第419話
ナディアさんが腰にさしたレイピアを抜き魔物に向かって歩いていく。
すると、道に転がる岩たちに蜘蛛のような足が生えてナディアさんに向かって一斉に飛びかかってきた。
「〈風纏〉」
風纏とナディアさんが言った瞬間、緑色の魔力がナディアさんとレイピアを包み込む。
緑色の魔力を纏ったナディアさんは人としては有り得ない速度で動き、飛びかかって来る岩モドキ達を突きでどんどん倒していく。
「レイピアの突きで岩モドキを貫通?ダークエルフのお嬢さんの力もだけど、レイピアも相当な業物って事か……」
同行して貰っているSCSF隊員が驚いた表情でそう呟く。
まぁ、サッカーボールサイズの岩をレイピアで綺麗に貫通って普通じゃ考えられないよね。
「アレは、風纏ってスキルを使っているからってのも有るでしょう。風纏の使用中は自身の素早さを上昇させるだけじゃなくて。武器の貫通力も上昇させるみたいですから」
容赦なくSCSF隊員にナディアさんの使ったスキルのネタばらしをする。
まぁ、バラしたところで対策できるもんじゃ無いし、ナディアさんが異世界人と言う存在である以上ある程度こう言う情報をこちらから伝える事で、敵じゃないですよーアピールしている面もある。
もうわかっていると思うけど。ナディアさんを含めダークエルフはゴリッゴリの近接タイプだ。
と言ってもナディアさんの暮らしていた異世界のダークエルフはだけど。
一応言っておくとナディアさんは別にムキムキダークエルフでは無い。
ナディアさんの暮らしていた異世界のダークエルフは〈風纏〉のような身体能力の1部を強化したり近接戦闘が有利になるスキルを初期スキルとして覚える事が多いらしい。
そう言う理由もあって近接戦闘が得意な種族となっているってナディアさんが桃源郷にいる時に説明してくれた。
人によってはダークエルフって言うのは闇魔法が得意な褐色エルフの事だろう!って思うかも知れないが。
残念ながらナディアさんは闇属性どころか属性魔法スキルは一切覚えていない。
探せば闇魔法が種族全体で得意なダークエルフが存在する異世界もあると思うけどね。
異世界ってのは地球に暮らす人の想像が元になって生まれる訳だし。
ーーー
「ありがとう、いい運動になった」
ナディアさんが満足するまでナディアさんを先頭にダンジョンを進んでいると。
レイピアを鞘に収めたナディアさんがそう言って戻って来た。
「それは良かった。それじゃ後は俺の出番ですね」
それにしてもいい運動になったか……
まぁ、ナディアさんからしたら、その程度だよな。岩モドキとか、ここに出てくるモグラの魔物レベルの相手なんて。
その言葉を聞いた古池さんやSCSF隊員は苦笑いしている。
「古池さん撮影お願いしますね」
「任せてください」
SCSF隊員に現場で直接見てもらうだけでなく、俺がどうやって魔物の間引きをしたのか動画にのこせば直接見ていない人に説明するときもスムーズに進める事が出来る筈だ。
念の為、俺以外の同行者を炎の結晶で作った半球ドームで保護する。
SCSF隊員の顔が物凄く青くなっている。
ここまでして俺が何をするつもりなんだ?って怖くなっちゃったか。
まぁ、魔物だけを燃やすように制御はするから俺が今から吐く炎は人が触れてもちょっと暖かく感じる程度なんだけど。万が一があったら洒落にならないからね。
しっかり保護をする。
大きく息を吸ってから、広範囲に炎を撒き散らす普通のブレス攻撃を開始する。
数分経って、そろそろ炎が坑道全体に行き渡っただろうと判断してブレス攻撃を止める。
炎が消えた坑道には魔物のドロップだが残っているだけだった。
「魔物だけ燃やすように意識したけど。ドロップ品は燃えずにしっかり残ったみたいだね。良かった良かった」
今更、これぐらいの炎の制御に失敗するとは思ってなかったけど。成功したって分かると安心するよねやっぱり。
「さ、先に進みましょう」
唖然とした表情で固まるSCSF隊員に声をそう声をかけるけど。返事が返って来ない。
まぁ、俺が戦うところを初めて見るとこうなる人が大多数だし、もう慣れた。
声をかけてすぐに正気に戻れば良いんだけど……
そうじゃない場合、自然に戻るのを待つしかないんだよね。
今回は後者かな。
ちなみに、古池さんは既に俺とリーリンさんの模擬戦を見ているし、この程度では全く動じない。
ナディアさんに関しては龍とは人では考えられないようなことを片手間で成すことが出来るそう言う存在だと認識しているので特に驚いてない。
仕方ないので、リーリンさん特製のワイバーン肉のジャーキーを食べながらSCSF隊員が正気に戻るまで待つ事にした。
ワイバーン肉のジャーキー美味しいけど。
酒の肴として作ってるから味がかなり濃いめでもの凄く喉が渇く。
ジャーキーは味が濃いものってイメージが有るけど。もうちょっと薄くする事は出来るだろう。
今度はもうちょっと薄めで作ってってリーリンさんにお願いしよう。
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