第429話

「そうですか。分かりました。そのアイテム何時までに用意すれば良いですか?後、件のヤクザを潰すのに戦力が必要なら声をかけて下さい。協力するので。実際に大陸からワイバーンの卵を密輸したヤクザ組織が存在するんでしょう?」


「アイテムに関しては出来るだけ早く用意して欲しいかな。ヤクザに関しては映司くんの力を借りる必要は無いかな。というより、何から何まで力を借りるのはね……何時まで立ってもSCSFが成長出来ない。映司くんの力を借りるのは出来るだけ、緊急性が高いか。映司くんにしか不可能な件だけにした方が良いと私は考えてるからね」


私はか……河村さんは大変そうだな。

河村さんはSCSFのトップだけど。SCSFの上に迷宮省が存在する訳で、河村さんの上の立場の人は存在する。


色々言われてるんだろうな〜そう言う人達から。


「そういう事なら、ヤクザの摘発頑張ってください。俺はワイバーンをテイムできるようになるアイテム用意しておきますから。と言っても無条件にテイムできるアイテムは無理ですからね?」


「そんな性能のアイテム逆に問題になるから。そこまでの性能は求めてないから大丈夫だよ」


「その……どうして私の為にそこまで?」


「正直に言うと早嶋さんの為じゃなくてリンゴの為ですね。あんな小さい子がお母さんと認識している人から引き離すなんて可愛そうですからね」



「そっそうなんですね……まぁ、条件はもの凄く良いですし。これから一社員として頑張らさせていただきます。その前に今の会社を退社しないといけないですけど」


「それに関しては弁護士でも雇って出来るだけ早く退社できるように手伝って貰いましょうか」


その分お金がかかる訳だけど。まぁ必要経費だろう。


それにしても、ここまでやるのはリンゴの為って言った時に早嶋さんが一気にテンションが下がったと言うか冷めた表情になったけど。

俺なにかおかしいこと言ったかな?

まぁ、働いてくれるなら問題ない。


「話も纏まりましたし。外に行きましょうか。リンゴも待ってますし」


リンゴを大分待たせているからな。



「外にですか?」


「リンゴも連れて来てるんですけど。病院の中に入るの拒否されちゃって駐車場に止めてある車で待機して貰ってるんですよ」


「そ、そうなんですか!すぐ行きましょ!早くリンゴに会いたいです」


病院のベッドで上半身を起こした状態で話しかけていた早嶋さんが掛け布団をめくり凄い勢いでベッドからおりた。


まぁ、怪我自体は完治しているからね動くぐらい問題ないだろう。

と言ってもまだまだ貧血気味だろうし自分の足で歩かせる事はさせず、車椅子を用意して乗ってもらう。


「それじゃ、リンゴを連れて来るので少し待っていて下さい」


病院から出て直ぐにそう言って一人駐車場に向かって歩いていく。


「リンゴ〜迎えに来たよーって寝ちゃってるの?」


「ソワソワしながら待ってたんだけど。疲れちゃったみたいで少し前に寝ちゃったんだよ」


赤ちゃんだし仕方ないか。


「リンゴ、ようやくお母さんに会えるよ〜」


「ぎゃ?」


起きるかな?と声をかけてみると。バッと目を開いて、首を傾げながら『ほんと?』と聞いてきた。


「ほんとだよ。お母さんは病院の入口でリンゴの事を待ってるよ」


「ぎゃ〜♪」


そう伝えるとリンゴは嬉しそうにひと鳴きして俺の胸の位置まで飛んで来たので抱っこしてあげる。


「そうだ。クラリスさん例の女性…早嶋さんって言うんだけど。ソフィアの会社に入社する方向で上手くまとまったよ」


「予定通りということですね。河村さんに待ったをかけられませんでしたか?」


「SCSFにちょっとしたアイテムを売ることにはなったけど。まぁ、許容範囲内かなって感じですね」


「ほんとに許容範囲内ですか?」


「……無条件とはいかないけど、ワイバーンをテイムできるアイテムを売ることになったんだけど。俺からしたら許容範囲内かなって……SCSFの戦力が上がれば上がるほど。俺に回ってくる依頼が減るだろうし、良いかなって」


「……まぁ、映司様が許容範囲内と考えるなら問題ないのではないでしょうか」


早く行こうよとリンゴに洋服を引っ張られたので、話を切り上げて病院の入口に向かった。


「ぎゃ〜♪」


病院の入口に向かって歩き、車椅子に乗った早嶋さんが見えると。

抱っこされていたリンゴが早嶋さんに向かって飛んで行った。


俺の時とは違って速度を落とさず頭から突っ込んで来るのではなく、目の前で一度速度を

落として威力を加減して胸に飛び込んでいた。


これは、ちゃんと相手の強さを考えて加減が出来てることを喜ぶべきなのかな?


とにかく、俺も合流しないと。

駆け足で河村さんと早嶋さんのところに向かった。


「この場面を見た後だと、2人を離れ離れにしなくて済んで良かったと心からそう思えるね」


リンゴがしっぽを振りながら、早嶋さんの顔を舌でペロペロして、それを嬉しそうにしながらリンゴの事を撫でる早嶋さんと言う微笑ましい光景を見ながら河村さんがそう呟いた。


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読んでいただきありがとうございます。





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