第432話

うーん腹パンの加減をミスったか。

ていうかこいつら俺が殺さないで無力化しようとする確証でもあったのか?

一瞬で殺されたら転移で逃げるとか不可能な訳だし。


まぁ、どうでも良いか。こいつらが屑な事に変わりはないし。


「で、何時になったら逃げるんだ?」


ニヤニヤした顔で煽るような発言をして道化の面をつけたヤツを挑発する。


お前らみたいなクズはスキルが使える状態だと何をしでかすか分からないからな。

当然腹パンしたタイミングで理外に頼んでスキルとの繋がりを斬ってスキルを使えない状態にしてある。


「な、何故です!何故!転移が発動しない!まさか!龍王っ貴様の仕業か!」


道化の面をつけた奴は半狂乱になって騒ぎ出す。


「煽ったのは俺だけどさ。怪我人の治療と救助してるんだから、もうちょっと静かにしてくれない?」


そう言って〈精神支配〉を使って黙らせる。


それにしてもほんとに酷いことをする。


「彩夏。生きてる人の傷の回復は終わった。俺はあっちのクズどもと話が有るからちょっと離れる」


虐殺を目的とした狂った奴らの仕業だったから。助かった人はそう多くなかった。


どうしてこういうヤツらが生まれちゃうんだろうな。


ダンジョン潜って魔物相手にその力を使えば良いのに。



ーーー


「でだ。俺が聞きたいのは1つ。その指輪について説明しろ」


禍々しいオーラを放って沢山の魂が閉じ込められている指輪なんてどう考えたってろくなもんじゃない。


「『生贄の指輪』と言って殺した人間の魂を閉じ込め。装備している人間が死んだ時に閉じ込めた魂を消費する事で蘇生する事が出来ます」


なんともまぁおぞましい指輪だ。


「お前ら全員同じ指輪をしているな?こんな物どうやって手に入れた?」


「謎の男から貰った」


そう言う謎の黒幕がいる感じね……


はぁ……


先ずは、生贄の指輪に捕らえられている魂を解放してあげる。



選んで人を殺すのがそんなに上等かね?

そんな発言をするゲームのキャラがいるけど……


こいつらを見て、その発言を思い出してしまった。

俺が殺してきたのは罪のない人を平気で殺す悪人だけだけど。人を殺している事に変わりはない。


「ハッ!下らない。龍である貴方には人など牛や豚と変わらないでしょう」


「お前。だれだ?」


〈精神支配〉を使って自由に発言できない状態にしていたはずの奴が突然喋り出した。


「この人間に〈生贄の指輪〉を渡した黒幕とだけ言っておきましょうか。そうそう、先に言っておきますが。これは事前に録音したものを再生しているようなものなので、質問されてもお答えする事は出来ないので悪しからず。それではまた」


ムカつく野郎だ。

それ以上勝手に喋る事はなかったけど。どう調理してくれよう?そのまま放置しておく訳にはいかない存在だろうし。


でも、情報が全くないんだよな。


「その黒幕に関してご報告なのですが。マーリンによって既に処分されています」


「マジ?」


そんなあっさり解決しちゃう感じなの?


「今回の黒幕は悪魔なのですが。あんまり好き放題させると悪魔は全て敵だと人から認識されるようになる。なので、マーリンが動いたという訳です」


なんかあっさり解決して拍子抜けだけど。

世界的にはこれで問題ないだろう。


「ところで楓さんそれを伝える為だけに?」


「はい。マーリンや私みたいな存在が手を貸しすぎるのも良くないので」


被害に合った人からしたら巫山戯るなって思うかも知れないけど。否定は出来ないな。


「あっそうだ。今聞く内容じゃ無いんですけど。宴会に持参するお酒や食材ってどれぐらいの量を持って行けば良いんですか?」


「神々の皆様が映司様に対して期待されてるのはお酒でしょう。なのでお酒は出来る限り大量に、他の食材は……程々に量が有れば問題ないかと」


取り敢えず、酒が一番重要ってことか。

結局どれぐらいの量が必要なのか具体的な量は分からなかったから。

できるだけ沢山用意するしかないか。


その後、警察やSCSFが現れたのと同時に楓さんは帰ってしまった。

彩夏にはクラリスさん、リンゴと一緒に先に帰ってもらい。


俺は現場に残って警察とSCSFのお手伝いをする事にした。


指輪に関してどうしよう?正直に話すには危険すぎるアイテムかと言って存在を隠すには既に手遅れだし……駆けつけた警察とSCSFに〈精神支配〉を使えば今から指輪の存在を抹消する事は可能だけど……

悪人じゃない人に〈精神支配〉を使うのはな。


世界平和のためだし殺すわけじゃないからって〈精神支配〉を悪事を働いてな人に使い始めたら、俺は世界平和のためにしてるんだと言って何もかも正当化する狂人だろう。


もしくは人間を管理する側の存在。地球や神と言った存在だ。


俺は後者よりの存在なのかもしれないけど。

人として人と共に暮らしている以上。やっぱり超えてはいけない1線だと思っている。


「新藤さんどうしました?」


「あっいや。指輪が……」


そこまで言って道化集団の方を見ると指からあの禍々しい指輪が無くなっている事に気づく。


「指輪が落ちていますね。遺品の可能性もありますので回収しましょう」


俺が視線を向けていた方に偶々指輪が落ちていたらしく。

考え事をしていた俺に話しかけて来た警官は指輪を丁寧に拾い。一時保管場所に運んで行った。


(あの指輪は悲劇しか生まない品でしたので、存在ごと無かった事にしておきました)


そういう事は予め言っておいて欲しかったけど。関係ない質問したのは俺だからな。

俺が色々心配する必要はなかったようだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る