第19話愚王の大悪手

「陛下、大変です。シェーラのギルド協会に派遣したグールたちとの連絡が途絶えました」

 大臣の連絡に、思わずワイングラスを落としてしまった。


「なんだと。まさか、あの二人が裏切ったのか」


「いえ、最後の定時連絡が、ギルド協会に赴き、ジークフリートを逮捕するという連絡でしたので……おそらく、返り討ちにあったのかと」

 その推測を聞いて、怒りがふつふつとこみあげてくる。


「ほう、やはり、ジークフリートは反逆者だったか。そして、ギルド協会及びシェーラの街は、大逆人をかくまっている。これは、共犯者と判断してかまわないよな、大臣?」


「はっ、ですが、ここで一国の軍隊に匹敵するほど巨大化したシェーラギルド協会と、戦うのは得策ではないかと。下手に戦端を開けば、内乱となります」


「ならば、大臣はジークフリートの肩を持つというわけだな。国王の神聖不可侵な権力は、田舎のギルドに介入できないほど、弱いとそう思っているのか。お前たち、そこにいる大臣は、反逆者の仲間だ。やってしまえ」

 近衛騎士団員は、指示に従って、大臣に向かって槍を突き、串刺しにした。


「なぁ」

 大臣は、悲鳴すらあげることができずに、倒れ込む。


「皆の者、よく見ておけ。裏切り者はこういう末路をたどるのだ。国王の力に歯向かうことは、すなわち死を意味する」


 床に転がった雑巾のような大臣は、苦しそうにつぶやく。


「まさか、ここまでバカな王だとは思わな……かった。優秀な部下を、遠ざけて、なにもできない裸の王に、未来などない。ぐふっ……」


 念のため、こときれた大臣には、騎士団がとどめの槍を突き刺した。


「ここまで、こけにされたからには、戦争しかあるまい。新・騎士団長、ギルド協会と我が軍の戦力差はどれくらいある?」


「おそらく、敵は200から300くらいでしょう。それに対して、我が軍は総動員令をかけなくてもすぐに1万以上の兵を動かすことが可能です。いくら、精鋭が集まった冒険者と言えども、プロの戦争集団には多勢に無勢。すぐに、ギルドマスターとジークフリートの首を陛下の前に持ってくることができます」


「うむ、であろう。ならば、ここは余と共に出陣じゃ。勝ち戦になる。ここで功績を上げれば、出世の道は約束されたも同然だ」

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