第7話 過去と現在
それぞれが見つけた資料を持ち寄った。本が2冊『島神と祭り』、『祭りとお面について』と1990年から2000年までの新聞だ。『島神と祭り』によるとこの島には島を守る神様がおり、その神様が祀られているそうだ。祭りは1950年ごろから行われているようだが、今のような形になったのは1980年からで、それまでは神主や一部の島民だけが参加していたらしい。1980年まで行われていた祭りの詳細は不明で、記録も残っていないそうだ。
「一番知りたい部分が分からないですね。」
ヒロシが残念そうに言った。
「こっちの本には何か書いてないのかな?本っていうよりも手帳みたいだけど。」手帳には西と友という字が書かれていた。人の名前だろうか。サクラがそれを開くと、手書きでびっしりと文字が書かれていた。古いもののようで所々かけてしまっている。
1996年7月12日
故郷の島に到着。祭りまであと1ヶ月、必ず・・を見つける。
1996年7月19日
島の人はみんな親切だ。宿の主人は自分のことを覚えていてくれたようだった。
1996年7月21日
学校に行った。先生たちも元気そうだ。
1996年7月23日
聞き込みをしているが進展なし。祭りに参加したいと伝えると、宿の主人がお面を用意してくれた。
1996年7月29日
ある女性と出会った。祭りのことについて調べていることを伝えると、今の形になる前の祭りについて教えてくれた。今のように盆踊りは行われておらず、神主と他4人で行われた。ヒトガタと呼ばれる人形と、島でとれた作物を祭壇に置き、お供物としていたそうだ。1980年になると島は観光業に力を入れるようになり、祭りも今のような形になったそうだ。盆踊りが加わり、作物やを供える行事だけが残ったということだった。
1996年8月1日
祭りまであと2日となった。あと2日、必ず見つける。
1996年8月2日
宿の主人から祭りに参加するなら決してお面をとってはいけないと言われた。そんなことわかっている。
1996年8月3日
何も起こらなかった。結局、見つけることができなかった。すまない。すまない。
次のページを開くと全員の顔が強ばった。
1996年8月4日
ミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ
「おい、何だよこれ。」
ケンジは次のページをめくった。それ以降のページは鉛筆で書き殴った後がそこされていた。僕は言葉を失った。
「これは・・・」
「なんでこんなものが図書館にあるの?」
ユミは声を振るわせていた。中学生の誰かがふざけて書いたのだろうか。
「やめだやめだ!きっと趣味の悪い悪戯だろ。」
ケンジが恐怖を振り払うように声を出した。僕らはその手帳を本棚に押し込み、調べ物を続けることにした。女子の3人が探してくれた新聞を調べていると1995年の祭り当日、8月3日で手が止まった。『祭りに参加した少女が行方不明』という見出しで、読み進めていくと少女の名前は西条美由と書かれていた。ユウジがメモをとりながら言った。
「この名前・・ケンジさんがつまずいた石に書かれてた名前じゃないですか?」
チヒロが何かに気がついたようだ。
「もしかしてさっきの手帳に書かれていた子ってこの子のことじゃ。」
「ねぇ、みなさん。あの手帳に名前が書かれてましたよね。もう一度確認して見ませんか?」
マイの提案を受けて手帳をしまった棚に戻った。しかし、確かにそこにあったはずの手帳は見つからなかった。
「どうして、確かにここに置いたはずなのに。」
不安に襲われた僕らは一度、食堂に戻ることにした。行方不明の少女、謎の手帳、ただ祭りについて調べていただけなのに触れてはいけない何かに関わってしまったような気がした。
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