第373話

ソフィアの事をこの世界に召喚したネフィルム聖王国は過去にも何度か異世界人を召喚して侵略戦争の戦力として利用していた筈だ……この街の図書館にある本の内容が正しければだが……


まぁ、間違いないと思うけど。

そして、ふと目に入った肉まんの屋台。


この屋台には、そう言った過去に異世界から召喚された異世界人が関わっているんじゃないだろうか?


上手いことやってネフィルム聖王国から逃げ出したとか。戦闘には役に立たなそうだったからネフィルム聖王国が放逐したとか。

そんな感じの理由でこの世界で自由に暮らせてる的な。


先ずは肉まんを買って食べてみよう。屋台をやっているのはエルフだから少なくとも見ただけじゃ地球人か判断できない。

買ったついでに少し話を聞いてみようかな。


現在の地球だとエルフも実在するからな。

エルフだから地球人じゃないとも断言できない。

いやまぁ、時間軸とかどうなってんの?って話になっちゃうけど。この世界で召喚された時点での未来の地球から召喚されたとかも可能性としてはゼロじゃないだろうし。


うんまぁ、考えてるだけじゃ答えは出ないだろうな。


「すいませーん。肉まん?を1つください」


お金を払って肉まんを1つ買う。


「この肉まんってのは。貴女が考えたんですか?それとも、俺が知らないだけで結構有名な料理だったり?」


「この屋台のオリジナル料理ですよ。私ではなく私の旦那が考案した料理ですが。レシピを教えろと言うお話でしたら予めお断りさせていただきます」


「あ〜レシピについては教えろとか言うつもりはないよ。純粋に初めて見た料理だったから俺の知らない国や地域の料理なのか。それともこの屋台をやっている人が考えた料理なのか気になったから聞いただけなんだ。警戒させてしまったなら申し訳なかった」


「なるほど。こちらも早とちりしてしまったようで、申し訳ございません。肉まんが評価されるのは嬉しいのですが。最近はレシピを狙う連中が増えてきて……」


「そうだったんですね。お店の人からしたら複雑かも知れないですけど。レシピを知りたがる人が多くいる料理って事で美味しいんだろうなって期待値がさらに上がりました」


「まぁ、そうですね。非常に迷惑ですけど。時には貴族がレシピをよこせと言ってくる程の料理です。味には自信がありますよ。その分少し値段が高くなっていますが」


確かにほかの屋台に比べて少し割高だ。そのおかげでお客さんの数が少なくてこうやって話す余裕が有るんだけど。


「すいません。販売の邪魔になっちゃいますよね。それじゃ俺はこれで。あっ、そうそう旦那さんに肉まんだけじゃなくて餡饅とかピザまんとかほかの種類も機会があれば食べたいなって伝えておいてください」


そう言って屋台から離れる。

最初の方は何言ってんだこの人?って感じでポカーンとした顔をしていたけど。

ハッとした顔になって俺を止めようとしたけど。ちょうど良いタイミングでお客さんが来てしまったので、追いかけて来ることはなかった。


来るなら来るで旦那について詳しい話を聞きたかったけど。

明日以降もこの街で屋台を出すなら、地球人疑惑のある旦那が屋台で売り子をして俺が来るのを待ってると思うし。今日はこのまま帰ろう。

真っ直ぐ帰る予定だったのに時間かけちゃったし。


因みに肉まんは餡にキノコやタケノコが入っていて中々美味しかった。

肉も一種類じゃなくて数種類混ぜてあるみたいだし。この味が出せるようになるまで結構苦労したんじゃないかな。


ーーー


宿に借りている部屋に戻ると、ソフィアはぐっすり眠っていたので、できるだけ音を立てないよにソファーまで移動して座る。


と言うか。つい異世界人と接触する感じで行動しちゃったけど。

接触した後はどうしようか?特に何も考えてなかったんだよね……

特に邪神を倒すための戦力として協力を依頼する訳じゃないし。と言うか必要ない。


まぁ、異世界人疑惑のある人が、ホントに異世界人で地球に帰りたがっているか確認して、帰りたがっているなら俺達が帰る時に連れ帰って上げるよ?って話をするぐらいかな。


前の召喚がいつ行われたのか詳しく知らないし。

もう何年もこの世界で暮らしているし地球には帰らないと言うかもしれないな。エルフの奥さんがいるみたいだし尚更。


それに見ず知らずの見た目ドラゴニュート

がいきなり『地球に連れ帰って上げる』とか胡散臭すぎる。

しかも、創造神の力を借りなきゃいけないから。先ずは邪神を討伐する必要があるとか説明したら確実に信用されないだろう。


漫画やアニメならお決まり展開なんだろうけど。

俺たちみたいにネフィルム聖王国に召喚されただろうからね。

そんな説明をされたら確実に怪しむだろう。


まぁ、その時はその時だ。絶対その異世界人を地球に連れ帰らなきゃいけない訳じゃないし。

そもそも、異世界人だとしても地球人とは限らないし。

こことは別の異世界からこの世界に召喚された異世界人って可能性もあるし。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る