第9話無能な暴君
「陛下、シェーラの街のギルドマスターから、また報告が上がっております」
またか、あの女は、なぜこうも口うるさいんだ? ジークフリートを失脚させたように、あの女も粛清したいが、残念なことにギルド協会は、国王権力の外にいる。よって、こちらからは手出しができない。
「どうせ、また、モンスターの出現法則に異変がある。なにか、良くないことが起きるかもしれないから、兵を援軍で出してくれとか、そんな話だろうよ」
「はい、まさにそれです」
まったく、あの女はそればかりだ。
「無視だ、無視。そんなことは、100年に1回あるかないかだろう。たまたま、強いモンスターが流れてくることはよくある。あそこのギルドは、弱小だろう? 雑魚冒険者が、鳥をドラゴンとか見間違えることもよくある。そんなことに、城の兵を割くことはできない。無視だ、無視。黙殺しろ。我に余剰戦力なし。今後は、あの女の報告は、上げるではないぞ。守らなければ、処罰する」
せっかく、うまいワインを飲んでいたのに、味がまずくなる。
「それから、脱走兵についてですが……」
「また、それか。うまい酒がまずくなるぞ。もうよい。捕まえた脱走兵を適当に選んで拷問し、公開処刑にしろ」
「はっ!?」
「なんだ、お前が拷問されたいのか? なるべく、残酷な方法で処刑しろよ。その方が、見せしめになる」
「しかし、本来の法であれば、軍法会議にかけられた後ですが……さらに、拷問は禁止されて……」
「私が法律だ。その法は、過去の王が作ったものだろう? なぜ、私がそれに縛られなくてはいけないんだ?」
「……かしこまりました」
「わかれば、よろしい。それから、街で評判の美女を選別して、側室にする。大臣、準備を整えておけよ」
「はっ!!」
やっと、楽しくなってきたな。今までは、ジークフリートをはじめとする真面目な老害ばかりだった。奴らを失脚させて、やっと自由の身になれた。ここからは、国の最高権力者として、自由にやらせてもらう。
「皆の者、おぼえておけ。私が法律であり、私が国家だ。それを脅かすものは、何人たりとも、極刑に値する」
新しい法律を一つ作り出して、仕事をしたので、あとはワインと女に溺れる夜にする。
ああ、最高の人生だ。
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