第434話

「こんにちは〜今日はSCSFの皆さんに役立つアイテムを販売しに来ました」


学校では特になにかが起きる事もなく、放課後になった。

外国からダンジョンで手に入る素材やアイテムを密輸したとしてヤクザの摘発があったってネットニュースになってたから。

ワイバーンの卵の押収も終わっているはずと言うことでSCSF本部に昨日作ったオカリナを販売しに来た。


「それにしても今日は賑やかだね。ヤンチャな子がいるみたいだ」


やんちゃというより人間を怖がって必死に自分を強く見せようとしている子と言った方が正しいかな。

説明しなくても分かるかも知れないけど。

ワイバーンの赤ちゃん達だ。


リンゴが孵ってるんだし、他のワイバーンの卵だって孵っていても不思議では無いと言うか孵っていた方が自然だろう。

ヤクザたちのところで孵ってしまった結果。

ヤクザに酷い目に合わされた結果人間を怖がるようになってしまったか。


ワイバーンとはいえ赤ちゃんだからな。

BPは600~700程度、弱い訳じゃないけど。

人数用意すれば、どうにか倒せる強さ。

ヤクザ達が力で従えようとワイバーンの赤ちゃんに暴力を振るわれたのだろう。


個としての力はワイバーンの赤ちゃんの方が強かろうが、生まれてすぐに大人数にタコ殴りされるなんて一生モンのトラウマだろう。

可哀想に。


「河村本部長から映司様がいらっしゃったらお連れするようにと言われていますのでご案内させていただきます」


まぁ、会話ができる俺が対応するのがいちばん早いからね。


「俺がヤクザの摘発に参加しなくて本当に良かった。もし参加してこの子達の惨状を見ていたら、ヤクザは跡形もなく消し去ってただろうし」


案内された部屋に入ると全身傷だらけのワイバーンの赤ちゃんがこっちに近づくなと必死に鳴き声を上げていた。


ろくにご飯も食べれていないようで、体力が落ちて威嚇するのが精一杯って感じだな。


「私たちじゃ、どうにも警戒を解いてくれなくてね。キッカケを作ってくれるだけでも良いから手伝って貰えないかな」


「出来る限りの事はやってみますよ。あの子たちをこのまま見捨てるなんて出来ないですし」


河村さんと軽く会話をしてから、ゆっくりワイバーンの赤ちゃん達に近づいていく。


警戒を解いたというより実力差を理解して無抵抗を選択したって感じだけど。

近づいても威嚇をしてくる事は無い。

ちょっと可哀想だけど、このままだとこの子達は餓死してしまうので、可哀想だけどこの状況を利用させて貰おう。


「大丈夫だ。俺は君たちに手を上げたりする事はない。先ずは君たちの傷痕を綺麗に治すから怖がらないでね?」


そう言ってワイバーンの赤ちゃん達の前にしゃがみ再生の炎を纏わせた手で触り傷痕を綺麗に治していく。


ワイバーンの赤ちゃんたちの傷痕を綺麗に治した後は、その場に座ってマジックバッグからおもむろにドライフルーツを取り出して自分で食べる。

傷痕を治したことで多少信用されたようだけど。

まだ、これ食べる?って食べ物をだして無警戒で食べて貰える程信用して貰える訳では無い。


なので、多少は信用されたところで自ら食べる事で食べても大丈夫なものと判断してもらおうと言う作戦だ。


10分程、ワイバーンの赤ちゃんの前でドライフルーツを食べることを続けると、赤ちゃんワイバーンの一体のお腹からぐぅぅと音がなる。


「君たちも食べる」


あえて食べかけのドライフルーツをワイバーンの赤ちゃんの方に差し出す。

食べかけじゃないドライフルーツも沢山あるが。

食べかけじゃないドライフルーツは

赤ちゃんワイバーン達からしたら安全かどうか、まだハッキリしていないと言うことで口元に持っていっても食べてくれないだろう。


お腹を鳴らした一体が差し出したドライフルーツをくんくん匂いを嗅いでから口の中に入れて咀嚼する。

残りの2体はその様子を心配そうに見守っている。


「そっか美味しいか良かった。残りのも好きに食べて良いよ……まだ口がつけられてないのを食べるのは怖いか?それじゃ俺が食べて安全だってのを証明するから。どれを食べてみたいか教えてくれる?」


ワイバーンの赤ちゃんが食べてみたいドライフルーツを選択して、それを俺が一口食べて安全な事を証明してからワイバーンの赤ちゃんに食べさせる。これを何度か繰り返すと残りの2体のワイバーンの赤ちゃんもこちらに近づいて来た。


「君たちも信用してくれたか。この子と同じように気になるものを教えてくれたら、それを俺が一口食べて安全な食べ物だって事を証明するよ」


そうやって3体のワイバーンの赤ちゃんにドライフルーツを食べさせる。

3体がある程度の量ドライフルーツを食べたところで一度立ち上がる。


「あっちにいる人達に飲水の用意をお願いしてくるから少し待っててね。そんなに警戒しないで。あの人達は俺の仲間だから。それにドライフルーツと同じように俺が最初に飲んで大丈夫なのを証明するから」


ワイバーンの赤ちゃんたちにそう説明して納得させてから、河村さんたちの待機している方に移動する。



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読んでいただきありがとうございます。


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