第443話

「そう言う事なら仕方ないか」


リンゴは赤ちゃんと言えどワイバーン。

最低限の戦う力は持っている訳だし。

何より、雷太が無理やりリンゴのことを戦わせているのではなくリンゴの方から強く望んでやっている事だってのは。リンゴのやる気を見れば一目瞭然。


ここで俺が止めろと言おうものなら俺が悪者だし。言ったところで止めないだろうからな。


「でも!!始める前に俺に伝えに来なかったところは減点。次からは事前に話に来ること」


「はいっす!ところでなんのようっすか?」


そう言えば、どこにいるか聞いたらダンジョンでリンゴの魔物と戦闘する実戦形式の戦闘訓練をしているって言われて急いで来たから

こっちの要件を伝えてなかったな。


「SCSFが保護したワイバーンお赤ちゃん達に会いに行くからリンゴと雷太も連れていこうかなと思ってね」


「なるほど。そう言うことなら今日の特訓はここまでっすね」


「いや、一回リンゴが戦っているところを見せて貰ってからにしようかな」


リンゴを預かる際の責任者なのにそこら辺把握してないのは宜しくないからね。


リンゴが魔物と戦うところを見せてもらう為に植物系の魔物が出現する生垣迷路に向かった。


「久しぶりにここに来たな」


交差点ダンジョンには良く来るけど闘技場しか利用しないから、本筋の方に来るのは久しぶりだ。


この生垣迷路自体も魔物なんだよな。

だからこそ頻繁に正解の通路が変更されて、迷路としての難易度も高い。


ただ迷路を脱出すれば良いだけじゃなくて先の城に入るために必要な鍵まで見つけなきゃ行けないからタチが悪い。


まぁ、今回は雷太がいるし。そもそも迷路を攻略する必要がないので生垣迷路の何度の心配をする必要ない。


「戦闘訓練って言うから、もっとギリギリの戦闘をさせてるのかと思ったよ」


リンゴが、ただ炎を広範囲に吐き出す。いちばん単純な炎ブレス攻撃で植物系の魔物をどんどん倒して行く光景を見て安心して、そう呟く。


「先ずは、弱点をつけて格下との戦闘でレベルを上げる、当然っす。俺は、どこかの鬼畜仙人とは違うっす」


俺は戦闘訓練と言われると全力を出せばギリギリ勝てるぐらいの相手と戦う訓練だと思っちゃうからほんとに安心した。

雷太にはこのまま無理のない相手と戦わせる方法でリンゴのことを鍛えてあげて欲しい。


それはそうと雷太さんや、そんな事言ってると。その鬼畜仙人に後でボコられるぞ?

巻き込まれたくないからスルーするけど。


「雷太なら無理させることもないだろうって安心する事ができたし。現状のリンゴの戦闘力も直に見ることが出来た。あっちも待たせちゃってるし。そろそろ行こうか」


どんな感じで戦闘訓練をしているのか実際に見て確認する事ができたので、そろそろSCSF本部に向かう。


ワイバーンの赤ちゃんたちもまだ来ないの?

って騒いでそうだし。


リンゴも自分と同じワイバーンの赤ちゃんとはやく会いたいって少しソワソワし始めたからな。


「部屋の変わりようが凄いな」


赤ちゃんワイバーン達がいる部屋に転移すると部屋の変わりように驚いた。


キャットタワーっぽいのが設置してあったりボールとかフライングディスクが入っている箱があったり。

ソファーが設置されてたり。

丸一日来てなかっただけで内装かわりすぎじゃないかな?


まぁそれだけSCSFが本気ってことなんだろうけど。


取り敢えず。 赤ちゃんワイバーンはリンゴと雷太に興味津々みたいなので、俺はソファーに座ってロスから話を聞くことにした。


「この場所って大人数で利用する大会議室だったよね?短時間で猫カフェの一室と言われても気にならない内装に変わっているのは何があったの?」


「SCSFの方たちが少しでもワイバーンの赤ちゃんたちにとって少しでも暮らしやすい環境になればと努力された結果ですね」


やっぱりそう言う事か。


「そっか。それなら良いんだけど。それで、SCSF隊員と赤ちゃんワイバーンたちの仲はどう?」


「そうですね。私が傍にいる事が条件になってしまいますが。映司様があの子たちに紹介した大瀬崎様からであれば、あの子たちも直接ご飯を貰ってくれるのですが。それ以外の方になると1度私がご飯を受け取って、私からあの子たちに上げると言う方法を取らなくては食べて貰えません。まだまだ先は長いかと」


まぁ、そう簡単に行かないのは当然だろう。

一度負ったトラウマを克服するなんて数日で出来るものじゃない。


「どうしたの?」


雷太、リンゴ、赤ちゃんワイバーンで話をしていたと思ったら、一体だけこちらに飛んできてソファーに座っている俺の膝の上に乗って来た。


「なんかむさ苦しい?あぁそっか。女の子はキミだけだもんね」


と言っても、俺もロスも男なんだけどね。


こっちに逃げて来たワイバーンちゃんを撫でて可愛がっているとガチャっとドアノブの回る音がしてドアが開いた。


「えっ?ワイバーンの赤ちゃんが増えてる!?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る