なんとなくツルんでいる。言語化するならおそらくこれだろう。

 アルバーノはため息をついてから、立ち上がり背を伸ばす。


「じゃあ、一旦眠らせてもらうわ。せめて、占有権を主張しておかないと」


「まあ、寝ているうちにもそもそわたしが入り込むみたいな素敵イベントはないから、その辺は期待しないでくれよ?」


「言っとくが、俺の寝相は最悪だからな。野営の時、寝ぼけ眼で木を抱き潰したことぐらいはある」


「寝相の悪さが癖や愛嬌じゃなくて、殺意方面に吹っ切れてるね。ツラも合わせて熊かな? わたしは、この彼と話があるから。相手を変えて飲むのも悪くない」


「ええっ?」


 困惑するマーキン。

 初対面かつ正体不明の人間とサシで飲むのは、ちょっと勘弁して欲しい。目でアルバーノに助けを求めるものの、


「頑張れ」


 その返答は簡潔であった。アルバーノは二階にある自分が借りた部屋、コーラの存在など本来一切関係ない部屋へと戻る。俺だって、落ち込んだ人間とサシで飲むのはなかなか辛かったんだぜ? アルバーノはそんなセリフを、頭で思い浮かべていた。

 

「ところで、君は、なんでギルドを追い出されたんだい? 辛いことかもしれないが、そういうのはとにかくいろんなところで吐き出すと楽になるよ?」


 少なくとも、コーラの聞き手としての技術は悪くない。吐き出す相手としては、なかなかにいい。アルバーノはある意味安心して、悠々とベッドにその身を投げだした。


                  ◇


 疲れ果てた状態でベッドキャンセルをくらった後、一晩飲んだくれてからふらふら街を歩き、最後に面倒な人間関係に右往左往させられて。

 常人なら途中でダウン、やり遂げられるくらいの体力があっても、一度寝たら数日起きないほどの疲労である。


「ひっさびさに、よく寝たわ。本当なあ、ひっさびさに!」


 だがアルバーノは、次の日の朝、とりあえずキレちらかすぐらいには元気に起きた。疲れも酒も残っていない。冒険者を長くやるなら、常識を越えた超人でなければならないのだ。

 軽く身支度をして、アルバーノは部屋を後にする。


「アルバーノさん、おはようございます!」


 下でアルバーノを出迎えたのは、ハツラツとした様子のマーキンだった。昨日の陰鬱さがない辺り、どうやらちゃんとコーラ相手にいろいろ吐き出せたらしい。


「おう、おはよう。その格好は……」


 長いつば広の三角帽に、所々金属で補強してあるロングコート。そして背負っているのはリュックサック。マーキンの装いは、旅支度であった。

 そんなマーキンの格好を見たアルバーノは、事情を察する。


「そうだな。どうせなら、しばらく王都を離れた方がいい。あまり間を置くのもアレだが、多少の冷却期間があったほうが上手くいくからな」


 今は獅子の玉座の連中もマーキン自身も熱くなっている。おそらく、今すぐに土下座しても上手くはいかないだろう。だったら旅に出て、少し落ち着くことは悪くない。きっと一度、親元にでも帰るのだろう。

 なかなかに冷静な判断だと、アルバーノは感心した。マーキン自身が思いついたのならたいした冷静さだし、コーラが吹き込んだにしても悪くはない。


「そうそう、多少離れたほうが上手くいくのさ」


「……いたのか」


 机に突っ伏したままのコーラの存在に、アルバーノは一拍遅れて気づいた。


「ベッドがない可哀想なわたしは、こうやって寝るしかないのさ」


「気をつけろよ。マーキン。トラブルは一回起こると続けざまにくるもんだからな」


「おや、無視かい」


 コーラに構わず、マーキンを力づけるアルバーノ。

 だがマーキンの返事は、アルバーノにとって予想だにしないものだった。


「ありがとうございます! ところで、その格好でいいんですか? いや、アルバーノさんなら、素っ裸で素手でもどうにかしそうですけど」


「ん?」


 俺がいったい、何処に行くというのか。

 武器も鎧もまだ部屋にあるアルバーノは、マーキンにたずねる。


「俺、どこかに行くのか?」


「え? ついて来てくれるって聞いてたんですけど」


「俺が? お前の実家に?」


「いや、なんで実家が出てくるんですか。俺、これから仕事に行こうかと」


「仕事? 冒険者の?」


「ええ」


「一人で?」


「アルバーノさんが同行してくれるって聞いてたんですけど」


 誰に聞いたと問いかけるのは無駄である。

 アルバーノは寝たふりと思えるくらいに静かなコーラに矛先を変えた。


「何吹き込んだ」


「何って、このまま街で飲んだくれていてもしょうがないから、一狩りしてきたらどうだって言っただけだよ。だって、お母さんが病気で大変だって言うし」


「お前それ、何処で聞いたんだ?」


「本人以外に誰に聞けと?」


 思わずアルバーノはマーキンに目をやるが、マーキンに咎める様子や動揺はなかった。つまり、ちゃんとまともに聞いたということだろう。よくもこんなセンシティブな話題を、昨日会ったばかりの相手から引き出せたものだ。

