第482話

「は、はい大丈夫です。ごめんなさい、前を見てなかったせいで…」


「別に怒ってないから、そんなに怖がらなくて良いよ…と言ってもよそ者で人間である俺の言葉なんか信用出来ないか…」


仕方無いとは言え、十歳いかないぐらいの見た目の子に此処まで怖がられるのは流石にくるものがある。


立たせてあげるのに手を差し出しただけで、凄い怖がられようだったから立たせて上げる事も出来ないし。


この場合。下手に何かしようとせずに離れるのが正解か…


「そっその…服が…」


「ん?あぁ、団子がベッチョリついてるって話?このぐらい直ぐにキレイに出来るし。

あぁ、でも折角買ったものを俺が駄目にしちゃったって事だよな…」


みたらし団子だけを燃やしてキレイに出来るし


元々、服は魔力で作った物だから、どこか適当なところで一回解除してもう一度作り直せば良いだけだしな。


「い、いや…そういう事を言いたいんじゃなくて…」


「お金、今持って無いんだよな…」


換金、する間もなくこうなっちゃってるからな。


侍の死体を漁れば幾らか手に入るかもしれないけど。


こんな道の真ん中で、死体を出すわけにはいかないからな。


「そうなると、お金以外の物…宝石が全く価値が無いって事はないだろう」


この世界だと宝石は普通の石みたいにそこら辺にいくらでも転がっていて、大した価値のない物って可能性もゼロじゃないけど…


0.1ctの宝石を見ただけで俺に向けられる。

『人間は信用できない。子供に何かしたら許さない』という純粋な殺意に混じって


『アイツを殺ればアレと同じものが手に入るかも知れない』という邪な殺意が混じり始めたからな。


宝石が無価値のものって事はないだろう。


寧ろ、地球より価値があるまであるかもな。


宝石が普通に価値のある物だった場合。

団子の料金にしては高いのは分かりきっていたから、0.1ctという小さめのサイズのものを渡したんだけど…


ちょっと言い方が悪いけど0.1ct程度の宝石を一粒見た程度で出す殺気じゃ無いんだよな。


宝石の種類にもよるかも知れないけど…

普通のダイヤモンドだし。

これが数十ctものだったら分からなくも無いけど。


ダンジョンで手に入るからって俺の感覚が麻痺してるだけ?


まぁ、どちらでも良いか。


グダグダ言ったけど。もし、0.1ctのダイヤモンドが団子すら買えないような価値しかなかったらミニ地球ちゃんから、それを伝えられるだろうし。

無かったって事はそれは無いって事だろう。


「それじゃ、もしまた機会があったら会おう。バイバイ」


少し強引に行くぐらいじゃないとこういったときの会話はいつまで経っても進まないし。

面倒になってきたので、もうこの場を離れることにする。


もしかしたら、あの子は宝石を置いていくかもしれないけど。

その時はその時、気にする必要はない。


それに少し離れたところから、この騒ぎを監視しているやつもいる。

逃げられる前に接触しとかないとな。



というわけで早足でその場を離れて、監視している人物がいる方向に向かって移動する。


「初めての場所で、人を捕まえるって無理ゲーだな。少なくとも正攻法では」


想像以上に裏路地は入り組んでいるし。

歩いてさっきの騒ぎを監視していた人物の不可能ということで、炎を纏透明になって空を飛んで例の人物と直接接触する。


「はじめまして、この町の事色々教えて貰いたくて声かけたんですけど…って逃すわけ無いでしょ?」


気付かれ無い用に透明のまま真後ろに立って

声をかけてから姿を現したんだけど。

流石におふざけが過ぎたかな。


瞬時に臨戦態勢に入って俺から距離をとろうとする。男を炎の鎖で拘束する。


「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ。俺は純粋に話が聞きたいんですよ。この町、色々複雑そうだし」


この忍者?でいいのかな?全身黒ずくめのいかにも忍びの戦闘服っぽい服を着ているからそうだとは思うけど。

(町中でその格好逆に目立たないか?)


この忍者。俺やソフィアを監視していたというよりは獣人達を監視していた感じなんだよな。


この町を少ししか歩いてないから、この結論は早いかもしれないけど。

獣人達のほうが多い気がするんだよね。


龍信仰のおかげで、ウルティマ聖教が全く浸透していないから色んな場所から獣人達が集まってきてる結果なんだろうけど。


この町は元々龍信仰をする人たちの町なのに

人口的に獣人の方が多くなってしまった。

この予想が間違って無かった場合。問題が起きてないわけが無い。


しかも。ウルティマ聖教のせいで人間に対して強い不信感を持つ獣人だって少なくないオマケつき。


最初は自分達を受け入れてくれたこの町の人間達に感謝する獣人も多かっただろうけど。

ある程度、獣人の人口が増えてからこの町に来た獣人が感謝するのは自分より先にここに来た獣人になるだろうし…


この町を治める大名は受け入れ制限とかしなかったのかね?


それはそれで、獣人達と戦争になりかねないか…


ウルティマ聖教と龍信仰が盛んなこの町、どちらのほうが勢力として大きいかとなった場合。


前者の方が規模は確実に大きいだろうし。

抵抗するための戦力として獣人は重要って考えもありそうだし。


まぁ、大名を無能判定するのは早計すぎるな。


ってなわけで、そういった話に詳しそうな忍者に生の話を聞きたいわけだ。



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読んでいただきありがとうございます。

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