最終回

「まさか、私たちが政権すら倒してしまうくらい強くなってしまうなんてね。すごいことになったものだわ」

 すべてのごたごたが終わった後、わしとルイは彼女の屋敷で茶を片手に話し込んでいた。


「ブレアの潜在能力がなければ、今頃、我々は大罪人として処刑されていたかもしれないな」


「それはどうかしらね。民を守れない政府に意味はないわ。あのドラゴンの対応を誤った時から、もうあの愚王には未来はなかった。私はそう思っているけどね」


「よく言うな。ルイ、お主、わしの名前を勝手に使って、後輩たちに手紙を書いていたな。決起を促させようとして……」


「さぁ、どうですかね。私はあくまで保険をかけていただけよ。仲間たちとお父様が愛したこの街を守るために、全力を尽くしただけ。正直に言えることは、使えるものはすべて使ったということだけね」


「相変わらず、食えない上司だ」


「それはあなたもね。新政権から軍のトップとして再登板して欲しいと誘われているそうじゃない? どうして、黙っているの?」


「黙っているわけじゃない。わしのような老いぼれは、引退した方がいい。すぐに断っただけのことじゃ」


 それを聞くとルイは、心の底から嬉しそうな顔になっていた。


「じゃあ、これからも受付係を続けてくれるのね? わたしのそばで?」


「ああ、よろしく頼むよ」

 ブレアやシグルドたちに囲まれて、勝手気ままに生きるのも悪くない。


「ねぇ、ジーク。気づいている?」


「何が?」


「あなたの口調、ここに来た直後と今では全然違うのよ。ずっと、明るく若々しくなっている。まるで、妖怪ね。若者たちの生気でも吸っているのかしら?」


「ふん、お主のように人は食っておらん」


 そう言って、笑い合う。


「これからもよろしくね、ジーク」


「ああ、お互い様だ。ルイ」


 こうして、奇妙な主従関係は続くことになった。

 

 ※


『おーい、師匠。肉焼けましたよ!』


『ジークさん。今日はいっぱい食べましょう』


『そうだぞ、ジーク。王国からもらった高い酒がいっぱいあるんだ。死ぬほど飲むぞ。なぁ、皆!!』


『マスターも早く来てくださいよ~』


 ※


 ブレアとミリア、シグルド達、セシル嬢が次々とこちらに向かって声をかけてくれる。

 今日は、屋敷の中庭でバーベキューパーティーだ。


 これからずっと一緒に生きる仲間たちと共に……


「では、向かいますかな、ルイ」

 わしは、紳士的に淑女をエスコートしようと手を伸ばす。

 彼女は笑って、それを受け入れた。


 第二の人生はまだ、始まったばかりだ。



―――――

(あとがき)

これにて、完結となります!

最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m


皆様のおかげで一気に完結まで書き上げることができました。

面白かったらブックマークや感想、評価などをいただけると嬉しいです。

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