第324話

「本当はエリックさんが日本に来たタイミングで挨拶に行きたかったんですけど……」


「まぁ、今回は仕方ないよ。映司君はオークションの主催の1人だからね。普通のオークションならオークション前にあって話をするぐらいそこまで問題視される事は無いけど。今回のオークションは注目度が凄い。他の参加者を出し抜く為に、ちょっとした事を問題視してくる可能性もあったからね」


「そうなんですよね。色々話したい事も有りますけど。先ずは落札物の引渡しをしてしまいましょうか」


と言ってもエリックさんが競り落とした物はそんなに多くないのでそこまで時間はかからない。


と言ってもそこら辺は俺ではなく別の係の人がするので、その間ドロテアと喋っている事にする。


「日本はどう?」


「中々面白い。と言ってもあくまで護衛だから好き勝手に日本を堪能する事は出来ないけど。それこそベアトリーチェ見たいに」


「ベアトリーチェさんレベルに自由に動く人が増えるとマジで困るんで勘弁してください」


バレなきゃ良いとは言え無許可でダンジョンに入ったりやらかしてるからな。日本に来るために自分は魔女だって暴露したり。


「やっぱりベアトリーチェは日本でも自由にやっているようね」


「まぁ、ベアトリーチェさんにしては大人しくしていると思いますけどね」


と言っても大人しかったのは竜綿花のおかげってのも有るだろう。


「あっそうそう。エリックさん時間がこの後時間が有ればですが一緒に食事でもどうですか?まぁ、俺は直ぐにこの場から離れる訳には行かないので、数時間後に自宅でと言うE国の王太子殿下を誘うのには有り得ない条件ですが」


しっかりとしたホテルを貸切とか出来なくも無いけど。警備とか面倒臭いからな。その点家の庭にある桃源郷の中なら警備とか一切考えなくて良いので非常に楽で良い。


「いやいや。自宅に招待してもらえるレベルで仲が良いと分かり易く見せつける事もできるし。現状世界で1番安全な場所だろうからね。喜んでお呼ばれさせて貰うよ。我儘を言えば、食事だけじゃなくてそのまま1晩泊めて貰いたいぐらいだ」


「エリックさんなら大歓迎ですよ。ソフィアのお兄様でもある訳ですし。そう言えばソフィアもエリックさんと色々話したがっていましたよ」


「ソフィアが私に話か……無茶ぶりじゃなきゃ良いけど」


普通に家族と話がしたいだけじゃないかな?って、俺は思ってたんだけど。

エリックさん的にはそうじゃないらしい。

苦笑いをしている。


競り落とした物の引渡しを終えたエリックさんと一度別れる。

エリックさんはこれでオークション会場から出る事は出来るけど。俺は一応最後まで会場にいないといけないからだ。


本当に居るだけだけど。


とにかくジャンさんに予定通りお願いしますと連絡を入れておく。


エリックさんに母が作った料理をだすのはどうかと思うし……

今更そんなの気にするな、もっと気にするところがあっただろうって言われる気もするけど。


まぁ、重要なのはエリックさんとご飯を一緒に食べることになった時の為に事前にジャンさんに料理を作って貰うお願いをしてあったと言うことだ。


フィロの育てた野菜や果物。食べれる魔物素材、等をふんだんに使えるという事でかなり張り切っていた。


ジャンさんとの繋がりって以外に重要だなって今回思ったね。


ジャンさんレベルのシェフに料理を作ってもらうって普通お金を出せばすぐ作って貰えるものじゃないからな。


と言ってもエリックさんレベルの要人と食事をするならジャンさんレベルのシェフの料理が基本だろうし。



「ところで。何時まで隠れているつもりですか?別に誰かにバラすつもりは無いんで姿を見せてくれると有難いんですけど」


「なんだ。バレてたにゃ?」



なんというか。普通じゃない猫とよく会うな。


現れたのは猫と言っても褐色肌の黒髪ショートヘアーの猫獣人女性だけど。


「ところで、いったいどんなご要件でこんなところまで潜り込んで来たんですか?」


「バステト様からの指示でこれを渡しに来たにゃ。後は何かあった時によろしくと」


楓さんと似たような雰囲気を感じたから、神の使い、そうじゃなくても神に関係する存在だと予想していたけど。

間違っていなかったようだ。


それにしても、バレなきゃ問題ないって思っている奴が多すぎて困る。

まぁ、俺もその中に含まれてしまうので、なんも言えないんだけど……


バレなきゃ良いとは言え最低限超えては行けないラインは超えないようにしているけど。


「それにしても、ケツァルコアトルの体の一部か……また、とんでもない物をお土産に持ってきたな」


「私はこれを渡せば良いと言われただけにゃ」


体を引き裂かれた後に世界中にばら撒かれたとは言っていたけど。そう簡単に集めるのは無理だろうなって思っていたけど。

こんなにあっさり手に入るとは思わなかった。


……いや、前払いでこんなものを渡すぐらい大変なお願いがあるって事か。



流石に受け取らないって訳には行かないし、受け取ってお礼の一つもしないってのも問題か……



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読んでいただきありがとうございます。



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