第446話
「やっぱり。簡単には見つからないよな」
どこにいるのか詳しく判明していないクラウドホエールを簡単に見つける事が出来る訳も無く。兎に角、雲が多い方に飛んで探し回っているけど一向に遭遇する事が出来ない。
「クラウドホエール以外に食材になりそうな魔物にも遭遇しないし」
なんなら魔物より盗賊の方が遭遇率が高い。
人が盗賊に襲われているのを見ちゃったら無視する訳にはいかないとは言えその後の助けた人との会話に時間がまぁかかること。
食料をメインに販売している商人はお礼に珍しい食材をくれたりしたから、それに関しては嬉しい誤算だったかな。
コカトリスの無精卵だって言ってたけど。
どんな味がするんだろうな。
コカトリスは尻尾が蛇の雄鶏といった姿をしている魔物だ。
毒ブレスを使ってきたり、嘴には触れたものを石化させる効果があったり。中々厄介な能力を持った魔物だ。
ちなみにコカトリスの無精卵はサイズはダチョウの卵サイズ。蛇の卵みたいに細長くて、殻が柔らかい。
卵が鳥類じゃなくて蛇の卵っぽいってことは、コカトリスって実は尻尾の蛇の方が本体だったりする?
直接遭遇した時に確かめてみるしかないか。
後はマンドラゴラの種か。
引っこ抜くと生物を即死させる事もある鳴き声をあげる定番のファンタジー植物だ。
果たして食材として使えるのかは未知数だけど。ポーションの素材にはなるだろうし。
持ち帰ってフィロに育てて貰うつもりだ。
まぁ、薬膳料理とかに使えないかな?と個人的には考えている。
料理やポーションの素材に使うにしても育てて増やしてからの話なので、帰って直ぐに使える訳じゃ無いのが残念だ。
神々の宴会には確実に間に合わないからな。
「おっ?雲の柱?」
ヴォォォーと重低音の大きな鳴き声とモクモクと立ち上る雲の柱。
クラウドホエールはしおふきでは無く雲を吹きだすらしい。
「逃がす訳には行かないよね!」
クラウドホエールが泳いでいる雲の中に突っ込む。
すると狙っていたかのように俺に向かって幾つもの電撃が襲いかかってくる。
被弾してもダメージをもらう事はなさそうなので電撃はガン無視でどんどん雲の中心に向かって飛んでいくと。
真っ白なシロナガスクジラが現れた。
あれがクラウドホエールだな。
電撃や氷の塊を俺に向かって飛ばして攻撃してくるけど。どれも避けなくてもダメージをもらうような威力はないので、特に避けたりせずそのままクラウドホエールに接近、炎を纏った手で手刀を放ち頭部を切り落とした。
「考え無しに倒しちゃったけど。これそのままじゃマジックバッグに収納できないし。ディメンションルームの中に入れる事も出来ないサイズだからマジックボックスを利用する事も出来ない……」
クラウドホエールは全長30以上ある大型の魔物。
体重も200tは超えているはず。
マジックバッグの重量制限を余裕で超過している。
ディメンションルーム内のマジックボックスなら重量の問題は解決だけど。
このサイズの魔物を解体せずにディメンションルーム内に運び込むのが無理だからな。
このままクラウドホエールを直に持って帰るしかないか。
現状はクラウドホエールの死骸が地面に墜落して行かないように炎で作った鎖で鎖を巻き付けそれを俺が直接持っている感じなので。
このまま俺が直接持っていくしかないか。
切り口を火で焼いてるから直接持って帰っても辺りに血をばら撒きながらなんて事にはならないし。
「あっ!そう言えば」
まさに今が使い時という性能をしている魔導具について思い出したので、マジックバッグから取り出す。
「げ。完全に切断しちゃったから頭部と体部分は別扱いか。まぁ、めっちゃデカかったクラウドホエールがガチャガチャのカプセルふたつに収まっているんだからこれでも十分か」
ディメンションカプセルはサイズや重さ関係なしに1つだけ物を収納できるガチャガチャのカプセルそっくりの収納系魔導具だ。
中に物が入っているディメンションカプセルはマジックバッグやマジックボックスに収納出来ないと言うデメリットはあるけど。
今回みたいな激デカ激重な物を収納するには便利な魔導具だ。
「そう言えば。もう正午すぎてる……やっちまったな……」
クラウドホエール探しに必死になりすぎてガッツリ学校をサボってしまった。
「あっそう言えば。祝日だったっけ?」
祝日とかもう全然把握出来てないけど。
確かそうだった気がする。スマホのカレンダーで確認してみるとやっぱり祝日だった。
そう言う事なら今日一日こっちの世界で食材集めするか。
マジックバッグから普通のショルダーバッグを取り出し。そこにクラウドホエールを収納したディメンションカプセルを仕舞う。
「確かここから一番近い街は港街だって話だったな」
集めている食材が水産物ばかりだけど。
それはそれでありだろう。
港街なら新鮮で珍しい海産物が売っているかもしれないし買いに行ってみよう。
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