第378話

「と言う訳で、秀明さん早速力を貸して下さい」


「しっかり説明してくれないと返事が出来ない。しっかり説明してくれ」


「いやまぁ、その聖槍?を手に入れるために国と交渉するのは面ど━━━━ダルかったので、折れてる神剣を鍛造じゃなく鋳造で作り直そうかなって」


メナージュ本人はある程度信用出来そうではあるけど、国がガッツリ関わってくるとなると、そうはいかないからな。

最悪、無いならないで問題無いので、折れた神剣を武器として復活させられないかちょっと試してみようってやつだ。

鍛造と比べて武器としての性能は落ちるだろうけど、その分時間をかけずに作れる気がする。まぁ、素人意見なんだけどさ。


「とりあえず。武器として使えさえすれば良いので、ただの棒状でも良いと思うんですよ」


打撃武器として使えるだろう。

別に斬らなきゃ破邪の効果は発生しないとか無いでしょ?


なら、ただの棒で十分じゃん。

素材が神鉄ならただの棒でも精霊が宿る事もできるでしょ。


光球だから表情なんて分からないはずの創造神さんさえ、流石にただの棒は……って表情をしているのが分かる。

だからってしっかりとした武器を作るのはそれはそれで大変だよ?


「俺が剣の砂型を作るから棒じゃなくて剣にしよう。流石に伝説の武器が棒ってのは……」


そこまで言われてしまったら仕方ないので、砂型作りを秀明さんに任せて、その間に何かする事……ないな。

と言うことで秀明さんの砂型作りが終わるまでのんびりして時間を潰した。


「砂型は完成したし。後は溶かした金属を流し込むだけだが。そもそも、神鉄って溶かせるのか?」


だいぶ根本的な質問を今更?って思ったけど。まぁ、気になるか。


「まぁ、溶かすぐらいなら。蒸発させるとなると難しそうだけど……あぁ、そうだ。精霊は予め退避しといてね?」


このまま神剣を溶かしたら宿っている精霊までダメージを受けちゃうからな。


そう言うと神剣から創造神と比べて、ふたまわりぐらい小さい光球が飛び出して来た。


これでこの剣は神鉄を使ったただの剣に戻った訳だ。


これで安心して神鉄を溶かす……前に溶けた神鉄の受け皿を用意しないと。

絶炎を結晶化させて底が深いお皿を作る。

注ぎ易いように注ぎ口も作ってある。

神鉄はただ温度を上げれば溶けるって感じじゃなさそうなので絶炎を使って溶かす。

種族進化してからだいぶ絶炎の制御も楽になった。

神剣は数秒でドロドロの液体金属に変わった。


ドロドロになった神鉄を砂型に流し込んでいく。

少し残った分は秀明さんに仕事料として押し付けといた。


「これで後は神鉄が冷えるのを待つだけか」


憤怒の王で急激に冷やすことも考えたけど。

それやると良くなさそうなので自然に冷え固まるのを待つことにした。


「いや、研磨しないと剣としては使えないぞ?」


確かに。研磨しなきゃ剣の形した鈍器か……

それでも良いや。

だって神鉄を研磨できるレベルの設備なんてないし。


(神鉄の比率の少ない合金ならまだしも純粋な神鉄を研磨できるような施設は現在の地上には存在しないかと)


どの道、現状剣として完成させるのは無理って事ね。


ーーー次の日ーーー


「これが新しい神剣(鈍器)」


神剣復活計画二日目、創造神がそろそろ冷え固まっていると言うので砂型を崩し神剣(鈍器)を取り出す。

不要な部分を絶炎で溶かして最低限の形を整える。


柄の部分に滑り止めように俺の抜け殻を巻き付けて神剣(鈍器)の完成。



「それで、この武器には宿れそう?」


前の神剣に宿っていた精霊に問題なさそうか確認する。


以前に比べて少し居心地が悪くなったけど問題ないとのことだ。

居心地に関しては武器の完成度が関わってたりするのかな?

まぁ、宿れるなら良いだろう。

以前に比べてってだけで、今すぐにでも出て行きたいほど居心地が悪いって訳じゃ無いみたいだし。


と言うわけでこれにて邪神と戦う為の武器が無事に完成した訳だ。


これで邪神と戦うための準備が整ったな。


そう思ったのと同時に地面が揺れる。


「なんと言うかタイミングが良いな」


鋳造で武器を作る為に秀明さんが借りた家から外に出てみると

真っ赤になって脈動する月だった物が地上目掛けて墜ちて来ている。


「月は実は邪神の肉体でしたってやつ?」


割とありがちな設定だよね。

月がないと引力がとかそう言うのが気になるけど。

ここ異世界だからな。考えたら負けだ。


(想像通り。邪神の肉体です。全てをダンジョンの核として使用するとダンジョンの数が膨大になりすぎるので……核のサイズを大きくするのも危険ですし。残りは纏めて天に浮かべ封印していた訳です)


つまり破壊しちゃっていいやつな訳だ。


龍の姿になって一分間ほどしっかりと溜めた本気の絶炎収束ブレスを邪神の肉体に向かって撃ち込む。


邪神の肉体に着弾した瞬間爆発を起こし、灰すら残さず肉体を消滅させた。


「初めてここまで力を溜めてブレスを使ったけど想像以上に火力が上がってたな」


竜や龍のブレスは溜めれば溜める程威力が上がるって言う特性が有るらしいんだけど。

そこまで溜めなくても十分な威力だったから、長くても十数秒ぐらいの溜めしかして来なかったけど。

一分溜めるとこんな威力になるんだね〜



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読んでいただきありがとうございます。


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