 アルバーノは視線をコーラに戻す。


「確かに、ここにただ居るより、実家に帰るよりも、そっちの方がいいな。だが、冒険者としての仕事っつったって、マーキンはギルドを追い出されたばかりのほやほやだろうに。俺がフリーだってんで、仕事なんて簡単に受けられると思ってるんだろうが、それなりに手間ってもんが」


「はい。これ」


 コーラが一枚の紙をアルバーノに渡す。

 紙には仕事の内容が書かれ、発注元であるギルドの印が押されていた。


「ギルドを通せば問題はないはずだよね?」


「そ、そりゃあそうだが、これはお前、巨山の頂き経由の依頼じゃないか。どういうこった」


 獅子の玉座が王都で最も勢いのあるギルドなら、巨山の頂きは最も大きなギルドである。規模だけでなく、フリーの冒険者も積極的に雇うと、この王都の顔と言ってもいい存在だ。そのギルドの正式な依頼であれば、諸問題などすべて解決だ。

 コーラが話す。


「巨山の頂きも、他所の有望株には注目してたってことさ。マーキンの名前を出したら、快く協力してくれたよ。ああ、大丈夫大丈夫、アルバーノが関わってるってことで、フリー仕様にしてくれたから。これを受けたからと言って、マーキンが巨山の頂きに入るわけじゃない」


「そ、そうか……それならいいが」


 こう返事しつつも、アルバーノは内心驚いていた。

 この契約を結ぶにあたって、コーラはまず、フリーの冒険者が依頼を受ける時の仕組みを把握し、更に巨山の頂きにツテを作ってみせた。おそらく、マーキンが追放され、この酒場に移動する際にはぐれた時。その時に、巨山の頂きへと足を運んだのだろう。マーキンをダシに交渉できるタイミングは、ここしかない。

 そして何より、コーラは何処で巨人の頂きの規模と立場を知ったのか。冒険者の友の編集部で知ったとしても、動きが早すぎる。先程、素人ヅラしてアルバーノに各ギルドの話を聞いてきたのも、知っていてやった。その可能性だってある。もしかしたら、ずっと前、アルバーノに出会う前から、何らかの形で今のこの構図を練っていたのかもしれない。

 呑み込まれて、たまるものかよ。

 アルバーノは意地でコーラへの恐れを断つ。このままでは、自然と頭を垂れてしまいそうだ。


「わかった。俺もマーキンの仕事を手伝おう」


 これもコーラの絵図の上に思えるが、断ったらマーキンの身の安全だけでなく、巨人の頂きの顔をも潰すことになる。

 一つ目巨人サイクロップスの群れの討伐。コーラの持ってきた依頼は、内容も規模も難易度も並大抵ではなかった。これは断れないし、ソロでやらせるものではない。その分報酬も美味しいので、この依頼にのれること自体は素直にありがたい。


「ありがとうございます!」


 話がまとまったのを知り、アルバーノに一礼するマーキン。おそらく、獅子の玉座でも浮くぐらい強くなっているマーキンの実力には興味がある。それを目の当たりに出来ること自体は楽しみだ。

 ようやく顔を上げたコーラは、うんうんと頷く。


「めでたし、めでたし。丸く収まったね」


「お前はどうするんだ?」


「え? わたしは冒険者じゃないよ?」


「新進気鋭と古株による冒険譚なんて、密着取材したらいいネタになるんじゃないか?」


「あー……うーん……止めとくよ。興味はあるけど、わたしには向いてないしね。自慢じゃないが、たとえベテラン冒険者による徹底的な介護があったとしても、わたしは数時間でギブアップだ。主に健康面とやる気の問題で」


「うーむ。なんだか無理矢理にでも、首根っこ捕まえて、外に連れ出したくなってきた。逃さないつもりで」


「正論シールド発動! そのサイクロップスの退治の依頼を受ける時、一週間から10日は必要と言われたぞ。それだけの期間、王都を離れてしまっては、プレビュー発行の夢はおじゃんだ。わたしは自分の、記者としての仕事をするよ」


 アルバーノは依頼内容が書かれた紙を読み込み、現場と王都の距離やサイクロップス討伐にかかる時間をざっと暗算する。出てきた期間は、正論シールドの通りの一週間から10日間だった。


「わかる、わかるが、力づくの暴論ブレードでシールドぶっ壊してやりてえ」


「シールドを壊すほどとなると、それはもはや暴論じゃなくて、暴力だね」


 こいつには口では勝てないと諦め、アルバーノは再び自室へと戻る。いかんせん、旅に出るなら自分も準備しなくてはいけない。いくらなんだって、素手と裸一貫でサイクロップスに挑む気はない。期待されても無理だ。

 

「幸運を祈るよ」


 コーラの声が背にかけられ、アルバーノは一旦足を止める。


「そして、わたしの幸運も祈ってくれ」


 マーキンを介したやり取りでよくわかった。このホラを良しとする女は、自分とは違う視点で冒険者やギルドを眺め、情報以上の何かを生み出そうとしている。生み出された何かは、おそらくこちらの今まですら変えるほどのもので。

 この女は、いったい自分の居ないうちに何をする気だろうか。そう考えると、今のうちに殺しておいたほうがいいのでは。そんならしくない危うい考えが、アルバーノの頭をよぎった。

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