第451話
「えっもう終わったの?」
「はい。と言っても1晩丸々かかってしまいましたが」
稲荷狐達にクラウドホエールの解体を頼んだ次の日。朝から稲荷狐が1人訪ねて来たからなんかあったのかなと思ったら、解体が終了したと言う報告だった。
頼んで正解だったな。
早速解体されたクラウドホエールを回収しに桃源郷に向かう。
「よろしければ。宴会に持参される分を私たちが事前に届けておく事も出来ますがどういたしますか?」
俺から直接渡した方がいい気もするけど、調理が必要な食材は事前に渡しといて貰った方がいいか。
「それじゃ。お願いしてもいいですか?」
「おまかせください。それと巨大イカの解体も開始させて頂ければと思うのですが…」
「休憩しなくていいの?休み無しで解体してくれたんでしょ?」
既に10時間ちょっとぶっ続けで解体しているはずなのに、また同じくらい時間がかかるであろうクラーケンの解体をさせるのはちょっとどうなの?って思っちゃうけど。
「しっかりローテーションを組んで休憩しながら作業をしているので問題ありません。休憩中に龍酒が飲み放題ですし」
あんた達も酒が目当てか……
「いやまぁ、しっかり休んでるんなら良いけど。お酒飲みすぎるとリーリンさんに怒られるよ?」
酒は無限に湧き出ているけど。それは龍酒ではなく普通の日本酒。日本酒の池に投げ入れた炎の結晶から放出される魔力が日本酒に馴染むことで龍酒(日本酒)になる。
なので日本酒が龍酒になる速度以上の速さで消費すると、どんどん龍酒の完成度が落ちてしまう。
そんな事になったらリーリンさんブチ切れ案件だ。
「ご安心ください。我々が米を醸造して作った清酒…まぁ日本酒ですね。それを料金としてお渡しすることで既に話はついています」
それなら問題ないか……
と言うか日本酒と日本酒を交換しているってこと?
意味無くない?
銘柄とかで味は変わるだろうから意味無いって事は無いか……飲んだことないからそこら辺よく分からないけど。
他の飲み物だってメーカー事に味が違うでしょ?って考えれば納得出来るな。
「なら良いや。それじゃクラーケンの解体とクラウドホエールの肉を出雲大社に届けるのお願いします」
この後、急いで神の宴会に持っていかない分のクラウドホエールの素材をディメンションルーム内のマジックボックスに収納して遅刻ギリギリの時間でクラスの教室に転移した。
「薬物乱用防止教室か…すっかり忘れてたけど確かにそんな行事が有るよって言われてた気がする」
簡単に言ってしまえば警察の人が来てくれて薬物は危ないんだよ〜って詳しく説明してくれる行事だ。
小学校、中学校でも何回かあった記憶がある。
それにしても個人的にはテストが終わった後にあるイメージだったけど。テスト前にやるんだね。
ファンタジーアップデートのせいで色々な日程を変更しなくちゃいけなくなったからそのせいかな。
「で、なんで俺がこちら側に?」
「ダンジョン内で入手できてしまう薬物と同等か、それ以上に危険な採集物やドロップ品について話すなら進藤隊長以上が一番適任でしょう?」
薬物乱用防止教室を受ける為に体育館に移動してたと思ったら何故か俺が話をする事になっていた。
まじでなんで?
「で、実際は?」
「いや、進藤隊長がいるなら巻き込んじゃう方が良いかなって」
まぁ、こいつが俺の事を隊長呼びするのはSCSFの隊員募集に応募して珍しいスキルを持っている事から採用。
才能もあって普通の人間として考えるならかなりの戦闘力を持っていると言うことで、イキっていたところ。
俺が隊長を務める臨時の訓練部隊に配属。
外部講師として招待したリーリンさんと共に扱いてやったからだ。
こいつは臨時の訓練部隊が解散したあとも俺の事を隊長呼びしてくる。
「俺は現状、完全にSCSF所属じゃないのにこんな事したら本部に帰った後怒られると思うよ」
事前に薬物乱用防止教室で少しお話をお願いしたいんですけど。って要請があったなら話は別だけど。当日本番直前にお願い?なんて俺が怒らなくても、SCSF本部に帰った後確実に怒られるだろう。
「確かに……クッ進藤隊長と仲が良いアピールしてJKから持て囃されよう作戦が……」
イケメンなんだから普通にしてればモテると思うんだけど……
そういう事するから毎回失敗するんだと思うよ?
個人的にはなんか憎めない感じで男友達としては面白くていいと思う。
「クラスの女子にお前の事質問されたら『冒険者育成プログラムの初級で教官してるみたいだよ』って伝えて上げるからやる気出して」
「ほんとですか!薬物乱用防止教室全力でやらせていただきます」
ほんと現金なヤツだ。
おさがわせして申し訳ございません。と警察官の方に謝ってから体育館の舞台の袖から自分のクラスの列に戻った。
ちなみに、例のヤツは薬物乱用防止教室を全力でやりすぎて空回り、何故か俺が前に出て詳しい補足をするはめに……
当然、薬物乱用防止教室後に『進藤くん!あのイケメンSCSF隊員さんと知り合いなの?そうなら紹介してよ』みたいな事を聞いてくるクラスの女子は一人もいなかった。
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