氷の大地
睦月 龍
第1話 和平同盟
また、今年も凍てつく季節がやってくる。私は17歳になる。
私の名前はイライザ・ラグナ。アイスラーン・ラグナ国王の娘、つまり姫君。私は明日、政略結婚で絵でしかみたことないハリス・シュミット王子の元に嫁ぐ。アイスラーンとシュミットは、200年もの間ずっとアイスラーンとシュミットの間にあるスワラという小国の争奪をする為争っていた。
しかし、スワラが仲裁国となり、両国に和平同盟をするように命令を出したのだ。アイスラーンお父様は、納得するまで時間がかかったが、和平同盟を結ぶにあたり、自分の娘、息子を結婚させるという条件を付けたのだ。お見合いとはこういう物なんだろうか……。
「はぁ。」
自部屋から王国の風景をバルコニーから見て、ため息をついた。
「そんなにため息ばかりついては、年を取ってしまいますよ。」
背後から落ち着いた声が聞こえて、振り向いた。
「ハリス様はどんな方なのか、気になってしまって。」
「あらあら、今更ですか?マリッジブルーってやつですか?」
お茶の用意をしながら、侍女のソフィアが苦笑いをした。
「だって、会ったこともないのに、結婚だなんて、、不可能よ。好きになるかも分からないじゃない。」
ソフィアは黙ったまま静かに笑みを浮かべていた。
「大丈夫ですよ、お嬢様。ハリス様は、お優しい誠実な人と聞いておりますよ。」
「そうじゃなくて……。」
私が口を尖らすと、ソフィアはふぅ、と息を吐いた。
「国の為なんです。言わば、お嬢様は国、アイスラーンの希望なんです。」
私は、ソフィアが懇願する様子を見て、心が傷んだ。自国の為に私が犠牲にならないといけないのは、悲しい、虚しい。自分が本当に好きになった人と一緒になれないのも。けれど、お父様の願いが叶えられるなら私は行くしかない。
私は、ソフィアが淹れてくれたアールグレイのお茶を一口飲み、落ち着いた。
「わかったわ。祈ってて。ソフィア。」
「もちろんです。イライザお嬢様が幸せになるのを心から祈っています。」
「ありがとう。」
その夜はお父様もお母様も私を盛大に祝ってくれた。街の人達がお祝いに来てくれたり、家来達も私を祝ってくれた。
「寂しくなるが、国の為だ。」
氷の大地 睦月 龍 @19880117a
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