第444話
「煩いですよ佐原さん。事前に連絡があったでしょう。騒いでしまって申し訳ございません。映司さん」
「お気になさらず。因みにそちらの女性は?」
さっきから俺にワイバーンちゃんが『あの人悪い人じゃないってのは分かるけど。鬱陶しいからいや』って言ってるんだけど。
「彼女は佐原麻衣。SCSF隊員一の動物好きです」
「映司様。この部屋をこのように改装したのは彼女です」
なるほど、色々理解した。
佐原さんはトラウマを抱えたワイバーンの赤ちゃんたちが善人と認める程全力で色々してくれてる人なわけだ。
それこそ、ワイバーンちゃんが鬱陶しいと感じるレベルで。
挨拶するためにワイバーンちゃんを膝の上からどけようとしたら、佐原さんからまったがかかった。
「いやいや、わざわざ私に挨拶する為にシェリルちゃんを膝から下ろす必要ないですよ!全然座ったままで大丈夫です」
挨拶はしっかりした方がいいと思うけど……
ワイバーンちゃんを膝から下ろして立ち上がったら逆に文句を言われそうなので、座ったまま挨拶をする。
「それじゃ座ったままで失礼します。
私は進藤 映司。よろしくお願いします佐原さん」
「……それにしてもシェリルって呼ばれているんだね?」
撫でながらワイバーンちゃんに話しかける。
すると『アイツが勝手にそう呼んでいるだけ、私はシェリルじゃない』と返事が帰ってきた。
まぁ、信頼してない相手につけられた名前を自分の名前と認めないのは当然か。
それにしても佐原さんはワイバーンの赤ちゃん達の個体識別できてるのか。
見た目だけで個体判別するのは結構難易度高いと思うんだけど……
SCSF隊員一の動物好きと紹介されるだけはあるな。
「そうです!どうしてこの子達に名前を付けて上げないんですか?可愛そうです」
佐原さんも自分のつけた名前を認められてないと理解はしているらしい。
だとしても名前が無いのは可哀想だと言うことで、あえて自分のつけた名前で呼び続けているのか。
なるほどね。ワイバーンちゃんが善人だけど鬱陶しいって言うわけだ。
「確かに。名前が無いってのは可哀想だと俺も思いますけど。俺が名前を付けるならここで育てる必要無いですからね」
俺が名前を付けるなら眷族として向かい入れて家に連れ帰って育てている。
そうしないのは、河村さんとの交渉があるからってのもあるけど。
人間と龍(現在は悪魔も)が混ざったような生き物な俺としては、リュウと仲良くしてくれる人が沢山いてくれる方が嬉しいと言う思いもあるからだ。
「と言う訳で。是非、あなた達SCSF隊員の方が名前を付けて上げて下さい。時間はかかってしまうかもしれませんけどね」
まぁ、でもワイバーンちゃんがシェリルと自ら名乗り始めるのは意外とすぐかもね。
ワイバーンちゃんは佐原さんの事を鬱陶しがってはいるけど。自分に危害を与えるとは微塵も思っていない。
鬱陶しいと思うほど自分たちの事を考えてくれる佐原さんの行動に裏はないと信用している訳だ。ワイバーンちゃんは。
「そう言う事ですか……なら!一日でも早く認めて貰えるように頑張ります。シェリルちゃーんご飯だよーこっちにおいでー」
「ほら、呼ばれてるよ?行かなくていいの?」
ワイバーンちゃんが佐原さんの事をまだ警戒しているように見せているのは。
佐原さんの事を鬱陶しいと思っているからってのも有るだろうけど。
私は数日でおちるようなチョロいワイバーンじゃないんだからね!と言う彼女のプライドが邪魔をしているからな気がしたので、俺が一声かけてあげる。
すると想像通り『え、映司様がそう言うならシカタナイナ〜』的な事を言いながら佐原さんの方に飛んで行き。
毒味も待たずに佐原さんの持ってきた物を食べた。
「は、はわわ。私から直接……」
佐原さんは唐突過ぎて硬直しているけど。
自分の持ってきた食事を自分から直接食べて貰えて物凄く嬉しそうだ。
それにしても何となくワイバーンちゃんからツンデレの波動を感じる……
ツンデレワイバーン……一部で熱狂的なファンが生まれそう。
「あっちは放置でいいでしょう。大瀬崎さん残りの子にご飯をあげましょう」
「そ、そうですね。因みに……」
「あっ、別に俺が強制した訳じゃ無いですからね?ワイバーンとしてのプライド?的なのが邪魔していたみたいなので、言い訳できるようにきっかけは用意してあげましたけど」
ワイバーンちゃんに聞かれると照れて佐原さんから離れていってしまいそうなので、小声で大瀬崎さんと会話する。
「そうだったんですね。佐原さんはワイバーンの赤ちゃんたちを保護した日からどうにかしようとずっと必死でしたからね。佐原さんが嬉しそうな顔を見れて良かったです。映司さんありがとうございます」
大瀬崎さん実は佐原さんに惚れてたりする?
とちょっと思ったけど。
現段階で茶化すのはやめておこう。
ワイバーンの赤ちゃん達が自分たちのご飯はまだ?って言ってるし。
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読んでいただきありがとうございます。
新作初めてみました。「運良く手にした聖獣の力で文明崩壊した地球で生き残ります 」https://kakuyomu.jp/works/16817330658238688745
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