第447話
「あれが話に聞いた港街かな……」
な〜んか活気が少ないのが微妙に気になるけど。ここまで来たら引き返す訳には行かない。
少し離れたところに着陸して歩いて街の入口に向かう。
「初めて見る服装だが。冒険者か?」
日本の服装で堂々と行動するのは避けるべきだったか。
初めて見る服装だし。1人で移動してきたにしては武器どころか荷物をほとんど持っていないし。
そもそも歩いてきたにしては靴が綺麗すぎる怪しい人物判定されてしまった。
認識阻害の魔導具を使っておけば良かったな。
「最近なったばかりですけどね。はいこれ」
こっちの世界の冒険者ギルドが発行するカードを門番に見せる。
「……本当に冒険者のようだな。入ってよし。だが街で怪しい行動をしたらすぐに捕縛するからな」
チグハグな部分が多すぎて怪しまれてしまったようだけど。
街の中に入れたからOK。ただ海産物を買いに来ただけだし。買ったら直ぐにこの街を出ていくから、怪しまれようが問題ない。
「うーん。人が少ないし。すれ違う人全員暗い表情をしているな」
新鮮な海産物を販売している市場に向かって街を歩いていると。
歩いている人が少ないし、歩いている人の表情が全員決まって暗い表情をしている。
確実になにかこの街で異変が起きている。
俺はただ海産物を買って帰りたかっただけなんだけど……
まぁ、関わらないってのは無理そうだよね。
でも先ずはここに来た目的を達成してからだな。この街の問題に首突っ込むのはと市場に到着したのだが。
港街の海産物を取り扱う市場なのに生物は一切販売されておらず。
干物等といった日持ちする加工品しか販売していない……
確かにもう十二時を過ぎていて市場に来るには遅い時間かもしれないけど。
港町の市場で生物が販売されてないってのは少しおかしくないか?
業者専用の市場だったら有り得なくもないけど。一般人にも普通に販売する市場だからな。
「ちょっと失礼。店主さん。鮮魚を買ったりは出来ないの?」
「兄ちゃんは今日来たのか?今は沖でクラーケンが出現したせいで船を出すことが出来ないから。鮮魚を売る事が出来ないんだよ」
「なる程……クラーケンが……教えていただき有難うございます」
教えて貰ったお礼も兼ねて美味しそうだなと思った魚の干物を幾つか買って市場を後にして港に向かって歩き出した。
「あれメナージュさんじゃん久しぶり」
「久しぶりだなエイジ。まさかこのタイミングで再開することになるとは。この街のおかれている状況は知っているか?」
「クラーケンが沖に現れちゃったせいで漁が出来なくなってる話なら聞いたけど?」
「まぁ、漁だけじゃなくて貿易船の運航にも支障が出ている。このまま居座られ続けると。他の街でも物流に問題が出てくる」
「それで、メナージュさんはそうなる前にクラーケンを討伐しに来たって事ですか?」
「いや、討伐しないといけないとは思っているが。久しぶりに国に帰る為の船に乗ろうと訪れたから今ここにいるのは偶然だ」
「でも、討伐しに行くんでしょ?」
「討伐しないと船が出ないからな。と言ってもクラーケンを倒せるかは多少運が絡んでくるため、戦力を掻き集めていたところだが…」
「じゃ。俺が1人で倒して来ちゃっても問題ないですね?折角ここまで来たのに新鮮な海産物が全く手に入らなかったから丁度良いと思ってたんですよ」
「クラーケンを海産物扱いか……クラーケンは海中深くに潜み、触腕だけを海上に出して攻撃してくる。海中不覚に潜む本体に直接ダメージを与える方法かクラーケンの本体を海面付近まで誘き寄せる方法。どちらかの方法を実行出来ないと討伐は難しいと言われているが。本当に1人で討伐出来ると?」
なるほどね。本体ごとザバーンって海面に出てきてくれるタイプじゃなくて。
本体は出来るだけ安全なところにいて、触腕だけを使って攻撃してくるタイプのクラーケンか。
まぁ、どっちのタイプでも俺からしたら関係ない。
普通にクラーケンの本体が潜んでいる海中深くに潜る事だって出来るし、それ以外にも倒し方は沢山ある。
「当然。クラーケンごときに苦戦するようなヤワな鍛え方はしていない」
「そういう事なら。私たちはクラーケンが討伐されるのをここで待機している」
ぶっちゃけメナージュさんになんと言われようと1人で討伐しに行くつもりだったけど。
楽に話が進んでくれて良かった。
メナージュさんはクラーケンを討伐する為の戦力を集めていた訳だから、クラーケンを俺が独り占めしちゃうと戦力を集めるのにお金が全て無駄になる訳だし。なにか言われるかもと思ったんだけどな。
まぁ、あっさり引き下がってくれたし。倒したら触腕の一本ぐらいは上げても良いかな。
クラーケンなんだから触腕一本でも相当なサイズだろうし。触腕一本だけでも費用の回収どころかかなりの利益が出るだろう。
それにしても。この世界のクラーケンはイカとタコどっちモチーフなんだろうな?
それによって食べられる料理が変わる。
ある意味一番重要なところだよな。
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