第436話
「ん?俺じゃ無くて、そっちの男が水を飲んで安全だと証明しろ?」
俺が水の安全をその身を持って証明しようとしたら、ワイバーンの赤ちゃん達が俺じゃなくて、そっちの男が飲んで証明しろと言い出した。
「という訳らしいので大瀬崎さん。この水を飲んでください」
「そうなんですね。それじゃ失礼して……」
自分が下の階の自販機から買ってきたミネラルウォーターだもんな。
大瀬崎さんは躊躇無くお皿に注がれた水を1口飲んだ。
ワイバーンの赤ちゃんたちは大瀬崎さんに異常がでないかタップリ10分観察してから水を飲み始めた。
「取り敢えず。俺以外の人からでも食べ物や水を貰ってくれそうなのは良かった」
と言っても俺が紹介した人ならって感じだが。
これに関しては時間をかけて信頼関係を築いて貰うしかない。
「今回はここまでにしておきましょう」
ワイバーンの赤ちゃんが受けた仕打ちの事を考えると、一気に仲良くなると言うのは無理だ。なので、これから何度もご飯を上げて少しづつ仲良くなって貰おう。
「一旦別の部屋に移りましょうか。例のアイテムの話もまだですし」
本来はオカリナを売りに来ただけだったんだけどな。
ワイバーンの赤ちゃん達がヤクザ達に酷い目にあわされて人間不信に陥ってたせいで、俺が説得するしかなかったからガッツリ関わる事になってしまった。
ワイバーンの赤ちゃん達に直接会う予定はなかったんだけどね。
ワイバーンの赤ちゃんたちが俺に懐いちゃうのは問題だから。
最低限俺以外の人からでも食事を受け取ってくれるようになった事だし。これ以上俺に懐かれる前に部屋から出ていくべきだろう。
そう思ったんだけど……
部屋から出ていく前にワイバーンの赤ちゃんたちがこちらに向かって飛んで来た。
俺の来ている服に噛みつき行かないでと駄々をこねる。
守ってくれる存在がいないと不安か……
と言ってもな俺に懐かれると困るという話以前に俺だってやる事が沢山あるので、ずっと一緒にいて面倒を見るってのは不可能だ。
「あっそうだ」
元ワイバーンの上位種で現竜牙兵のロスを召喚する。
「ロス。仕事を頼みたくて召喚したんだけど頼まれてくれるかい?」
ロスは映司様の配下なのですから当然ですと返事をしてくれる。
「まぁ、ロスなら何となく予想はついてるかもしれないけど。この子達の護衛をお願いしたいんだ」
ロスならワイバーンの赤ちゃんたちが何言ってるのか正確に理解できるからな。
ロスは全身骨で声帯が存在しないので喋る事は出来ないけど。筆談とかで何とかコミュニケーションを取って貰おう。
念話で会話出来るのは俺とだけだからな。
「そう言えば、声帯さえ有れば喋れるんだよね、当然だけど」
そう言ってロスの核である魂の宿った魔石を竜牙兵から引っこ抜く。
俺の腕を斬り落としてロスの新しい肉体を作る為の素材にしようかと思ったけど。
流石にここでスプラッタな事をする訳には行かないか。
一旦ディメンションルームの中に入ってマジックボックスから未加工のワイバーンの肉を取り出す。
ワイバーンの肉と今までロスの肉体だった竜牙兵、炎の結晶。
それらを合わせてロスの新しい肉体を作り出す。
出来上がったロスの新しい肉体はリュウの要素が強いドラゴニュートと説明するのが一番分かりやすいだろう。
翼とかしっぽが生えている以外は普通の人間みたいな人間の要素が強いドラゴニュートではなく。
全身を翼やしっぽが生えているのは当然として全身が鱗に覆われ、顔も人間のものでは無くトライヘッドアイスワイバーンの顔がそのまま小さくなった感じ。
のんびりしていると、ロスの新しい体に魂が宿ってしまうのでロスの魂が宿った魔石を取り込ませる。
新しい体にロスの魂が宿った魔石を近づけるとズズズと体の中に沈み込んで行った。
少しするとロスの目に生気が宿る。
「突然何をなされるのかと思いましたが。
流石映司様ですね。私の想像など軽く飛び越えた事をなさる」
「問題なく声を出せるようになったみたいだね」
それにしてもロスも生殖器は収納されて見えないとは言え全裸ってのはなんか落ち着かないな。
全身鱗に覆われているし、鱗が服だと言う考え方も出来なくは無いけど……
そう考えているとロスが全身に青い炎を纏わせたかと思うと青い炎が服へと姿を変えた。
「ロスもそれが出来るようになったんだね」
「骨だけでは無くなった関係上服は必ず必要になりますので」
「そうだよね。それじゃ改めて、この子達の護衛…と言うか面倒をみてあげて欲しい」
「承知致しました。彼らが立派なワイバーンになれるよう精一杯努めさせていただきます。あなた達映司様はお忙しいのです。服に噛み付くのは止めてこちらに来なさい」
俺の服を噛み付いて行かないでと駄々をこね続けていたワイバーンの赤ちゃんたちが服を噛むのを止めてロスの方に飛んで行った。
「ロス。頑張り過ぎないようにね?」
何となく、やり過ぎないか心配になったので一応やりすぎないようにと言っておく。
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