第375話

「全てこちら次第ってことですか」


「そう言う事ですね。まぁ、直ぐには信じられないでしょうし。今決めろとかそう言う話じゃないです。今すぐ帰るって言っても帰れませんし。なので今日はお互いのことを知る為に少し話をしませんか?」


俺が日本人だって言う証拠も見せられるし。


「話……か」


「秀明。これはチャンスだよ。日本に帰れることなら帰りたいって言ってたじゃん!」


女性陣の後押しもあり、この後ゆっくり話をする事に同意してくれる。


「日本の話をするとなると道端で話す内容じゃないしとりあえず。俺たちが取っている宿に移動しましょう」


ディメンションルームを使うにもこんな道端で使う訳にはいかないからな。


今までの会話も十分道端で話す内容じゃなかったけど。まぁ、聞き耳立ててる通行人はいなかったし大丈夫だろう。


ぞろぞろと大人数を連れて帰って来たので宿の人には少し驚かれたけど。

少し話をするだけと事情を説明して部屋に戻る。


「このままここで話すのも良いですけど。

折角です。こっちで話をしましょう」


マジックバッグからドアノブを取り出しディメンションルームの中に入る為のドアを出現させる。


「さぁどうぞ。異空間内にある部屋なので盗み聞きとか気にせず話ができます」


ちょっと、いやかなり怪しまれたが。

部屋の中に全員で入った。


「これは……」


「そう言えば椅子が足りなかった。……とりあえずこれで勘弁してください」


基本ディメンションルームに俺とソフィア以外人を入れる予定はなかったので、椅子とかが足りない。

とりあえず、炎を椅子の形で結晶化させることで人数分の椅子を用意した。


「見た目が成金っぽいし、座り心地悪いかも知れないけど、どうぞ」


「これって、ドラゴンの住処に自然発生するって言うドラゴンクリスタル?」


「間違いない!間違い無いぞ!100gでも手に入れる事が出来れば、大金持ちになれるドラゴンクリスタルで作られた椅子。これだけあれば一生遊んで暮らせる!」


今まで一言も喋らなかった異世界で遭遇した日本人秀明のハーレムの1人が俺が作った椅子をハイテンションに頬釣りし始めた。


「いやいや。重要なのはそこじゃ無いでしょ?その希少なドラゴンクリスタルを一瞬で作っちゃう存在が目の前にいるのが問題でしょ」


「今更でしょメープちゃんは薬師で戦えないから気づかなかったのかもだけど。最初に会った時からあの人がその気になったら私たちは一瞬で殺されるって分かってたもん。だからこそ、秀明を日本に連れ帰ることができるって話も本当かもって思ったわけだし」


どうやら、戦闘できる人とそうじゃない人達で俺に対する認識が違ったようだ。

英明さんを除き女性達が言い合いを初めてしまった。


「なんか申し訳ない。うちの連中が……」


「あぁ〜気にしないでください。先ずは自己紹介をしましょうか。自分は新藤 映司

16歳です」


「俺は西田秀明。15歳の時にこの世界に召喚されて今は24歳だ」


そう言えば。秀明さんはしっかり9年分歳をとっている訳で。

日本で大して時間がたっていないとしても色々問題だよね?


いや、別人として生きてもらうならむしろその方がありがたいか……


いや、両親とかいるはずだしどうしようか?


ソフィアの嫉妬の能力で若返らせる?

いや、流石に他人を若返られるのは無理だろうし。

できたとして9年分若返らせるとかどれだけ生命力が必要になるのか検討もつかない。


一年若返らせるとしても人間100万人分の生命力が必要なのに。


しかも元〇玉みたいに少しづつ分けて貰うんじゃなくて。その人の生命力根こそぎ奪ってだからな。


まぁ、いいや。実際に秀明さんが日本に帰るってなった時に考えればいいや。

秀明さんが。


「とりあえず。座って話をしますか。そう言えばスマホ持ってます?魔石で発電できる小型発電機が有るから充電して使えますよ?」


あぁでも、9年も経っているとさすがにバッテリーがダメになってるかな?


「そんな物が……電気で動く物なんてこの世界にはないし。本当に日本もファンタジーな感じになっちゃってるのか……それだと母さんたちは……先ずは充電出来るならさせて欲しい、これなんだけど」


スマホが秀明さんの手のひらの上に出てくる。収納系のスキルを持っているのかな?


「typeCケーブルで充電できるタイプのスマホですね。と言うか俺のと同じ機種ですね」


俺も楓さんから聞いていただけで地球とこの世界の時間の流れは違うと実感出来てなかったけど。

この世界で9年間暮らしていた秀明さんが使っていたスマホが俺と同機種とかほんとに時の流れが違うんだなと実感した。


「同機種?」


「この世界と地球の時の流れは違うって言ったでしょ?こっちの世界で40日ぐらい過ごしても地球では1日しか経過してないって。ほら、俺が使っているスマホ」


マジックバッグからスマホを取り出して見せる。

少し困惑した表情をしている秀明さんからスマホを受け取って充電を始める。

秀明さんが持つ収納系スキルは時間停止機能もしくは時間を鈍化させる機能がついているのか。

しっかり充電が始まった。



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読んでいただきありがとうございます。









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