第473話
「チッ、攻撃を反射する鏡か絶炎も当然のように跳ね返して来るとか面倒だな」
挨拶がわりに一番力を出せる姿である。人間サイズの龍状態に姿を変え絶炎を使った熱線ビームで攻撃してみたが。俺とテスカトリポカの間に鏡が出現し、熱線ビームをいとも容易く跳ね返してきた。
跳ね返された事で威力や速度が上がると言った事は無いようだが。
熱線を跳ね返した鏡には傷一つ付いていない。
熱線で鏡を破壊するのは無理だろう……
なら手数で攻めるのは?
攻撃を跳ね返す事が出来る鏡には出現数に限りが有るかも知れない。
一瞬にして何百何千の熱線を作り出して多角的にテスカトリポカを攻撃する。
テスカトリポカは顔色1つ変えず全ての熱線を俺に向かって正確に反射してきた。
手数も意味無しっと……
情報が無い格上相手に接近戦なんてしたくないんだけどな……
理外の形態を変化させて自分の爪にコーティングする。
龍の姿になっているんなら、この方が龍の爪を活かして戦える。
「それにしても、ケツァルコアトルにあんな方法を使うヤツだ、テッキリこの場から離れるソフィアに何か仕掛けて来ると思ってたけど。想像以上にお行儀が良いんだな」
思った以上に向こうから攻撃して来ないので、接近戦を仕掛ける前に話しかけて時間稼ぎを試みる事にする。
冷静に考えて見たらテスカトリポカを俺が倒す必要ないことに気づいた。
適当に時間を稼げば強力な援軍が助けに来てくれるだろう。
「あの女は貴様の『弱点』で有るのは間違いないが同時に『枷』でもある。わざわざ『枷』を外す必要無いだろう」
枷ねぇ……ソフィアがいるから俺が弱いみたいな言い方されるのはムカつく。
理外をコーティングした事で更に強化された龍の爪に絶炎を纏わせて、テスカトリポカに向かって振り下ろす。
まだまだ距離が有るから、傍から見たら素振りでもしてるの?って感じだろうけど。
理外をコーティングしているんだから当然、理外の能力を使える。
次の瞬間テスカトリポカは鏡ごと細切れになり地面に散らばる。
あの程度で、くたばるようならこんなに警戒なんてしないんだよな。
最大限警戒しつつ追撃を入れようとした瞬間。
細切れになったテスカトリポカを燃やし続ける絶炎が消えたかと思ったら。
黒い霧がテスカトリポカの細切れから勢い良く噴き出し周囲を覆い尽くした。
冗談じゃない。視界が悪くなったのは当然として魔力の感知も出来なくなっている。
「それに、この霧はテスカトリポカが『生み出した物』じゃなくて、テスカトリポカ『自身』」
今の状況はテスカトリポカの胃袋の中にいるようなものだ。
出来るか微妙なところだけど。絶炎で燃やし尽くすしかないか……
「やはり。大分弱体化しているな……我の現状の把握は十分だな。もう死んでいいぞ」
テスカトリポカが、そう行った瞬間胸部に痛みを感じる。
警戒はしてたんだけどな……
視線を下に下ろすと黒い霧が纏っている絶炎事俺の事を貫いていた。
全身を纏っていた絶炎が消えて膝から地面に崩れ落ちる。
当然のように、傷を治そうとしても治せない。
と言うか全ての能力が使用不可になった感じ?
流石にこれは詰んだ。
もう指の先を動かすことすら出来ないし。
胸を貫かれた程度だったら治せなかったとしても少しの間は動けるし戦えるはずなんだけどな……
これじゃ自爆覚悟の特攻とかも仕掛けられないや。
「ギリギリだったが。何とか間に合ったか。すまん。テスカトリポカに追放された時に南米の地に再び足を踏み入れる事を禁じる類の呪いもかけられてしまってな。日本の神々の力を借りて何とか駆けつける事が出来た」
「いや、本当に助かった。今回に関してはまじでもうダメかと思った」
まじでギリギリのタイミングで現れたケツァルコアトルによって傷が塞がり能力も使えるようになった。
「とりあえずやられた分倍にして返してやるよ」
本来この場に現れる筈のないケツァルコアトルの登場にテスカトリポカが動揺した瞬間に
スピリチュアルワールドを発動させてテスカトリポカを擬似世界に引きずり込む。
本来は格上相手を強制的に擬似世界に引きずり込むのは無理ゲーなんだけど。
ほとんど力を失っている状態とは言えケツァルコアトルが目の前に現れたというのが、それ程想定外で、動揺していたって事だろう。
すんなり引きずり込む事が出来た。
それに加えて俺に火事場の馬鹿力的なのが発動していたってのも、もしかしたらあるかもしれないな。
まぁ、理由を考えるのは後でいいや。
今最も重要なのはテスカトリポカを擬似世界に引きずり込む事に成功したと言う1点。
擬似世界は何秒も維持する事出来ないし。
自由にさせると擬似世界の中であっても何をされるか想像できない。
テスカトリポカの存在を抹消してスピリチュアルワールドを解除する。
「ケツァルコアトル。これでテスカトリポカを倒せたと思う?」
「この場にいたテスカトリポカに関してはな」
やっぱりそうか。万が一に備えていくつも保険を用意してそうなヤツだったもんなテスカトリポカ。
まぁ、今は撃退できただけ良かったと思う事にしよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでいただきありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます