第428話
「そう言えば、被害者の女性の名前先に聞いて良いですか?」
いつまでも被害者女性って呼ぶのもあれだし。
「早嶋美羽さんだよ。流石にこれ以上の個人情報は……」
「当然名前以上の情報は喋る必要ないですよ。聞いていい立場の人間じゃないし」
名前以上の情報を知りたいわけでもないからね。
河村さんの後をついて病院を進み武装したSCSF隊員が警備する病室の中に入る。
「目を覚ましたばかりと言うのに押しかけるようなかたちになってしまい申し訳ございません私、SCSC本部長 河村 忍と申します。そしてこちらが」
「新藤 映司です」
「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。早嶋美羽です」
「早速ですが。早嶋さん今日はリンゴくんの卵を拾った時の話を聞かせていただきたいと思い尋ねさせていただきました。覚えている範囲でお話して頂けないでしょうか」
「終業時間ギリギリに部長に『明日の会議に使う資料だから明日の10時までに完成させといて』と言われた資料を何とか日付が変わる前に終わらせて帰宅している途中。卵を見つけて……最初は無視しようと思ったんですけど。なんか無視できなくて……明日朝イチで交番に届けようと思って持ち帰ったんです。で、家に着いた後は割れないようにタオルで包んで玄関に置いてたんですけど。寝て起きたらリンゴが孵ってて。最初は可愛いなって名前を付けたり、撫でたりしてたんですけど……あれ、これ不味くない?どうしようって色々考えてるうちに一日経過していて…
もう正直にSCSFに相談するしかないと思ってリンゴにお願いしてバッグの中に隠れて貰って家から1番SCSFの支部に向かって移動していたところで……」
襲われて刺されたってことね。
「あの……リンゴはどうなるんでしょうか?」
「いくら敵対的じゃないと言っても従魔になっていないし。行動を制限する事が出来る類の魔導具もつけてないとなるとSCSFとしては危険だから処分と言う判断をしなくちゃいけないんだけど……」
そこまで言ってチラッと俺の事を見る。
「早嶋さんとリンゴが望むならリンゴを早嶋さんの従魔にする事も可能ですよ」
従魔ってのはテイマーと魂同士に繋がりが存在する状態の魔物のことを指す。
魂の繋がりがあるからこそ、テイマーは自分の従魔が人間の言語を喋らなくても何を言っているのか理解出来たりする訳だ。
で、以前の俺は眷族にするってならリュウ系に限ると言う制限が存在していたんだけど。俺の種族に悪魔が追加されてからリュウ系に限ると言う制限も無くなった。
それだけじゃなくて魔物を俺以外の人物の眷族や従魔にする事もできるようになった。
と言う訳で、お互いの同意さえ得られれば割と簡単にリンゴを早嶋さんの従魔にする事は可能だ。
「そ、それなら是非!」
「けど勿論タダでとはいかない。当然だよね?」
慈善団体じゃないし。
「私、ただのOLなのでローンを組んで頂けると……」
「ん?お金を請求するつもりは無いですから安心してください。俺が求めるのは労働力。リンゴを早嶋さんの従魔にする条件は早嶋さん貴女がソフィアの会社に入社することです!」
ワイバーンを従魔にしている人材を見逃すなんて勿体ない事する訳ないよな。
「勿論、ブラックな条件で雇ったりはしませんよ。条件はこんな感じです」
こう言う流れになるのは最初から分かっていたから、クラリスにお願いして用意してもらった。ソフィアの会社の雇用条件を記した
紙をマジックバッグから取り出して早嶋さんに渡す。
「こ、こんな好条件で雇ってくれる会社ってほんとに存在するんですか!都市伝説だと思ってました」
「条件が悪いとは言わないけど。同じぐらいの条件で求人出してる会社他にも存在するよ?」
「存在するのは間違いじゃ無いけど。滅多に存在しないのも確かだよ。私の事も雇ってくれない?」
「河村さんは優秀だからこそ、このままSCSF本部長として働いて下さい」
SCSFから河村さんを引き抜いたらSCSFが大変なことになるだろうし。
優秀だからこそ引き抜けないってやつだ。
「そういえばさ。元の持ち主が悪人だったとしても。誰かの物であった訳じゃん卵状態のリンゴって。なのにさ、このまま早嶋さんのところで暮らすってのは問題にならない?」
「それに関しては少し映司くんに相談があってさ。例えば、ワイバーンの卵の持ち主がヤクザで、大陸から 密輸品。魔物の卵な訳だからSCSFがひとまず押収する事になるんだけど。押収した後にワイバーンが孵化。SCSFではワイバーンを手預けることは出来なかったが。民間人にワイバーンを手懐ける事が出来る人物がいたためワイバーンの手懐けを依頼。無事、手なずけに成功した為。定期的なチェックは行なうが、そのままワイバーンの管理は手なずけた人物に任せる事にする。なんて流れでどう?」
「で、SCSF様は何をお望みで?」
多分だけど。この話9割方本当の話なんだと思う。
加筆するのは民間人にワイバーンの手懐けを依頼したと言うところのみだろう。
だとしても、こちらに都合のいいように調整してくれる訳だから当然お礼は必要だよね。
「いや、この話を聞いた映司くんがそう言ったスキルがなくても、ワイバーンを手懐ける事が出来るアイテムが有るよってSCSFに販売しに来てくれる助かるな〜って」
買い取ってくれるだけマシだと考えるか。
早嶋さんがと言うか。
早嶋さんと離れる事になったらリンゴが可哀想だからな。
チャチャッと用意するか。
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